議案 大規模買付行為等への対応方針に基づく対抗措置発動に係る新株予約権の無償割当ての件

提案の内容

本議案は、本臨時株主総会において、当社取締役会による本対応方針(以下で定義されます。)に基づく対抗措置の発動について、株主の皆様に普通決議(書面又は電磁的方法によって議決権行使された方を含む出席株主の議決権の過半数の賛同)によるご承認をお願いするものです。対抗措置の内容は、本対応方針リリース(以下で定義されます。)のIIIの3に記載される新株予約権の無償割当てとなります。

提案の理由

当社は、2023年7月28日付け「当社株券等の大規模買付行為等に係る大規模買付行為等趣旨説明書の受領に関するお知らせ」でお知らせしておりますとおり、2023年7月27日付けで、株式会社南青山不動産(以下「南青山不動産」といいます。)及び野村絢氏(以下「野村氏」といい、南青山不動産及び野村氏を総称して「大規模買付者」といいます。)より、当社株券等の大規模買付行為等に係る大規模買付行為等趣旨説明書(以下「本趣旨説明書」といいます。)を受領しておりました。

これに対し、当社は、2023年1月11日付けで導入し、同年6月22日開催の当社定時株主総会(以下「2023年定時株主総会」といいます。)において株主の皆様にご承認された対抗措置発動等の範囲に限定して継続されている「シティら(※1)による当社の株券等を対象とする大規模買付行為等が行われていることに基づく当社の会社支配に関する基本方針及び当社の株券等の大規模買付行為等に関する対応方針」(以下「本対応方針」(※2)といいます。)に基づいて、大規模買付者に対し、当社取締役会及び株主の皆様が、大規模買付者が行う本対応方針所定の当社株券等の大規模買付行為等(以下「本大規模買付行為等」といいます。)の内容を検討するために必要と考えられる情報(以下「大規模買付情報」といいます。)の提供要請を繰り返し行った上で(※3)、大規模買付者による本大規模買付行為等の評価・検討を重ね、最終的に、当社取締役会は、本趣旨説明書を受領した同年7月27日から60営業日目である同年10月24日をもって取締役会評価期間を終了いたしました。

(※1)「シティら」とは、株式会社シティインデックスイレブンス(以下「シティインデックスイレブンス」といいます。)並びにその共同保有者である野村氏及び株式会社レノ(以下「レノ」といいます。)を指しますが、南青山不動産が当社の株主となった2023年4月7日以降は、「シティら」に南青山不動産も含まれるものとします。また、以下では、これらの者を総称して、「大規模買付者ら」といいます。なお、「大規模買付者グループ」とは2023年8月3日付け「当社株券等の大規模買付行為等に係る情報リスト交付に関するお知らせ」別紙の「本情報リスト」第1の4.で定義されたものをいいます。
(※2)「本対応方針」の内容については、別紙Aの2023年1月11日付けプレスリリース「株式会社シティインデックスイレブンスらによる当社の株券等を対象とする大規模買付行為等が行われていることに基づく当社の会社支配に関する基本方針及び当社の株券等の大規模買付行為等に関する対応方針の導入に関するお知らせ」(以下「本対応方針リリース」といいます。)をご参照ください。また、本議案において用いられている用語で特段の定義がなされていないものについては、「本対応方針リリース」においてなされている定義に従っています。
(※3)大規模買付情報の提供要請として、当社が大規模買付者に対して交付した2023年8月3日付け「本情報リスト」(以下「本情報リスト」といいます。)及びそれに対する回答、2023年8月30日付け「本情報リスト(2)」(以下「本情報リスト(2)」といいます。)及びそれに対する回答、並びに2023年9月22日付け「情報リスト(3)」(以下「本情報リスト(3)」といいます。)及びそれに対する回答の具体的な内容については、2023年10月24日付けプレスリリース「当社より大規模買付者に送付した情報リストに対する回答状況について」をご参照ください。

本議案は、下記第1のとおり、本大規模買付行為等が行われることは、当社の企業価値ないし当社株主の共同の利益を毀損するおそれがあると判断されるため、下記第2の独立委員会からの勧告を最大限尊重した上、本大規模買付行為等に対して、本対応方針に基づく対抗措置(以下「本対抗措置」といいます。)を発動することの是非を、当社の株主の皆様にお諮りする議案となります。なお、株主意思確認総会としての本臨時株主総会を開催すること及び本議案を本臨時株主総会に上程することは、取締役全員(監査等委員であるか否かを問わず、また、独立社外取締役4名全員を含みます。)の一致により、決議しております。

本議案は、本臨時株主総会において、当社取締役会による対抗措置の発動について、株主の皆様に普通決議(書面又は電磁的方法によって議決権行使された方を含む出席株主の議決権の過半数の賛同)によるご承認をお願いするものです(いわゆるMoM決議ではなく、大規模買付者ら及び当社取締役も議決権行使が認められます。)。対抗措置の内容については、本対応方針リリースのIIIの3をご参照ください(※1)。

なお、当社としては、本大規模買付行為等には、2023年8月31日に策定・公表された経済産業省「企業買収における行動指針-企業価値の向上と株主利益の確保に向けて-」(以下「買収指針」といいます。)でも指摘されているとおり、(i)市場内買付けには、公開買付けの場合のような情報開示等の規制が適用されないことにより十分な情報が開示されないという問題や、(ii)部分買付けそのものが有する強圧性の問題もあると考えていますが、今回、大規模買付者が、情報開示が不十分ながらも本対応方針所定の手続に沿った本趣旨説明書の提出を行ったこと、その他諸般の事情を総合的に勘案の上、本議案の決議要件については、決議要件を普通決議とすることといたしました。

なお、大規模買付者ら及び村上世彰氏(以下「村上氏」といいます。)が本臨時株主総会の前日までに、2024年5月31日まで当社株券等の買増しその他大規模買付行為等に該当する行為を行わない旨を誓約する誓約書を提出した場合等、大規模買付者グループによる大規模買付行為等が企図されなくなったと合理的に判断される場合には、本議案を取り下げることとします。

本議案が可決された場合において、大規模買付者が、本大規模買付行為等に着手したと認められる場合には、当社取締役会は、その時点における独立委員会からの勧告を最大限尊重した上で、本対抗措置の発動として、新株予約権の無償割当て決議を行うことになります(※2)。なお、当社普通株式1株に割り当てられることとなる新株予約権1個当たりの目的となる株式の数は、現時点では未定ですが、大規模買付者が本大規模買付行為等に着手した際に、速やかに当社取締役会で決定し、開示いたします。

なお、本議案が否決された場合には、本対抗措置の発動はなされず、また、2023年定時株主総会で可決された第5号議案の趣旨に照らして、2024年開催予定の当社定時株主総会後最初に開催される取締役会の終結時をもって、本対応方針は廃止されます。

(※1)本対応方針は、適用対象を大規模買付者らによる大規模買付行為等に限定した形で(つまり、大規模買付者ら以外の者による大規模買付行為等は適用対象外となる形で)、株主の皆様にご承認された対抗措置の発動等に必要な範囲に限定して(但し、最長でも2024年開催予定の当社定時株主総会後最初に開催される当社取締役会の終結時を限度とします。)継続することについて、2023年定時株主総会において株主の皆様から承認を得ています。

(※2)なお、「本大規模買付行為等に着手したと認められる場合」とは、大規模買付者らが現在保有している17,680,525株を超えて当社株式を買い増す場合をいいます。当社では、その判断に当たって、当社取締役会の恣意的な判断を排除すべく、当社の株主名簿、大量保有報告書、変更報告書、証券保管振替機構への情報照会結果、その他の客観的な情報に基づいて、合理的・客観的に本大規模買付行為等の着手の有無について判断いたします。また、本大規模買付行為等とは別個に、大規模買付者ら(大規模買付者らが大規模買付者グループに属する他のエンティティの名義を潜脱的に用いる場合を含みます。)が、本対応方針所定の大規模買付行為等趣旨説明書を提出しない等、本対応方針の定める手続に従うことなく、大規模買付行為等(以下「手続違反の大規模買付行為等」といいます。)に着手した場合には、上記と同じ手続・手法に基づいて当該着手の有無について判断し、2023年定時株主総会の第5号議案(詳細については、2023年定時株主総会招集通知参考書類をご参照ください。)において、手続違反の大規模買付行為等に対する対抗措置発動につき株主の皆様から予めご承認を得ていることを踏まえ、(その時点における独立委員会からの勧告を最大限尊重した上で)当社取締役会により対抗措置を発動することとなります。


第1 大規模買付者による本大規模買付行為等に係る当社取締役会の評価

1 総論


当社は、2011年の東日本大震災に起因する爆発事故に加え、2014年度、2015年度と続いた大規模な在庫評価損失(2ヵ年合計1,848億円)の影響で財務健全性を大きく毀損いたしました。具体的には2015年度末にはネットD/Eレシオ4.6倍、自己資本比率7.7%となり、企業価値ないし株主共同の利益の観点からも財務健全性の確保が極めて重要でありました。

その後、当社は、2018年度から開始した第6次連結中期経営計画(2018年度~2022年度)(以下「前中計」といいます。)を中心に収益力の強化に取り組み、財務健全性に一定の目処が立ったことから、2022年5月に、増配及び自社株買いを含む、総還元性向50%を目標とする株主還元の大幅強化を公表いたしました。加えて、本年3月23日に公表いたしました第7次連結中期経営計画(以下「本中計」といいます。)では、収益力の向上、資本政策の充実、成長期待の醸成により企業価値ないし株主共同の利益の向上、PBRの向上に取り組むことを明示し、資本政策においては総還元性向60%以上、下限配当200円と、より踏み込んだ株主還元方針を発表しております。その後も、当社は企業価値ないし株主共同の利益の向上については極めて強い意識を持って取り組んでおり、本年8月10日に「株主還元方針および配当予想の修正に関するお知らせ」で公表しましたとおり、本中計期間中の下限配当引上げ(200円/株から250円/株へ)も、中長期的な業績推移を睨みつつ、企業価値ないし株主共同の利益向上を常に追求していく当社の姿勢をお示ししているものです。

なお、当社が同業他社に比して一層株主還元の強化を実現するためには、当社の高い製油所稼働率の維持が必要不可欠であり、継続した安全・安定稼働の実現こそが、当社が企業価値ないし株主共同の利益の向上に真摯に取り組んでいる証左であると考えております。

このような取組みの結果、当社株価は、上記株主還元の大幅強化を公表する前であった2022年3月末においては2,630円(PBR0.5倍)であったところ、還元の大幅強化を公表した2022年5月末には3,550円(PBR0.6倍)、本中計を公表した2023年3月末には4,285円(PBR0.7倍)、下限配当の引上げを公表した2023年8月末には5,240円(PBR0.9倍)と継続的に上昇しています。また、2023年9月末を基準日とした当社の過去3年間のTSR(Total Shareholder Return、株主総利回り)も、対TOPIXの配当込み指数対比で約245%上回って推移しており、当社の企業価値ないし株主共同の利益向上への取組みについて、株主の皆様にご評価いただいているものと考えております。

一方で、大規模買付者らが情報リストの回答書において言及している当社に対する提案(以下「提案」とは本情報リスト第7の17.にて大規模買付者らが現時点においての可能性として言及している内容を含みます。)は、いずれも実現蓋然性・具体性に乏しいものであり、大規模買付者らは、当社の企業価値ないし株主共同の利益向上に向けた現実的かつ具体的な施策を有していないと考えられることに加え(下記2)、大規模買付者らと当社及び当社株主との間で利害相反関係が存在すること(下記3)にも鑑みると、大規模買付者らは、自らの短期的な利益を追求した結果、当社の企業価値ないし株主共同の利益を毀損するおそれがあると合理的に推察されます。さらに、大規模買付者らはその保有する当社株式を大規模買付者グループの中で特段の理由の説明もなく随意かつ随時に移動させているにも拘らず、大規模買付者以外のグループ内エンティティの実態も不透明である等、責任主体が不明確であるのみならず、コンプライアンス上の疑義があり、大規模買付行為等の実施主体として不適切であると考えられます(下記4)。これらを前提として、大規模買付者グループが、本大規模買付行為等を足掛かりとして当社株式の更なる買増しを行う蓋然性が高いこと等を踏まえると、本大規模買付行為等は、当社の企業価値ないし株主共同の利益に対する現実的な脅威となっていると評価せざるを得ません(下記5)。

さらに、大規模買付者らによる本大規模買付行為等に係る手法(市場内における部分買付け)には、依然として一般株主に対する強圧性が存在することから(下記6)、本大規模買付行為等の実施は、当社の一般株主の皆様に不本意ながら当社株式を売却せざるを得ないような影響を与える可能性があると考えられ、かかる観点からも本大規模買付行為等には大きな問題があると考えられます。

以上のようなことから、本大規模買付行為等を今まさに阻止することが当社の企業価値ないし株主共同の利益にとって最善であり、反対に、わずかながらでも買増しを許すことは、当社の企業価値ないし株主共同の利益を毀損するおそれがあるものと考えております。

2 大規模買付者らは、本大規模買付行為等後の当社の企業価値ないし株主共同の利益向上に向けた現実的かつ具体的な施策を有していないこと


大規模買付者は、本大規模買付行為等の目的を「株主として企業価値向上及び株主価値向上を働きかける」ことと掲げていますが、実際のところ、大規模買付者らは、本大規模買付行為等を実施した場合の企業価値ないし株主共同の利益向上に向けた現実的かつ具体的な施策を有していないと考えられます。

この点、大規模買付者は、本情報リスト第7の17.に対する回答において、以下のような提案をしています。

①コスモエコパワー株式会社(以下「ECP」といいます。)についてスピンオフ(子会社の全株式を既存の株主に対して現物配当の形式で分配すること)による税制優遇措置を活用して当社から独立させて新規上場させる提案

②当社保有の製油所についてどの製油所に競争力があるかを徹底的に精査したうえで製油所の閉鎖又は業界他社の保有する製油所との統合を含めた方向性及びそのマイルストーンを公表すべきであるとの提案

③ENEOS株式会社(以下「ENEOS」といいます。)若しくは出光興産株式会社(以下「出光興産」といいます。)の傘下に入ること又は製油所の全部若しくは一部を譲渡することによって製油所の統廃合を進めることが当社にとっても有益であるだけでなく、日本におけるエネルギー供給の安定化・最適化にも資すると判断できる場合、そのような提案

④将来的に当社の製油所の土地や設備を石油製品のみならず代替エネルギーとしての水素やアンモニア等の供給拠点で有効活用する等の事業構造を転換していくことが必要になる可能性があり、そのことについてENEOS、出光興産若しくは別の第三者(内国会社を想定)によって保有・管理される方が当社の企業価値向上及び日本国におけるエネルギー供給の安定化・最適化に資すると判断される場合には、それら企業の傘下になることの提案

⑤ポートフォリオの変革及び業態転換(製油所の土地や設備を石油製品のみならず代替エネルギーとしての水素やアンモニア等の供給拠点で有効活用する等の事業構造を転換していくこと)の可能性の検討について、上場企業として安定的な収益を確保しながら定量的な数値目標を立てることの提案

⑥当社が事業会社を通じて実施する原油開発に関連するプロジェクトに関して、当社ではなく他社(内国法人を想定)によって保有・管理される方が当社の企業価値や業界の合理化、ひいては日本の国益、国民へのエネルギー供給の安定化及び最適化に資すると判断できる場合、事業譲渡等の提案


しかしながら、上記①乃至⑥の各提案について、具体的内容を質問したところ、大規模買付者は「あくまで可能性として列挙したものである」と回答するのみで実質的な回答を拒否しており、真摯な検討に基づくものとは考えられません。

個別の提案についても、例えば上記①のECPのスピンオフについては、大規模買付者らは、ECPを当社グループ内に置きながら企業価値を高めるべきとの提言を行っていたにも拘らず、その後、一転して、ECPを当社グループから外す前提での提言を行う等、主張の内容に一貫性がないものであることに加え、2023年5月23日付け「大規模買付行為等への対応方針に基づく対抗措置発動に関する当社定時株主総会における株主意思確認の議案上程についてのお知らせ」の1でも記載したとおり、当社としては、大要、(i)当社の再生可能エネルギー事業は当社グループのバリューチェーン全体で成長させていくことが当社の企業価値ないし株主共同の利益の向上に資するものであると判断しており、他方で、(ii)大規模買付者らの主張する再生可能エネルギー事業子会社の分離・上場は少なくとも当面は実現可能性が低く、真摯な検討に基づくものではないと考えております。そして、2023年定時株主総会において、シティインデックスイレブンスは「再生エネルギー事業子会社の上場について当社取締役会で真摯に議論し、その議論の結果を公表すること」を公約とする渥美陽子氏(以下「渥美氏」といいます。)を当社の社外取締役として選任する旨の株主提案(以下「本株主提案」といいます。)を行っておりましたが、本株主提案への賛成率は、議決権を行使した当社株主の総議決権の25.93%に留まっており、大規模買付者らによる賛成票を控除すると、わずか3.04%の賛成票が集まったに過ぎませんでした。これを受け、村上氏は同年6月29日の面談において、「スピンオフは負けたので引っ込める」と述べておりました。そのような経緯にも拘らず、大規模買付者が、2023年定時株主総会以前に行っていた提案とほぼ同内容である上記①の提案を行ったことは、そもそも当該提案が真摯に検討されていないことの証左と考えております。

また、上記②について、当社グループの石油事業は、販売量より生産量が少ないショートポジション戦略に加え、操業マネジメントシステムの導入等により、安全操業レベルが向上したことにより、全国平均を大幅に上回る製油所の高稼働を実現しており、継続して高い収益を達成しております。さらに、本中計と同時に公表したVISION2030では、2030年においても高い製油所稼働を維持できる見込みであることを公表しております。加えて、上記⑥について、当社グループの石油開発事業は、50年以上にわたる中東産油国との強い信頼関係のもと、極めて競争力の高い権益を保有しており、また、中東地域において日本企業で唯一の操業主体(オペレーター)として生産を継続している等、日本のエネルギーセキュリティの観点からも重要な役割を担っているものと自負しております。このような中、当社グループの石油事業及び石油開発事業の経常利益は、グループ全体の経常利益の概ね8割以上を占める、まさに収益の源泉であり、当該製油所の統廃合や石油開発事業の譲渡は、当社の収益基盤を揺るがしかねない提案であると考えております


以上のとおり、大規模買付者は、本大規模買付行為等の目的を「株主として企業価値向上及び株主価値向上を働きかける」と掲げながら、実際のところ、大規模買付者らは、本大規模買付行為等を実施した場合の企業価値ないし株主共同の利益向上に向けた現実的かつ具体的な施策を有しておらず、むしろその提案内容は企業価値ないし株主共同の利益を毀損するおそれがあると考えられます。

3 大規模買付者らと当社及び当社一般株主との間で利害相反関係があり、大規模買付者らが自らの短期的な利益を追求した結果、当社の企業価値ないし株主共同の利益を毀損するおそれがあると考えられること


下記(1)乃至(3)のとおり、大規模買付者らが、本大規模買付行為等を実施した場合において、大規模買付者らが、その保有する当社株式に係る投資を回収するために株式の買増し等により影響力を強めた結果、当社が大規模なプレミアム付自社株公開買付けを実施せざるを得ない状況になる可能性があることに加え、下記(4)及び(5)のとおり、大規模買付者らと当社及び当社株主の皆様との間では、それ以外にも利害相反関係が存在すると考えられることを踏まえると、大規模買付者らが自らの短期的な利益を追求した結果、当社の企業価値ないし株主共同の利益を毀損するおそれがあると考えられます。

(1)本大規模買付行為等により大規模買付者らのExitがより困難となり、Exit方法が制限されること


本趣旨説明書によれば、大規模買付者らは、本大規模買付行為等を行うことで、議決権割合にして約24.56%に相当する当社株式を取得することを企図しているとのことですが、大規模買付者らが、Exitの際に、議決権割合にして24.56%に相当する大量の当社株式を売却又は処分することは、現在の状況1と比較してより一層困難となると考えられます。この点、当社筆頭株主であったInfinity Alliance Limitedが、2022年3月に、当時の総株主の議決権の数に対する割合にして15.70%の保有株式を売却することとなった際にも、当該売却に係る決議の前日の終値に対するディスカウント率が約16%に及んだことにも鑑みると、大規模買付者らが、本大規模買付行為等を実施した結果として、議決権割合にして24.56%に相当する当社株式を取得するに至った場合には、そのExit方法が、現況よりも一段と制限されると考えられます。

この点について、大規模買付者は、本情報リスト(2)第II部第3の1に対する回答において、それだけの数量の当社株式の取得に費やした投資の(現在想定されている)回収方法について、「現時点において具体的な回収方法は想定しておりません」と回答するのみであるところ、議決権割合にして(市場での売却又は処分が一層困難となる)24.56%となるに至る当社株式の大量取得を宣言しているにも拘らず、現時点で最終的なExit方法について想定していないことは不自然であり、最終的には当社への売却を想起させるものです。

(2)大規模買付者グループの過去の投資行動からも、大規模買付者らが株式の買増し等により影響力を強めた結果、当社が大規模なプレミアム付自社株公開買付けを実施せざるを得ない状況になる可能性があること

(ア)大規模買付者グループは、過去の投資事例の多くで、大規模なプレミアム付自社株公開買付けによるExitを実際に行っていること

別紙1のとおり、大規模買付者らの過去の投資事例において、大規模買付者グループが対象会社の事業・資産の一部を自ら取得し、残余の部分は売却するような態様の取引(いわゆる解体型買収に類するような取引)を行った実例のほか、大規模買付者グループが、市場内外において対象会社の株式を大量に買い集めた上、影響力を強めた結果、大規模なプレミアム付自社株公開買付けがなされた実例が多数存在しております
特に、大規模買付者グループが投資を行い、株券等保有割合にして20%以上の株式を保有するに至った投資先による大規模な自社株公開買付け(本情報リストの第10をご参照ください。)は、全て 2 プレミアム付自社株公開買付けであり(具体的には、新明和工業株式会社、三信電気株式会社(以下「三信電気」といいます。)、株式会社フージャースホールディングス(以下「フージャース」といいます。)、西松建設株式会社(以下「西松建設」といいます。)、大豊建設株式会社(以下「大豊建設」といいます。)、セントラル硝子株式会社(以下「セントラル硝子」といいます。))、また、このいずれにおいても、大規模買付者グループは、当該自社株公開買付けに応募することによりExitを果たしており、これらの手法が、大規模買付者らの典型的なExit手法となっています
なお、2020年6月1日から2023年5月31日までの期間に行われた上場会社による自社株公開買付けの事例全36件のうち、6件のみが(1か月平均株価との比較で)プレミアム付自社株公開買付けである中 3 、これらは1件(株式会社光通信によるもの)を除き全て大規模買付者グループが大株主として存在していた会社が行ったものであって、大規模買付者グループが当該公開買付けに応募したもの(具体的には、三信電気、西松建設、大豊建設、セントラル硝子、ジャフコグループ株式会社)です。
しかし、自社株買いは、本来は、株価が割安な場合に行われるものであって、自社株公開買付けもその実行時の株価以下で行われるのが通例であるため、プレミアム付きの自社株公開買付けは、プレミアム付きでない場合と比較して、対象会社にそのままとどまることを望む中長期保有の株主にとっては望ましくない手法であり、株主共同の利益を毀損するおそれがあります
実際、大規模買付者グループが投資を行い、株券等保有割合にして20%以上の株式を保有するに至った投資先として上述した各社につき、プレミアム付自社株公開買付けの発表後の株式時価総額の推移について確認したところ(同時にほぼ同規模の第三者割当増資を公表した大豊建設を除きます。)、理論的には、買付けにより株数が減少することに伴い株価が上昇するはずであるにも拘らず、いずれの事例においても各公開買付けの公表前営業日と公開買付終了日を比較すると、公開買付終了日の株式時価総額が減少していることが判明しており(別紙2参照)、プレミアム付自社株公開買付けは、株主共同の利益の向上に繋がらず、むしろ(下記のとおり他の株主と比較して税務メリットを享受することができる)大規模買付者グループが高値で売却し、残された一般株主の利益が毀損するおそれがあるものと考えられます。

(イ)大豊建設の投資事例のように、合理的な他のスキームを採用せず、大規模なプレミアム付自社株公開買付けを実施させた事例も存在していること

大規模買付者グループによる大豊建設への投資においては、大規模買付者グループが他の株主と比較して多大な税務メリットを享受できる形でExitすることを可能とする大規模なプレミアム付きの自社株公開買付け及び株式会社麻生(以下「麻生」といいます。)に対する第三者割当増資がなされていますが、当該スキームは、(上記スキームより合理的なスキームであると考えられる)大規模買付者グループがその保有する株式を麻生に直接譲渡するスキームを同グループが拒否した上で、それに代えて同グループにより提案されたものであることが、大豊建設が2022年3月24日に提出した公開買付届出書によって明らかにされています。

この点に関して、大規模買付者は、大規模買付者グループが上記スキームを「提案」した訳ではない等と反論を行っていますが、そもそも大規模な自社株公開買付けと第三者割当増資との組み合わせによってM&Aが行われた事例は上場会社においてはほぼ見当たらない上、仮に株式譲渡のスキームによった場合には、麻生としては、(実際に行われた第三者割当増資の割当価格が自社株公開買付価格より高くなっていることに照らし)第三者割当増資との比較で拠出する金額も相対的に少なくなる上、大豊建設としては、一時的にせよ自ら多額の財務的負担を負うこともなく、資本準備金の減少手続や自社株公開買付けに伴う公開買付届出書、第三者割当増資に伴う有価証券届出書の提出に伴う負担もなくなったはずであるため、合理的に考えて、麻生や大豊建設が、大規模な自社株公開買付けと第三者割当増資との組み合わせによるスキームを敢えて選好する理由はないと考えられます。従って、客観的・合理的にみても、当該スキームが採用された理由は、大規模買付者グループの(有形あるいは無形の)働き掛けによるものであった蓋然性が高いと考えられます。
なお、大豊建設の事例では、南青山不動産及びシティインデックスイレブンスが合計して同社の株式を41.04%保有していた状況下で渥美氏が社外取締役に選任され、その約9か月後に、大規模買付者グループが他の株主と比して多額の税務メリットを享受する形でExitすることを可能とする大規模なプレミアム付自社株公開買付け及び麻生に対する第三者割当増資の実行が決議されています
そして、当社との関係においても、2023年5月23日付け「当社定時株主総会に係る株主提案に対する当社取締役会の反対意見に関するお知らせ」(以下「反対意見プレスリリース」といいます。)のとおり、シティインデックスイレブンスは、渥美氏を当社社外取締役に選任すべき旨を内容とする株主提案を提出していたところです。

(ウ)小 括

このように、大規模買付者グループが、過去の投資事例の多くにおいて、投資先会社の大規模なプレミアム付自社株公開買付けによるExitを行っていることに鑑みると、当社としては、本大規模買付行為等が実行されることにより大規模買付者らが当社の経営に対する支配力・影響力を大きく強めた場合には、大規模買付者グループが他の株主と比較して税務メリットを享受することができる大規模なプレミアム付自社株公開買付け(下記(3)参照)に応じざるを得なくなり、当社の企業価値や株主共同の利益を毀損するおそれがあると考えております。

(3)大規模買付者らにおける税務メリットの観点からも、大規模買付者らが株式の買増し等により影響力を強めた結果、当社が大規模なプレミアム付自社株公開買付けを実施せざるを得ない状況になる可能性があると推認されること


(ア)特定の会社株式を大量に保有した後、自社株公開買付けに応募することによるExitにより、特に内国法人であるシティインデックスイレブンスや南青山不動産には税務メリットが生じること


一般に、特定の会社による自社株公開買付けへの応募・売却をした内国法人株主においては、一定の税務メリットが生じます。具体的には、自社株公開買付けの対価について、みなし配当として税務上の益金不算入制度の対象となることに加え、(みなし配当に係る益金不算入の金額は、株主の株式取得価格とは無関係に算出されるところ、当該自社株公開買付けの対価から当該みなし配当部分を控除したものから、株式の取得価格を控除して譲渡損益を計算することとなるため、)みなし配当の額が大きいと、税務上、株主側で多額の株式譲渡損を認識できることとなります。そして、みなし配当に係る益金不算入の額については、大要、内国法人による対象会社株式の持株割合が、(i)発行済株式総数の5%以下の場合には配当等の額の20%が、(ii)発行済株式総数の5%超3分の1以下である場合には配当等の額の50%が、(iii)発行済株式総数の3分の1超である場合には配当等の額の全額4が、それぞれ益金不算入とされており、その持株割合が高まることで、より多くの税務メリットを享受できることとなっています

このような税務メリットは、個人及び外国法人株主には享受し得ないものである一方、大規模買付者グループは、過去の複数の投資事例(フージャース、黒田電気、西松建設等)においても、投資先会社が自社株公開買付けを実施することを決定した後、当該公開買付けへの応募前の段階において、野村氏等の個人が保有する投資先会社の株式をシティインデックスイレブンスや南青山不動産をはじめとする内国法人に移動させており、上記のように内国法人のみが享受し得る税務メリット(しかも、5%超を保有する内国法人株主には5%以下しか保有していない内国法人株主に比べてより大きな税務メリットが得られます。)を最大限享受しようとしたのではないかと疑われるところです。このことは、下記(イ)に記載のとおり、シティインデックスイレブンスや南青山不動産等の租税負担率が、その営業利益の額に比して極端に低いことからも合理的に裏付けられます。


(イ)大規模買付者グループの過去の多くの投資事例において現に税務メリットを享受していると考えられること

大規模買付者グループは、これまでの各種投資先への投資により相当額のリターンを上げていると考えられるところ、シティインデックスイレブンスの決算公告(第15期~第17期)によると、直近3期においてはその税引前純利益の額が200億円以上にも達するほど多額となっています。
それにも拘らず、シティインデックスイレブンスは、同社の決算公告によれば、少なくとも2019年度以降2022年度に至るまで、法人税、住民税及び事業税(以下「法人税等」といいます。)が0円(百万円単位。なお、この点について、シティインデックスイレブンスは都民税については支払っていると回答するのみであり、税務メリットとの関係で重要な法人税の支払いについては一切回答されていません。)であるところ、このような税務上の結果が生じている主たる理由としては、本情報リスト第10の11.~20.に係る自社株公開買付けへの応募・売却に際して、(上記(ア)のとおり、)みなし配当に係る益金不算入制度の適用によって得られる(個人や外国法人には享受し得ない)税務メリットを享受している点が挙げられるものと合理的に推測されます。
例えば、大規模買付者グループが、フージャースに対する株券等所有割合を約37.57%まで高めた後、保有株式をシティインデックスイレブンスに集約させた上で(なお、集約の理由については、「各社の資金調達等」という曖昧な回答に終始しています。)、その大半をフージャースによる大規模な自社株公開買付け5に応募したことについて、大規模買付者は、上記(ア)のとおり、「結果として『みなし配当に係る配当益金の不算入の恩典をより多く享受したか否かについては』Yesということになります」として、(個人や外国法人は享受し得ない)法人税法令上の恩典をより多く享受したことを自認しています

また、同様に、大規模買付者である南青山不動産についても、提供された損益計算書(第17期~第19期)によると、それぞれ、(i)第17期(2021年10月1日~2021年11月30日)の税引前純利益:15億7,080万8,814円(法人税等:1万1,600円)、(ii)第18期(2021年12月1日~2022年11月30日)の税引前純利益:51億2,663万9,871円(法人税等:7万円)、(iii)第19期(2022年12月1日~2023年2月28日)の税引前純利益:21億7756万1717円(法人税等:1万7500円)と税引前純利益に比して法人税等の額が極めて僅少であるところ、大規模買付者は、その理由に関して、本情報リスト(2)第II部第6の4.に対する回答において、「税法上の所得と会計上の利益に差異があるためご指摘の状況になっているものと考えます」と回答するのみです。ここで大規模買付者のいう「税法上の所得と会計上の利益に差異がある」状況とは、「自社株公開買付けによって高値で株式を売却した場合において、会計上はキャピタル・ゲインが実現するものの、(上記(ア)のとおり)キャピタル・ゲインはみなし配当となるため税務上は益金とならず、逆に株式売却価額からみなし配当を構成する額を差し引いた残額が税務上の簿価を下回っている場合には、税務上の株式譲渡損が創出される」ということを指すものと推測されます。
以上を踏まえると、大規模買付者グループのうち、シティインデックスイレブンス及び大規模買
付者である南青山不動産をはじめとする内国法人は、様々な上場会社への投資を通じて、税務メリットを恒常的に享受していると考えられます。

(ウ)小 括

上記のとおり、大規模買付者らは、法人税法上、自社株公開買付けへの応募を通じて、個人及び外国法人株主には享受できない税務メリットを享受しているものと考えられ、それを得たいがために大規模買付者らが株式の買増し等により影響力を強めた結果、当社が大規模なプレミアム付自社株公開買付けを実施せざるを得ない状況になる可能性があると考えられます。
(4)大規模買付者グループは競合他社株式を保有していた経緯があり、その過去の提案内容に鑑みても当社の一般株主の皆様と利害相反関係が存在すると考えられること

村上氏が過去に当社に対して業界再編の必要性を盛んに強調していたこととの関係で、大規模買付者グループによる競合他社の株式保有の有無やその数量等は、(大量保有報告書の提出に至らない場合であっても)当社の一般株主の皆様との利害相反状況の有無や程度を検討する上で、極めて重要な情報であるところ、大規模買付者は、本情報リスト(2)第II部第2の1.に対する回答において、「貴社の競合他社の株式を保有しているのは事実ですが、貴社株式と異なり、大量保有報告書の提出を要するだけの大量の株式は保有していません」としていたにも拘らず、本情報リスト(3)に対する回答においては、一転して、「10月10日現在におきまして、買付者らによる貴社の競合他社の株式保有は一切ありません」と回答しているところ、当該変遷は、上記利害相反関係について追及を避けるためのものであると合理的に推認されます。加えて、今後の保有予定については未定とも回答しており、将来的に当社の一般株主との間で利害相反が顕在化し得る可能性は十分にあると考えられます。そして、本情報リスト第7の17.に対する回答において②~④、⑥として列挙されている提案については、競合他社も利害関係を有するものであることも踏まえると、大規模買付者らは、当社株主という立場以外の競合他社の株主という立場においても、本大規模買付行為等について利害関係を有しており、この点で一般株主とは異なる立場にあると考えられます(なお、出光興産については、本情報リスト第3の13.に対する回答において、人的関係もあることが示唆されており、当該関係性を以て、様々な提案を行うことができるという点においても、独自の利害関係を有していると考えられます。)
加えて、2022年5月25日の面談において、村上氏は、当時、シティインデックスイレブンスと株式会社エスグラントコーポレーション(以下「エスグラント」といいます。)とで合わせて富士石油株式会社(以下「富士石油」といいます。)の株式を10.11%保有していたことを踏まえて「富士石油さんはいらないですか」と当社に訊いた後、自ら「シナジーないですよね」とまで述べていたにも拘らず、同年8月31日の面談においても再度同様の提案をされ、その際、「●社[当社注:競合他社]に断られました」と、他社に当該提案を断られたから当社に話を持ってきた旨言及しており6大規模買付者グループが、上記の話をシナジー創出による当社の企業価値向上を目的として当社に持ち掛けたものでないことは明らかです。従って、大規模買付者グループが業界再編の名のもとで、競合他社株式を保有する目的は、大規模買付者グループ独自の利害によるものと考えられます。
以上の大規模買付者グループの競合他社株式の保有状況や当社に対する言動等を前提とすると、大規模買付者グループは、自らが株式を保有する競合他社と当社との統合を含む取引等を当社が行うことについて独自の強い利害を有しているため、当社の中長期的な企業価値ないし株主共同の利益の向上を目的とした施策の実行に際して、当社の一般株主の皆様との間で利害相反関係が存在していると考えられます。
(5)大規模買付者ら及び村上氏が、本来当社が相対で行うべき交渉等について、自身らの関与を強く要求しており、その結果当社の企業価値ないし当社一般株主の皆様の利益が毀損するおそれがあること

以下のとおり、大規模買付者ら及びそれを主導する村上氏は、当社と当該会社とのインサイダー情報を含む当事者同士の協議に(表面上はあたかも2社間での直接のやりとりを尊重する姿勢を見せつつ)、介入しようと執拗に拘り続け、具体的な進展がないと見るや否や、一方的に本趣旨説明書を提出したと考えられます
具体的には、本情報リスト(2)第II部第2の3.及び本情報リスト(3)第I部第4の3.記載の事実関係のとおり、シティインデックスイレブンスと村上氏は、2023年定時株主総会後の同年6月29日の面談において、具体的な会社名を挙げて、ある提案を行い、当社と当該会社との交渉に当たっては、村上氏自身を紹介者として直接関与させるべきと主張していました。これに対して、当社としては、(i)そのような交渉は取引の当事者のみで行うことが一般的であること、(ii)村上氏を交渉に関与させることにより、同氏を含めた大規模買付者ら(その現在の株券等保有割合の合計は20.01%であって、実質的には全体として金融商品取引法上の「主要株主」としての実態を備えています。)にインサイダー取引規制上の重要事実を伝達することにもなり得ること、及び(iii)フェア・ディスクロージャー・ルール上の問題も生じかねないこと等々、慎重な考慮が必要となることから、仮に当該会社との間で交渉を行うとしても、当該交渉に村上氏を参加させることはできないと回答しておりました。
しかしながら、シティインデックスイレブンスと村上氏は、当該交渉過程について報告を求める等、実質的に交渉に関与させることに強く拘り(なお、シティインデックスイレブンスは2023年7月19日付けの書簡において、守秘義務契約を締結することも吝かではないとして、当該契約を締結してまでも当該交渉に関与することに拘っておりました。)、提案からわずか2週間の間に進展がないことをもって、当社が株主価値向上に後ろ向きである等と一方的に断じて、直ちに当社株式の追加取得の意向を示した上で、当社が株主価値向上に係る施策を直ちに決定・開示しない限り、大規模買付行為等趣旨説明書を提出すると一方的に通告するに至りました
シティインデックスイレブンス及び村上氏のかかる行動は、通常の合理的な株主の行動とは考えがたく、大規模買付者らがその支配力・影響力を背景に(当該影響力に関する当社の考え方については、下記5のとおりです。)当社の経営上の意思決定に介入し、その結果、企業価値ないし株主共同の利益を毀損するおそれがあると考えられます
(6)大規模買付者らの支配力・影響力が増大し、プレミアム付自社株公開買付けを実施せざるを得なくなった場合、中長期的な当社の企業価値ないし株主共同の利益を毀損するおそれがあること

大規模買付者らは、当社に対して、当社が発行した新株予約権付社債に係る新株予約権の行使により割り当てられた株式について、当社の2022年度第3四半期決算までに自社株買いを実施することを要請している等、当社に対して過去に多額の自社株買いを行うべき旨言及しております
この点、大規模買付者らが現在保有する当社株式の価額は、2023年10月23日の終値ベースで約920億円(本大規模買付行為等が実行され、持株割合が24.56%となった場合には約1,120億円)に相当するため、仮に、本大規模買付行為等が実行された結果として、大規模買付者らの当社への支配力・影響力が増大し、大規模なプレミアム付自社株公開買付けを実施せざるを得なくなった場合には、想定外の大規模な資金流出が生じ、当社が本中計において掲げる企業価値ないし株主共同の利益向上のための資本政策や投資計画を遂行することができなくなると考えられます。具体的には収益の要である石油事業や石油開発事業への投資、将来の再生可能エネルギー事業への投資ができなくなることや、下限配当として株主の皆様にお約束している250円/株の配当を継続できなくなる等、大規模なプレミアム付自社株公開買付け後に残存する一般株主の皆様にとって、株主共同の利益を著しく毀損するおそれがあると考えられます。
また、当社は本中計において、リスク・バッファの観点から、各事業セグメントにおける国内外の約130社の類似企業の過去20年のROAを分析する等した結果、セグメント毎の目標自己資本額の合算額が6,400億円程度となったこと等を踏まえて目標自己資本額を6,000億円と設定しておりますが、これに対して、大規模買付者らは、当社の必要自己資本の積み上がり部分の相当程度が再生可能エネルギー事業に伴うものであるとの誤った推測を基に、当社の必要自己資本額は5,000億円程度が最大であると一方的に断じた上、それを超える自己資本については株主に還元することを要求しています。このような主張につき、大規模買付者らは十分な根拠は示していませんが、そのような中、本大規模買付行為等の実行によって大規模買付者らの当社に対する支配力・影響力が増大し、当社が大規模なプレミアム付自社株公開買付けを実施せざるを得なくなった場合、合理的に算出した必要自己資本額は大きく毀損せざるを得ず、当社に事業継続上のリスクが生じ、外部格付けの格下げにより社債や借入による資金調達を行う際に調達額や金利に影響が出る等、リスクの観点においても当該公開買付け後に残存する一般株主の皆様の利益を毀損するおそれがあると考えております。

1 シティインデックスイレブンス提出の大量保有報告書に係る2023年4月14日付け変更報告書No.12によれば、大規模買付者らは株券等保有割合にして合計で20.01%の当社株式を保有しており、現時点においてもこの保有数量については変わりはないものと理解しております。

2 2018年以降に大規模買付者グループが提出者又は共同保有者になって提出された変更報告書において、株券等保有割合が20%を超えた企業(当社及び非上場化した企業を除きます)。

3 資料版商事法務448号78頁・85~106頁、同460号49~50頁、同472号36~37頁・40~42頁参照。

4 所定の負債利子の額を除きます。

5 その規模は約150億円であり、また、当該自社株公開買付けにおける買付予定株式数の上限は、当該自社株公開買付け公表直前におけるシティインデックスイレブンスによるフージャース株式の保有株式数をわずかに上回る株式数とされています。

6 なお、この間、同年8月12日に、シティインデックスイレブンスは富士石油の株式5.11%を市場内において売却しており、シティインデックスイレブンスとエスグラントとを合わせた富士石油に対する持株割合は4.91%に減少しています。

4 大規模買付者らは実態も不透明でグループとしての責任主体が不明確である等、大規模買付行為等の実施主体として不適切であり、コンプライアンス上の疑義があること


(1)大規模買付者らは当社への支配力ないし影響力を有するにもかかわらず、実質的にいずれの法人又は個人がどのように当社の経営に関与するか等を不透明にしていること


(ア)大規模買付者が大規模買付者グループに関する基礎的な情報提供を拒否したことは、経済産業省策定の買収指針の第3原則である透明性の原則に反すると考えられること


経済産業省策定の買収指針において、買収に当たり尊重されるべき原則の第3原則として「透明性の原則」が示されています。当該原則では、「株主の判断のために有益な情報が、買収者と対象会社から適切かつ積極的に提供されるべきである。そのために、買収者と対象会社は、買収に関連する法令の遵守等を通じ、買収に関する透明性を確保すべきである」とされているところ、本対応方針の下で行ってきた情報提供手続における大規模買付者の対応は当該原則に反するものでした。すなわち、当社は、大規模買付情報の提供要請において、大規模買付者以外の大規模買付者グループに係る基礎的な情報を求めておりましたが、大規模買付者は、当該要請に対しては、「大規模買付者グループ」の範囲は不適切であるとして、一部回答はあったものの、実質的な理由を述べることなく回答を拒否しています。このような基礎的な情報ですら合理的な理由なく提供を拒否する姿勢は、買収指針の第3原則である透明性の原則に反する行動であると考えられます。

この点は、買収指針においても、「対象会社から共同保有者の範囲について質問を受けた場合には誠実に回答することが望ましく、共同保有者に該当することが推測される事情がある場合には、その点についても情報提供をすることが望ましい」(26頁)と明記されているところです(この理は、潜在的にいつでも共同保有者に加わることがあり得る者についても当然に妥当するものと解されます。)。

そして、シティインデックスイレブンス提出の大量保有報告書に係る2023年4月14日付け変更報告書No.12によると、大規模買付者グループは、同年4月7日付けで、株券等保有割合にして6.8%に及ぶ大量の当社株式をレノから南青山不動産へと市場外で移転させ、当社株式の保有主体を変えているところ、上記南青山不動産への当社株式の移転の理由としては、本情報リスト第1の8.に対する回答において、「グループ各社の資金需要等」が挙げられているのみであり、それ以上の説明は拒否されていますが、このようなグループ内の必要性に基づき、その裁量により当社株式の移動が常にあり得るのだとすると大規模買付者ら、あるいは大規模買付者グループの間において、当社との面談に出席してきた村上氏、野村氏及び(シティインデックスイレブンス及びレノの代表者である)福島啓修氏(以下「福島氏」といいます。)らによる自由な裁量の下で、大規模買付者グループ内においていつでも随意に当社株式の大規模な移動が行われる可能性があるという状況となります。そうである以上、本大規模買付行為等の評価に当たっても、大規模買付者グループ全体に関する情報が必要であると考えられます。

それにも拘らず、このような基礎的な情報ですら提供を拒否する姿勢は、買収指針において第3の原則として打ち出されている「透明性の原則」の趣旨である、「株主の判断のために有益な情報が、買収者と対象会社から適切かつ積極的に提供されるべきである」(同指針7頁)との点に反すると考えられます。

(イ)当社との協議の場では村上氏が主導しているにも拘らず、実際は、村上氏は当社株式を保有するエンティティを支配する資本関係になく、また、当社に対する回答や情報発信の面、又は株式の取得・保有の面においてエンティティの使い分けがなされていること等は、回答や情報発信の責任主体を曖昧にし、結局、いずれの法人又は個人がどのような形で当社の経営に関与するかを著しく不明瞭とするものであると考えられること

当社としては、協議の場においては村上氏が前面に出て主張・要望を述べていたにもかかわらず、実際は、同氏は当社株式を保有するエンティティを支配する資本関係にないと考えています(なお、大規模買付者グループについて当社が把握している資本関係図は、別紙3のとおりです。)。加えて、下記のとおり、(i)大規模買付者らによる当社株式の保有状況及び買付主体の変遷等に加えて、(ii)大規模買付者に選定された南青山不動産の極めて分かりづらい実態に照らしても、どのような主体が当社に対して経営上の影響力を及ぼすことになるのか不透明になっています。

具体的には、シティインデックスイレブンス提出の2022年4月5日付け大量保有報告書によると、当初は、シティインデックスイレブンス及び野村氏が共同保有者として当社株式を取得・保有しており、その後、同年8月12日付け変更報告書No.6よりレノが共同保有者に加わり、当社株式の買付主体が複数に分けられておりました。そのような中で、同年4月頃から開始された当社との面談等の対話の場においては、村上氏、野村氏及びシティインデックスイレブンスの代表取締役である福島氏(なお、同氏はレノの代表取締役でもあります。)が主体となっており、2023年4月19日付けで行われた本株主提案についても、その提出主体はシティインデックスイレブンスでした。

このような経緯がある一方で、上記(ア)のとおり、2023年4月に、レノに代わって南青山不動産(レノと異なり、池田龍哉氏(以下「池田氏」といいます。)が代表取締役かつ唯一の取締役です。)がシティインデックスイレブンスらの共同保有者となりました。そして、本趣旨説明書によれば本大規模買付行為等の主体は、当社株式を保有する大規模買付者ら三者のうち、従前の対話主体であったシティインデックスイレブンスを除いた、野村氏と(当社との対話の場に出席してこなかった池田氏を代表取締役とする)南青山不動産とされており、一転して本大規模買付行為等に関しては南青山不動産がシティインデックスイレブンスに代わる買付主体となっています。しかしながら、なぜシティインデックスイレブンスに代えて南青山不動産が本大規模買付行為等の実施主体に選定されたのかについては、実質的な説明はなされていません(なお、池田氏が対話に直接参加しなかった点について、本情報リスト(3)第I部第2の1.において指摘したところ、当該質問に対する回答で、突然、「貴社との面談の場には福島氏がシティ社の代表者兼南青山不動産の従業員として出席をしている」との事情が伝えられていますが、当社との面談時にはこの点に関する連絡は全くなかったほか、池田氏が直接出席しない理由は依然説明されていません。)。

この点、大規模買付者グループ内において、外部から認知できない理由により買付主体が複数に分けられていたり、頻繁に入れ替わることで、当社との対話における責任主体は不明確となり(例えば、上記のとおり、当社に対して2023年定時株主総会で本株主提案を行ったシティインデックスイレブンスの代表者と本大規模買付行為等の主体である南青山不動産の代表者とは異なります。)、また、本大規模買付行為等の主体がなぜ入れ替わったのか(なぜ、元々は、シティインデックスイレブンス、レノ及び野村氏の三者が当社株式を共同保有していたのに、レノが南青山不動産に入れ替わり、しかも、2023年定時株主総会で本株主提案を行い、本対応方針の下における情報提供手続における大規模買付者からの回答書も全てそのHPにおいて掲載しているシティインデックスイレブンスは、大規模買付者に入らないこととなったのか)について実質的な回答はなされておらず、どのような主体が当社に対して経営上の支配力・影響力を及ぼすことになるのか一層不透明になっています

また、大規模買付者グループは、別紙4で詳述するとおり、過去においても、その投資先企業についての株式保有主体を幾度となく変更してきた経緯があり、かかる経緯に鑑みると、当社株式の保有主体も、今後、大規模買付者グループの中で変更される可能性があると考えざるを得ません。


加えて、南青山不動産一つをとってみても、いずれのエンティティが(南青山不動産を通じて)実質的に当社に経営上の影響力を及ぼすことになるのかが、明らかではありません。具体的には、南青山不動産を「実質的に支配する主体」は、直接の親会社である株式会社オフィスサポートの完全親会社である株式会社ATRA(以下「ATRA」といいます。)と考えられるところ、本情報リスト(2)第I部第1の5.に対する回答を基にすれば、ATRAの株式についてはシティインデックスイレブンスが33.4%、株式会社シティインデックステンス(以下「シティインデックステンス」といいます。)が45.4%、村上氏及びその親族が21.2%保有していることが判明しています。しかしながら、シティインデックステンスの資本構成及び当該「親族」の詳細についても大規模買付者は回答を拒否しており、大規模買付者である南青山不動産の実態(南青山不動産に対して、誰が、どの程度の影響力を持っているのか)が不明確・不透明なものとなっています。

そして、本情報リスト第1の8.に対する回答によれば、大規模買付者は「現時点において、グループ内の株式の移動は予定しておりません」と述べるのみであり、今後のグループ内の当社株式移転の蓋然性を否定しておらず、今後、村上氏の影響を受けた法人間で当社株式の移転が行われた場合、いずれの法人又は個人がどのように当社の経営に関与するか等をより一層不透明にするものと考えております(なお、上記のとおり、協議の場においては村上氏が前面に出て主張・要望を述べられていたにもかかわらず、本趣旨説明書等では、村上氏に関する情報は一切回答されていません。)

(ウ)大規模買付者らが、本大規模買付行為等後に具体的にどのように当社経営に影響を及ぼすつもりであるのかが不明瞭なことに加え、当社グループ事業について深い知見を有していないこと


本趣旨説明書によれば、本大規模買付行為等によって、大規模買付者らが議決権割合にして24.56%の当社株式を取得した場合、当社の経営に対する重要な支配力・影響力を有することとなることに加え、下記5(1)に記載のとおり、大規模買付者グループは、本大規模買付行為等を足掛かりとして当社株式の更なる買増しを行う蓋然性が高いと考えられます。

以上に鑑みると、本大規模買付行為等を行うに当たっては、大規模買付者らが、具体的にどのように当社経営に支配力・影響力を及ぼすつもりなのかについて明らかにする必要性は高いと考えられるにも拘らず、この点について大規模買付者は具体的な回答をしておりません

また、大規模買付者は、本趣旨説明書において、南青山不動産及びシティインデックスイレブンスについては、当社及び当社グループ会社と同種の事業についての経験はないと自認しており、また、本情報リスト第1の12.に対する回答でも、当社の事業に関連する知識及び経験はない旨回答していますので、大規模買付者らは当社の事業内容や当社グループの事業について深い知見を有していないと思われます(なお、大規模買付者グループ及びその構成員については回答を拒否しています。)。

以上のように、大規模買付者らは、具体的にどのように当社経営に影響を及ぼすつもりなのかについて具体的に示していないことに加え、当社グループ事業について深い知見を有している訳でもないことから、大規模買付者らが、仮に、当社の経営に対する重要な支配力・影響力を有するに至った場合、当社の企業価値ないし株主共同の利益を毀損するおそれがあると考えられます。

(エ)小 括


以上のとおり、(i)大規模買付者が大規模買付者グループに関する基礎的な情報の提供を拒否したことは、経済産業省策定の買収指針の第3原則である透明性の原則に反すると考えられること、(ii)当社に対する回答や情報発信の面、又は株式の取得・保有の面におけるエンティティの使い分け等は、回答や情報発信の責任主体を曖昧にし、結局、いずれの法人又は個人がどのような形で当社の経営に関与するかを著しく不明瞭とするものであると考えられること、(iii)大規模買付者らが、本大規模買付行為等後に具体的にどのように当社経営に影響を及ぼすつもりであるのかが不明瞭なことに加え、当社グループ事業について深い知見を有していないこと等を踏まえると、本大規模買付行為等が実行されて、大規模買付者らが当社の経営に対する重要な影響力を有することとなった場合、当社の企業価値ないし株主共同の利益を毀損するおそれがあると考えられます。

(2)大規模買付者らはコンプライアンス上の疑義があると考えられること


大規模買付者らは、2023年定時株主総会において、「外国投資家」である大規模買付者グループとの間で取引関係を有しており、大規模買付者グループから「多額の金銭その他の財産を受けている者」(対内直接投資等に関する命令2条1項2号ホ)として「関係者」に該当し得る渥美氏を当社取締役に選任すべき旨の議案を内容とする本株主提案を行っており、これに対して賛成の議決権を行使するに際しては、当該議決権行使について所管官庁への事前届出が必要であると考えられるところ、大規模買付者らは、「関係者」該当性について十分な検討を行わずに、当該事前届出を行っていないと考えられます

具体的には、当社としては、渥美氏に関して、当社の2023年5月23日付け反対意見プレスリリースの別紙2に記載のとおりの事実関係を認識しており、2021年4月のシティインデックスイレブンスによる日本アジアグループ株式会社に対する新株予約権無償割当差止仮処分命令申立事件において、渥美氏がシティインデックスイレブンスの代理人弁護士を務めていること等に照らしても、当社としては、大規模買付者グループから「多額の金銭その他の財産を受けている者」(対内直接投資等に関する命令2条1項2号ホ)として「関係者」に該当する蓋然性が十分に考えられ、本株主提案に対する大規模買付者らによる賛成の議決権行使(同意)について事前届出が必要だったのではないかと認識しています。

それにも拘らず、大規模買付者は、この点について、「上記事件[当社注:2021年4月のシティ社による日本アジアグループ株式会社に対する新株予約権無償割当差止仮処分命令申立事件]において、シティインデックスイレブンスが委任契約を締結していたのは渥美陽子氏ではなく、当時渥美陽子氏が所属していた弁護士法人なので、貴社のご指摘は当たりません」と回答する(本情報リスト(2)第I部第1の12に対する回答)のみですが、上記事件では渥美氏が代理人弁護士として表示されており、同氏への訴訟委任状が裁判所に対して提出されていることから、同氏との間に個別に委任契約が成立していたことは明らかで、当該回答は客観的に見て事実に反しています

このように、事前届出を行わずに、大規模買付者らが本株主提案に賛成の議決権行使を行い、同意を行う行為は、一定の取締役選任に係る議案に関して行う同意について事前届出を要するとした外国為替及び外国貿易法(以下「外為法」といいます。)違反の疑義があると考えられます

5 本大規模買付行為等は当社の企業価値ないし株主共同の利益に対する現実的な脅威となっていること


上記2乃至4のとおり、大規模買付者による本大規模買付行為等には重大な懸念が存在するところ、下記(1)及び(2)のとおり、大規模買付者グループが、本大規模買付行為等を足掛かりとして、当社の経営に対する支配力・影響力をさらに強めていく蓋然性が高いことも踏まえると、大規模買付者による本大規模買付行為等により、当社の実施する企業価値向上策の実行に支障を来すこととなるため、大規模買付者グループは、当社の企業価値ないし株主共同の利益に対する現実的な脅威となっていると考えられます。

(1)大規模買付者グループは、本大規模買付行為等を足掛かりとして当社株式の更なる買増しを行う蓋然性が高いと考えられること(本大規模買付行為等は段階的な支配権取得行為の第一歩と考えられること)


本趣旨説明書では、議決権割合にして24.56%となるまでの株式数を取得する意向があると記載されていますが、以下に鑑みれば、大規模買付者グループが、本大規模買付行為等を足掛かりとして当社株式の更なる買増しを行う可能性は十分にあるものと考えられます。

すなわち、当社が2023年3月23日付けプレスリリース「株式会社シティインデックスイレブンスらとのこれまでの対話の経緯及びスピンオフに関する当社の考えについて」にて詳細に説明致しましたとおり、(i)本対応方針導入前において、大規模買付者らからは、大量保有報告書ベースで20%以上の貴社株式を取得する予定はないことが複数回表明されていたにも拘らず、当社の対応が大規模買付者らの意に沿わないとみるや、当該表明を翻し、複数回に亘り、当社株券等を大量保有報告書ベースで30%取得するとの発言や大量保有報告書ベースで過半数を取得するとの示唆があったことに加え、(ii)大規模買付者グループは、一時は、グループ全体で当社株式を最大40%取得する旨の外為法上の事前届出を行っていたり、(iii)当社が本対応方針を導入する直前の2023年1月6日には、村上氏から、大量保有報告書ベースで20%以上の当社株式を取得する旨の一方的な宣言がなされたりする等(なお、この時実際に20%を超えて取得を行っています。)、大規模買付者らは、これまでも度々、当社株式の取得目標につき、30%、40%ないし過半数といった数字を示唆してきました。その上で、(iv)本対応方針が導入された後、シティインデックスイレブンスは、そのことを踏まえて、2023年3月29日付け書簡及び同年5月1日付け書簡において、2023年定時株主総会までは大規模買付者らにおいて当社株券等の取得を行わない予定である旨を述べるに至りましたが(すなわち、2023年定時株主総会後の当社株券等の買増しの可能性は否定していなかったところ)、最終的に、2023年定時株主総会後の同年7月27日付けで、大規模買付者が、議決権割合にして(シティインデックスイレブンスと併せて)24.56%の当社株式の取得意向を表明する本趣旨説明書を提出するに至っています。

また、(v)本対応方針の下での情報提供手続に際して、大規模買付者グループは、本大規模買付行為等後の更なる買増しについて、「現時点では何も決定しておりません」として、その可能性を否定していません。さらに、(vi)本趣旨説明書における当社株式の取得目標である「24.56%」という数字は、今までの当社と村上氏、野村氏及び福島氏との面談に際しては一度も出たことがない数字であって、本対応方針の下での情報提供手続に際しても、取得目標をなぜ「24.56%」という今まで一度も言及されたことのない割合としたのかという点についても、大規模買付者からは特に説明はなされていません

以上に鑑みると、本趣旨説明書では、当社株式の取得目標につき議決権割合にして「24.56%」とされていますが、この「24.56%」という数字は「一時的・暫定的」な取得目標に過ぎないと考えられます。

従って、本大規模買付行為等がそのまま実行された場合には、当社が大規模なプレミアム付自社株公開買付けに応じないときは、議決権割合にして30%ないし40%以上の当社株式を市場内で買い上がって、当社への影響力をさらに強めていくおそれがあると考えられます

(2)本大規模買付行為等のみでも、大規模買付者らは、当社株主総会の特別決議における実質的拒否権を有すること


2023年7月27日付けで本趣旨説明書が提出され、本趣旨説明書では議決権割合にして24.56%の当社株式を取得する予定とされているところ、仮に更なる買増しの蓋然性を捨象した場合においても、本対応方針に基づく対抗措置発動議案や本株主提案による取締役選任議案が議題とされ、普段よりも一般株主の皆様の注目を集めていた2023年定時株主総会とは異なり、いわゆる平時における開催であった2022年6月23日の当社第7回定時株主総会における議決権行使率は約75%でありましたので、このことを前提とすると、当社に対する24.56%という議決権割合は、出席株主の議決権割合ベースでは約33%をわずかに下回ることになります。つまり、本大規模買付行為等が実行された場合には、大規模買付者グループは、わずかな株主との協調行動によって当社の株主総会における特別決議事項について実質的な拒否権を有することになります。また、2014年以降の議決権行使比率を前提とした場合でも、特別決議事項に係る拒否権のラインが、総株主の議決権割合ベースで26.2%となる(つまり、本趣旨説明書において大規模買付者らが取得予定であるとしている総株主の議決権割合ベースにおける「24.56%」という数字に肉薄する)ケースも確認されています。

そして、上記2及び3で述べたように、大規模買付者らは企業価値ないし株主共同の利益向上に向けた具体的施策を有しておらず、大規模買付者らと当社及び当社一般株主との間で重大な利害相反関係がある状況の下で、このように、大規模買付者らが当社の株主総会特別決議事項についての実質的な拒否権を有するに至ることは、大規模買付者らが、当社として必要な事業譲渡や合併等の組織再編等に関して拒否権を有するに至ることを意味します。従って、本大規模買付行為等が実行された場合には、当社の企業価値ないし株主共同の利益に対する現実的な脅威が生じることになると考えられます。

6大規模買付者による本大規模買付行為等の手法には、一般株主に対する強圧性が存在すること


(1)大規模買付者グループが本大規模買付行為等を足掛かりとして当社株式の更なる買増しを行う蓋然性が高い中で、市場内で当社株式を取得する方法には強圧性が存すること


上記5のとおり、大規模買付者グループは、本大規模買付行為等を足掛かりとして当社株式の更なる買増しを行い、当社への支配力・影響力を強める蓋然性が高いと考えられます。

この点、大規模買付者らは、市場内で当社株式を取得する方法により、かつ、議決権割合にして24.56%を上限とする部分買付けの方法で本大規模買付行為等を行うとしているところ、上記のとおり、大規模買付者グループが今後更なる買増しを行う蓋然性が高い中で行われる本大規模買付行為等には、構造的な強圧性が存在する(当社株主の皆様が、大規模買付者グループが当社の経営に強い影響を及ぼしている状況の下では、当社の企業価値ないし株主共同の利益が損なわれると考えている場合、そのような会社の少数株主にとどまるよりは、不本意ながらいち早く市場において当社株式を売却する動機を持つことになる)ものと考えられます。

なお、市場内買付けにおいては、先に売り注文を出した株主から早い者勝ちでその保有する株式が売却されることになるという取引の性質上、公開買付け以上に構造的強圧性が存在することになります。また、部分買付けにおいては、売却を希望する株主の全てが売却できるわけではなく、一般株主としては、少数株主として取り残される懸念から、不本意ながら保有株式を売却する誘因を持つこととなりますが、このような誘因は、大規模買付行為等が市場内での買増しの手法により行われる場合にはより強まることになります。

また、対象会社の株式を市場内において(徐々に)買い増すことを通じて事実上の支配権を獲得するという手法は、応募者に均一の価格及び当該価格において一般に支配権プレミアムを付して支払われる等の特徴を持つ公開買付けと異なり、都度その時点での株価相当の金銭を支払うことで株式を取得するものであるため、買収者が、支配権取得の意図を秘匿し、一般株主に対して支配権プレミアムを支払うことのないまま、支配権を取得することができる点で問題性が大きいと考えられます。その意味で、欧米でも、市場内において、対象会社の株式の全部ではなく一部分のみを買い上がる手法は、creeping takeover(段階的・漸進的支配権取得)と呼ばれて、問題がある買収手法であると指摘されているところです。この点の詳細については、別紙5をご覧ください。

(2)本大規模買付行為等に係る情報提供が不十分であること


上記(1)に加え、上記4(1)のとおり、大規模買付者らは当社への支配力ないし影響力を有するにも拘らず、実質的にいずれの法人又は個人がどのように当社の経営に関与するか等を不透明にしており、大規模買付者グループが、グループ内において、随時、自由自在に当社株式を移動させている実態にも鑑みると、大規模買付者グループに関する基礎的な情報等が提供されないことは、経済産業省策定の買収指針の第3原則である透明性の原則に反すると考えられます。また、このような状態で本大規模買付行為等が実行されることは、当社株主の皆様が当社株式への投資につき十分な考慮をすることができない状況で、企業価値ないし株主共同の利益が毀損されることによるリスクを回避するために、早く株式を売却したいという誘因に駆られる蓋然性も強く、その点においても、本大規模買付行為等には構造的な強圧性が存在すると考えています。

(3)小 括


以上のとおり、(i)本大規模買付行為等が市場内で当社株式を取得する方法により、かつ、部分買付けの方法によって行われること、(ii)本大規模買付行為等に係る情報提供が不十分であることから、本大規模買付行為等の手法については、一般株主に対する強圧性が存在すると考えられます。

7 結 語


上記2のとおり、大規模買付者らは、本大規模買付行為等後の当社の企業価値ないし株主共同の利益向上に向けた現実的かつ具体的な施策を有していないこと、上記3のとおり、大規模買付者らと当社及び当社一般株主との間で利害相反関係があり、大規模買付者らが自らの短期的な利益を追求した結果、当社の企業価値ないし株主共同の利益を毀損するおそれがあるものと考えられること、上記4のとおり、大規模買付者らは実態も不透明であってグループとしての責任主体も不明確である等、大規模買付行為等の実施主体として不適切であり、コンプライアンス上の疑義があること、上記5のとおり、本大規模買付行為等は段階的な支配権取得行為の第一歩と考えられるだけでなく、それ自体として当社の企業価値ないし株主共同の利益に対する現実的な脅威となっていること、上記6のとおり、大規模買付者らによる本大規模買付行為等の手法には、一般株主に対する強圧性が存在すること等から、当社としては、本大規模買付行為等が行われることは、当社の企業価値ないし当社株主の共同の利益を毀損するおそれがあると判断した次第です。

第2 独立委員会に対する諮問及び同委員会による勧告


上記第1のとおり、当社取締役会は、大規模買付者による本大規模買付行為等による当社の企業価値ないし当社株主の共同の利益への影響について、評価・検討を重ねると共に、大規模買付者が大規模買付行為等に着手する場合における対抗措置の発動の是非等についても評価・検討を重ねてまいりました。

そのような状況の中、当社取締役会は、その判断の公正性を担保し、かつ、当社取締役会の恣意的な判断を排除するために、当社の業務執行を行う経営陣から独立性を有する当社社外取締役4名によって構成される独立委員会(当該委員会の詳細については、当社の2023年1月11日付けプレスリリース「独立委員会の設置及び独立委員会委員の選任に関するお知らせ」をご参照ください。)に対しても、大規模買付者らが本大規模買付行為等を行うことによる、当社の企業価値ないし当社株主の共同の利益に与える影響や対抗措置の発動の是非等について諮問を行っておりました。

そして、2023年10月24日、独立委員会から、独立委員会委員の全員の一致により、①大規模買付者らが、本大規模買付行為等を行った場合、当社の企業価値ないし株主共同の利益を著しく損なうおそれがあると思料される旨、及び②上記①の評価を踏まえた上で、本議案を、本臨時株主総会において上程すること、及び、本議案が本臨時株主総会において承認可決されることを前提に、今後、大規模買付者らが、本大規模買付行為等に着手したと認められる場合には、当社取締役会が本対抗措置を発動することは相当である旨を内容とする同日付け勧告書(以下「本勧告書」といいます。)を受領しました。本勧告書の要旨は下記(注)をご参照ください。


(注)本勧告書の要旨

本勧告書の要旨は以下のとおりであります。



1. 以下に掲げる理由から、大規模買付者らが、本大規模買付行為等を行った場合、当社の企業価値ないし株主共同の利益を著しく損なうおそれがあると思料 する。

(1) 再生可能エネルギー事業子会社については、分離・上場等させるのではなく、当社グループのバリューチェーン全体で成長させていくことが当社の企業価値ないし株主共同の利益の向上に資すること
・当委員会が2023年5月23日付で当社取締役会に提出した勧告書(その要約については当社の第5号議案上程リリース参照)における判断と同様に、当社取締役会が、当社の中長期的な経営計画におけるコスモエコパワー株式会社(以下「ECP」)の重要性、ECPの事業と当社グループの他事業とのシナジー、ECPが独立した場合における人材確保・資金調達等の面での洋上風力発電プロジェクト遂行への支障、大規模買付者らの主張するスピンオフの実現可能性の低さ等の理由から、大規模買付者らの主張するようにECPを分離・上場させるのではなく、当社グループのバリューチェーン全体で成長させていくことが当社の企業価値ないし株主共同の利益の向上に資すると判断していることは、当社グループの置かれた経営環境、事業構造、大規模買付者らの主張内容・経緯等を踏まえれば、合理的であると考えられる。
・大規模買付者らの提案する特定の第三者によるECPへの資本参加は、表面的な理由のみに基づきなされたものである上、当該第三者の資本参加がECPの事業拡大に貢献し得るとは直ちには考えにくく、むしろECPの洋上風力発電プロジェクトに悪影響を及ぼす可能性があることを踏まえると、かかる提案は実現可能性が低い上に、ECPの事業に悪影響を及ぼし、ひいては当社の企業価値及び株主共同の利益を毀損し得るものであると考えられる。
(2) 製油所の統廃合を進めることは当社の企業価値ないし株主共同の利益の向上に資さないこと
・当社取締役会が、大規模買付者による製油所の統廃合に係る提案は、当社の収益力低下に直結し、企業価値ないし株主共同の利益を大きく毀損するものであると判断していることは、当社の製油所の高い稼働率が石油事業の高い競争力と収益力につながっており、需給バランスや当社の操業能力及び保全能力からすれば当面の間かかる高い稼働率を維持可能であること等を踏まえれば、合理的であると考えられる。
(3) 大規模買付者らが行う可能性を示唆するその他の提案はいずれも妥当性に欠けること
・当社取締役会が、大規模買付者らが行う可能性を示唆する上記(1)及び(2)以外の次世代エネルギーや原油開発に係る提案について、いずれも妥当性に欠けると判断していることは、かかる判断が次世代エネルギーや原油開発を取り巻く客観的状況を踏まえたものであること等を踏まえれば、特に不合理な点は見受けられない。
(4) 大規模買付者らの株主還元に関する要求は、当社の必要自己資本額を下回ることとなる水準の自己資本の払い出しを要求するものであること
・第7次中期経営計画期間における当社の必要自己資本額6,000億円という目標値の算定は、各事業セグメントの資産に内在するリスクのリスク係数を資産額に乗じるという客観的な分析及び計算方法により算定されていること等からすれば、合理的であると考えられる。
・当社の株主還元方針は、財務健全性と株主還元の両立を図るものであり、徒に内部留保の積み増しを行っているものではないことは明らかである。
・これに対して、大規模買付者らは、当社の必要自己資本額は5,000億円程度が最大であり、当期純利益のうちそれを超える部分の100%相当を株主還元に充てることを求めるなどしているが、かかる主張の根拠は十分に示されていない。
・したがって、大規模買付者らの要求する株主還元を行えば、合理的に算出された当社の必要自己資本額を下回ることとなる水準での自己資本の払い出しを行うことになり、当社の財務健全性を脅かし、当社の企業価値・株主共同の利益を著しく損なうおそれがある。
(5) 大規模買付者らによる本大規模買付行為等の真の目的は、当社の企業価値ないし株主共同の利益の向上ではなく、自らの短期的な利益のみを追求するため、中長期的な当社の企業価値の向上を犠牲にし、当社に過度に大規模な自社株公開買付けを実施させることによる保有株式の売り抜けにあることが合理的に推認されること
・大規模買付者らが、当社との協議において一貫して自己株式取得の実行を求め、多額の自己資本の吐き出しによる大規模な自己株式取得に固執してきたことや、大規模買付者らの過去の投資行動も、大規模買付者らの真の目的が上記の点にあることを裏付ける。
(6) 大規模買付者らは、本大規模買付行為等により、当社の経営に対する重要な影響力を有することになるにもかかわらず、大規模買付者らを含むグループの概要に関する十分な情報の提供を拒否し、また、当社の具体的な経営方針を示しておらず、本大規模買付行為等が行われた場合、当社の経営に重大な支障を生じさせるおそれがあること
・本大規模買付行為等が行われた場合、大規模買付者らが単独で特別決議事項について拒否権を有することとなるわけではないものの、当社の過去の定時株主総会における議決権行使比率を踏まえると、大規模買付者らは、協調して行動する株主の確保又は公開キャンペーン等により、容易に特別決議事項に係る実質的な拒否権を獲得することができる現実的な可能性が存在するため、大規模買付者らは本大規模買付行為等によって当社の経営に対する重要な影響力を有することになる。
・大規模買付者らが本大規模買付行為等により当社の圧倒的な筆頭株主になった場合、その意向に反する議案を株主総会に上程した場合には、特別決議事項ではなかったとしても否決される合理的なリスクが存するため、実務上は、当該株主の意向に十分に配慮した経営判断を行うことが求められることになると考えられる。
・大規模買付者らは、本大規模買付行為等の後に当社株式を追加取得する可能性を否定しておらず、大規模買付者らの過去の言動や投資行動を踏まえれば、一定期間が経過した後に当社株式を追加で取得し、さらに当社の経営への影響力を高めていき、最終的に当社の経営支配権を取得する可能性も否定できない。
・それにもかかわらず、大規模買付者らは、大規模買付者らを含むグループの概要に関する十分な情報提供を拒否し、また、再生可能エネルギー事業子会社の分離・上場等及び製油所の統廃合並びに株主還元以外に当社の具体的な経営方針を示しておらず、一般株主が、大規模買付者らが経営に対する重要な影響力を有するに至ることに対して賛同すべきか否かを適切に判断できる状況にないといえる。また、大規模買付者らがかかる影響力を背景に、再生可能エネルギー事業子会社の分離・上場等及び製油所の統廃合を強引に推し進めた場合や、中長期的に当社の企業価値・株主共同の利益の向上に資する経営施策を否定する場合には、当社の経営に重大な支障を及ぼすおそれがある。
(7) 当社経営陣が当社の経営を行う方が当社の企業価値ないし株主共同の利益に資すること
・当社取締役会は、第7次中期経営計画において株主価値向上及びPBR向上に取り組むことを公表し、事業面では、石油事業の構造改善等により収益を大きく改善させるとともにNew領域の収益拡大に向けて取り組むこととし、大きく変動する外部環境を踏まえた施策を打ち出している。また、資本政策においては、総還元性向60%以上、下限配当250円とより踏み込んだ株主還元方針を公表している。これらの取組みを受けて当社のROEは10.0%以上を維持しつつ、当社株価は継続的に上昇し、PBRも0.9倍まで向上しているなど、当社の企業価値・株主価値向上に向けた取組みは、資本市場からも一定の評価を受けているものと評価することができる。
・他方で、大規模買付者らは、実現可能性及び具体性に乏しい再生可能エネルギー事業子会社の分離・上場等及び製油所の統廃合並びに株主還元の実行以外には当社の具体的な経営方針を示していない上に、当社の経営を適切に行う知見や能力を有しているかについても強い疑念を持たざるを得ない。
・したがって、当社経営陣がその知見や能力を活かして当社の経営に真摯に取り組んでいくことが、大規模買付者らが当社の経営支配権又は経営に対する重要な影響力を有する状況の下でその強い影響を受けながら当社の経営を行うことと比較して、当社の企業価値ないし株主共同の利益の維持・向上につながると考えることが合理的である。

2.以下に掲げる理由から、上記1.の評価を踏まえた上で、本議案を、本臨時株主総会において上程すること、及び、本議案が本臨時株主総会において承認可決されることを前提に、今後大規模買付者らが、本大規模買付行為等に着手したと認められる場合には、当社取締役会が本対抗措置を発動することは相当 である。

(1) 本議案を本臨時株主総会において上程することの是非

・上記1.のとおり、大規模買付者らが本大規模買付行為等を行うことは、当社の企業価値ないし株主共同の利益を著しく損なうおそれがあると評価できることに加え、下記(2)のとおり、本対抗措置の発動について当社の株主総会にて株主の承認を得ることを前提として、本大規模買付行為等に対して本対抗措置を発動することに必要性及び相当性が認められることも踏まえれば、当社取締役会が当社の企業価値ないし株主共同の利益が著しく損なわれることを回避するため本大規模買付行為等の実施に反対し、本対抗措置を発動すべきであるとして本議案を本臨時株主総会に上程することは相当である。

(2) 本議案が本臨時株主総会にて承認可決されることを前提に、大規模買付者が本大規模買付行為等に着手したと認められる場合に、当社取締役会が本対抗措置を発動することの是非

・本対抗措置の発動について必要性があること

- 上記1.のとおり、大規模買付者らによる本大規模買付行為等により、当社の企業価値ないし株主共同の利益が著しく損なわれるおそれがある。

- 本大規模買付行為等は部分買付けとなるところ、本大規模買付行為等により当社の企業価値ないし株主共同の利益が著しく損なわれるおそれがあると考えられる上に、大規模買付者らは、当社の一般株主に対して本大規模買付行為等の是非について検討を行うために必要な情報を十分に提供しているとは評価し難いこと、本大規模買付行為等は市場内買付けの方法により行われること、大規模買付者らが本大規模買付行為等により当社の経営に重要な影響力を有することになるだけではなく、その後の追加取得により経営支配権を取得する可能性も否定できないこと等を勘案すれば、本大規模買付行為等は一般株主に対する強圧性を有する。

- 大規模買付者らによる情報開示は不十分かつ不適切であり、株主による適切な判断を困難にしている。

- 市場内買付けによる本大規模買付行為等及びその後に行われる可能性のある大規模買付者らによる当社株式の追加取得により、一般株主に対して適切な支配権プレミアムが支払われずに、経営支配権・経営に対する重要な影響力を取得されるリスクを生じさせる。

- 本対抗措置は、その発動の是非を株主に諮る議案が株主総会に上程され、当該議案が普通決議により承認可決されることを前提としており、株主の合理的な意思に基づくものであるといえる。

- 以上より、本大規模買付行為等により当社の企業価値・株主共同の利益が著しく損なわれることを回避するため、本対抗措置を発動する必要性が存すると考えることが合理的である。

・本対抗措置については相当性が確保されていること

- 本対抗措置の発動は、大規模買付者らに対してその持株比率の希釈化に伴い損害を与え得るものではあるが、現時点において、一定の限度で、①大規模買付者らにおいて生じ得る損害を回避する可能性が確保されており、②大規模買付者らに生じ得る損害を軽減する措置が講じられており、かつ、③大規模買付者らにおいて今後、本臨時株主総会において本議案が承認可決され、かつ、本大規模買付行為等に着手した場合、本対抗措置が発動され損害を被ることは予見可能と考えられることに加え、実際に発動される際にも、独立委員会が本対抗措置の内容等を検討した上で行う勧告が最大限尊重されることとされており、当社取締役会により恣意的な運用がなされ、不合理な内容の対抗措置が発動されることがないような仕組みが設けられている。

- したがって、本対抗措置の相当性は確保されていると考えることが合理的である。

別紙1

大規模買付者グループによる過去の投資活動や裁判所の認定等


第1 アコーディアに対する投資事例


公表情報によれば、村上氏の影響下にある、レノ、株式会社C&I Holdings(以下「C&I」という。)、南青山不動産、株式会社シティインデックスホスピタリティ(以下「シティインデックスホスピタリティ」という。)、株式会社シティインデックスホールディングス(以下「シティインデックスHD」という。)、株式会社フォルティス(以下「フォルティス」という。)及び株式会社リビルド(以下「リビルド」という。)ら(以下、村上氏の影響下にあるファンド等を総称して、「村上ファンド関係者」という。)は、2012年11月に、PGMホールディングス株式会社(以下「PGM」という。)による株式会社アコーディア・ゴルフ(以下「アコーディア」という。)に対する敵対的公開買付け(以下「公開買付け」を「TOB」という。)が実施されて以降、事前警告型買収防衛策を有していなかったアコーディア株式を市場において大量に買集め、PGMによる敵対的TOBが失敗に終わった後も買い増しを続けた。

公表情報によれば、PGMによる敵対的TOBが実施されている状況下において、レノは、2013年1月13日付けで、アコーディアに対して、①PGMとの経営統合に関する諸条件について交渉の場につくとともに、②自己株式取得を徹底的に行うといった株主還元策の継続的な実施を要求した上で、かかる要求を受け入れる場合にはPGMによるTOBに応募しないが、これを拒否するのであればPGMによるTOBに応募するとして、TOB期間の末日である同月17日正午を回答期限とする文書を送付する等の働き掛けを行った。

公表情報によれば、その後、村上ファンド関係者は、アコーディア株式の買い増しを続け、2014年3月28日までにアコーディアに対する持株比率(以下、特段の記載がない限り、大量保有報告規制上の「株券等保有割合」を「持株比率」と称する。)を約24%まで高めていた。アコーディアは、同日、レノ、C&I、南青山不動産及びシティインデックスホスピタリティとの合意の下に、同年6月の定時株主総会後に、保有するゴルフ場の約7割(同社がそれまで保有していた133コースのゴルフ場のうち90コース)を売却した上、その売却で得た総額1,117億円のうち、450億円超を投じて、当時における同社株式時価総額の約32%に相当する大規模な自社株TOB(本項において、以下「本自社株TOB」という。)を実施すること等を内容とする企業再編策を公表するに至った。その際、村上ファンド関係者は、アコーディアとの間で、村上ファンド関係者が保有する株式の全部を本自社株TOBに応募する旨合意していた。なお、公表情報によれば、本自社株TOBは、1株当たり1,400円で同社の発行済株式総数の約30%を取得するものであったが、その実施の予告がされた2014年3月28日の前営業日の同社株式の終値に対して4.24%のプレミアムを、本自社株TOBの実施の公表の前営業日の同社株式の終値に対しても9.89%のプレミアムをそれぞれ付した、いわゆるプレミアム付き価格によるものであった。

このような、アコーディアが保有する事業用資産の大半の売却によって得た資金を原資とした大規模な自社株買いについては、当時のPGMの社長から、「ゴルフ場資産を切り離して残った会社に、グロース(成長)があるのか。自己株買い付けにしても、余剰資金ではなく身を切り崩してやるような例は見たことがない。究極の焦土作戦ではないか」と評されている(2014年3月30日付け東洋経済ONLINE参照)。

なお、プレミアム付き価格での自社株TOBは、応募株主に対してその時点における発行会社の市場価格を上回る金額が払い出されることになるため、一般的に、発行会社の中長期的な企業価値が低下するおそれが相対的には高いものと考えられており、実務上も、自社株TOBがプレミアム付きの価格で行われる例は少ない。

実際に、アコーディアの株価は、本自社株TOB公表日の前営業日の2014年8月1日には1,274円であったところ、TOB期間が終了した同年9月1日以降、徐々に低下し、同年11月下旬頃には1,000円程度にまで下落するに至っている。

公表情報によれば、アコーディアによる本自社株TOBにおける買付予定株式数の上限は、3,214万3,000株と非常に大規模(当時の同社の発行済株式総数の約30%)なものであり、本自社株TOBの予告がされる直前における村上ファンド関係者によるアコーディア株式の保有株式数である2,550万8,800株を上回る株式数であった。上記のとおり、レノ、C&I、南青山不動産及びシティインデックスホスピタリティは、アコーディアとの間で本自社株TOBに応募すること等について合意しており、村上ファンド関係者は、本自社株TOBによりアコーディア株式を(市場で売却した場合における売却価格の大幅な下落を回避しつつ)市場価格よりも高く売り抜ける機会を与えられることとなった。

なお、上記のとおり、レノ、C&I、南青山不動産及びシティインデックスホスピタリティは、アコーディアとの間で本自社株TOBに応募すること等について合意していたが、報道によれば、村上ファンド関係者は、アコーディアが2014年3月28日に上記企業再編策を公表した後も、かかる合意の当事者となっていないため本自社株TOBに応募する義務を負っていなかったシティインデックスHD、フォルティス及びリビルドを通じてアコーディア株式を買集め、アコーディアの大株主として、同社に対する株主還元の働き掛けを継続していた(2014年8月14日付け東洋経済ONLINE参照)。

そして、公表情報によれば、村上ファンド関係者は、2014年8月5日、アコーディアに対して、本自社株TOB後における株主還元の規模等が不満であるとして、アコーディアの社外取締役6名全員の解任及びレノの役職員5名の取締役への選任を求めて臨時株主総会の招集請求を行った。その後、同年8月12日に、アコーディアは、村上ファンド関係者の提案を受け入れる形で、上記同年3月28日の企業再編策の公表時に併せて公表していた、本自社株TOB後の減配方針(配当性向を従来の連結配当性向90%から「みなし連結当期純利益」の45%に減配)を撤回し、本自社株TOB後も2016年3月期と2017年3月期の2期において合計200億円の大規模な株主還元を行う旨の発表を行っている。

公表情報によれば、2014年8月28日には、村上ファンド関係者は、その持株比率を約35%にまで高めていたが、上記発表をうけて、臨時株主総会の招集請求を撤回するとともに本自社株TOBに応募して、最終的に、その保有に係るアコーディア株式の一部(持株比率約35%のうち約20%)を売却した。

以上のように、村上ファンド関係者は、アコーディア株式の取得を開始してから約1年10か月の間に、臨時株主総会の招集請求を含め、アコーディアに対する様々な働き掛けを行い、その保有に係るアコーディア株式を本自社株TOBにより高値で買い取らせるとともに、大規模な株主還元をも引き出している。

その後、公表情報によれば、村上ファンド関係者は、2016年11月に公表された株式会社MBKP Resort(外資系投資ファンドであるMBKパートナーズ傘下の投資ビークル。以下「MBKP」という。)がレノと協議の上実施したTOB(TOB価格である1,210円はTOBの公表日前日のアコーディア株式の終値1,045円に15.8%(165円)のプレミアムを乗せた、いわゆるプレミアム付き価格でのTOBであった。)に際してMBKPとの間で締結した応募契約によって、その保有に係る株式を全て売却している。

公表情報及び報道によれば、MBKPのTOB開始時点において、村上ファンド関係者は、アコーディアの発行済株式総数の18.95%、総株主の議決権の22.77%を保有しており、村上ファンド関係者は、2013年にアコーディア株式の取得を開始してからそれまでにアコーディア株式に総額約380億円強を投資していたところ、上記の自社株TOBで約296億円弱を、上記のMBKPのTOBでは約194億円を回収し、最終的な投資回収金額は約490億円(利益は約110億円)に上るともされている(2016年12月7日付け東洋経済ONLINE参照)。

なお、アコーディアは2019年になって、ゴルフ場の運営に集中するよりも、土地と⼀体経営し、投資をした方が、競争力が高まるとの判断の下、2014年に売却したゴルフ場の土地の買い戻しを検討している旨報道されている(2019年12月18日付け日本経済新聞朝刊参照)。

第2 MCJに対する投資事例


公表情報によれば、レノは、2012年後半から株式会社MCJ(以下「MCJ」という。)の株式の買集めを進め、2013年3月29日には、その保有株式数は499万4,100株(持株比率9.82%)に達し、共同保有者であった当時のレノの代表取締役及び中島章智弁護士(以下「中島弁護士」という。)の保有株を合わせると、その保有株式数は合計で、992万8,600株(持株比率19.52%)に達していたが、同年10月8日付けで、当時のレノの代表取締役及び中島弁護士との共同保有の合意を解除した上で、MCJに対して、同社株式の大規模買付行為(以下「本大規模買付行為」という。)に係る意向表明書を提出していた。同社の同日付け「当社株式の大規模買付行為に係る意向表明書の受領に関するお知らせ」と題するプレスリリースによれば、当該意向表明書において、「当社〔注:MCJ〕株式の買付けの目的は純投資であり、当社株式の潜在的価値の実現、及び当社の中長期的な企業価値の向上に伴う値上がり益を目的としている」等と表明していた。なお、MCJ株式の同日の終値は191円であったが、かかるリリースを受けて、翌9日はストップ高となり、終値は241円となった。

その後、公表情報によれば、MCJは、2013年11月28日以降、取締役会において本大規模買付行為に対する評価・検討を行ったが、同年12月12日、「当社株式の大規模買付行為に関する独立委員会からの勧告書の受領及び当社取締役会における評価・検討結果の確定について」と題するプレスリリースを行い、かかるプレスリリースにおいて、「当社取締役会といたしましては、レノ社による大規模買付行為に対する大規模買付対抗措置を発動せず、当面の間、レノ社の投資動向及び事態の推移を注視」していく旨を表明した。なお、公表情報によれば、上記の発表がなされる直前である2013年12月12日におけるMCJの株価の終値は268円であったが、発表の翌日である13日の終値は348円まで急騰し、その次の取引日である同月16日には、395円で取引が始まり、その後296円まで下落したものの、終値は303円と引き続き高い水準で推移した。

以上のとおり、MCJがレノによる本大規模買付行為の実行を是認し、これに対して対抗措置を執らないことを公表したにもかかわらず、公表情報によれば、レノは、MCJが上記のとおり対抗措置を執らない旨を表明した日のわずか2営業日後である2013年12月16日、株式の潜在的価値の実現及びMCJの中長期的な企業価値の向上のために、今後の株式市場の動向等を勘案しつつ、当社の株式保有比率又は議決権割合が20%以上となる当社株式の買付けを行う意思があるという自らの意向表明の内容とは裏腹に、保有していたMCJ株式のうち324万4,200株(持株比率にして6.38%)を、上記のとおり、MCJが対抗措置を執らないと発表したことを受けて株価が高い水準で推移している中、市場内で売却している。

第3 黒田電気に対する投資事例


公表情報によれば、レノ、C&I、南青山不動産、株式会社シティインデックス舞子、株式会社オフィスサポート(以下「オフィスサポート」という。)、株式会社ATRA、村上氏、村上氏の長女である野村絢氏ら村上ファンド関係者は、2015年頃から、黒田電気株式会社(以下「黒田電気」という。)の株式を市場において大量に買集めた。なお、報道記事によれば、買集め当初において、村上氏は、黒田電気は電子部品商社であり、半導体を主に扱っていないにもかかわらず、同社が半導体商社の中心となって半導体商社の再編を実現すべきであると主張しており、村上氏との話し合いに応じた黒田電気の当時の執行役員は、村上氏について「そもそも黒田電気が何をやっているのかをよく知らないようだった」と述べている(2015年8月22日付け「週刊東洋経済【巻頭特集 村上,再び。】-村上世彰の長女・絢,大いに語る-村上,再び。」32~33頁参照)。

そのような中、公表情報によれば、C&I及び南青山不動産は、黒田電気に対して、2015年6月26日の定時株主総会の終了直後、その日のうちに、村上ファンド関係者を含む計4名の社外取締役の選任を決議事項とする臨時株主総会請求の招集請求を行った。黒田電気は当該請求を受けて、同年7月10日に、臨時株主総会を開催すること及び臨時株主総会の付議議案(社外取締役4名の選任)に対して反対することを決定・公表し、同年8月21日に開催された同社の臨時株主総会において、当該付議議案は否決された。

公表情報によれば、その後も、村上ファンド関係者は黒田電気の株式を市場において大量に買集め、レノは、2017年5月2日に、社外取締役1名の選任に係る株主提案を行った。黒田電気は同月23日開催の取締役会で当該株主提案について反対する決議をし、同月29日に当該株主提案に対する取締役会の意見を公表した。なお、黒田電気は、当該株主提案を巡る経緯をまとめた同年6月7日付け「株主提案に対する当社取締役会意見に至るまでの経緯」と題するプレスリリースの中で、村上氏の発言や姿勢について、「対応した経営陣を威圧するような姿勢でなされました」、「通常の対話のレベルを超える威圧的な行動」と批判している。その後、黒田電気の反対にもかかわらず、同月29日の定時株主総会において同株主提案が可決されたことにより、レノは、黒田電気に社外取締役1名を送り込んだ(公表情報によれば、同月7日時点の村上ファンド関係者による黒田電気に対する持株比率は約35%まで高まっていた。)。

その後、公表情報によれば、村上ファンド関係者は、黒田電気に対する持株比率を2017年11月上旬までに約38%にまで高めたものの、黒田電気は、同年10月31日に外資系投資ファンドであるMBKパートナーズ傘下の投資ビークルであるKMホールディングス株式会社(以下「KMホールディングス」という。)が公表したTOBを受け入れ、上場廃止を選択したため、村上ファンド関係者は、その保有する黒田電気の株式の全てを、当該TOB及び当該TOB終了後に黒田電気が実施する自社株TOBにKMホールディングスと応募契約を締結した上で応募することによって、2018年3月までに全て売却した。

なお、報道によれば、村上ファンド関係者は、租税や信用取引解消の影響を除いた概算で約84億円の利益を得ているとされている(2017年11月13日付け東洋経済ONLINE参照)。

以上のとおり、村上ファンド関係者は、レノが黒田電気に社外取締役を送り込んでから、わずか約4か月で保有する同社株式全ての売却合意を行い、それからわずか約4か月後には同社株式の全てを売却し、公表情報によれば、約84億円の利益を得たことになる。

第4 ヨロズに対する投資事例


公表情報によれば、レノは、株式会社ヨロズ(以下「ヨロズ」という。)に対して、複数回に亘り、自社株買いを含む株主還元の実施を求める書簡を送付していたところ、2019年5月10日、ヨロズに対して買収防衛策の廃止に関する議題等を招集通知及び参考書類に記載すること等を求める株主提案議題等記載仮処分命令申立て(以下「本仮処分命令申立て」という。)を行っている。

かかる本仮処分命令申立ては、横浜地方裁判所決定(横浜地決令和元年5月20日資料版商事法務424号126頁。以下「本仮処分原審決定」という。)により却下され、その即時抗告も東京高等裁判所決定(東京高決令和元年5月27日資料版商事法務424号120頁。)によって棄却されているが、本仮処分原審決定は、被保全権利の存在には疑問があるとしつつ、①レノが村上氏の強い影響力の下にあること、②従前、レノ(ないし同じように村上氏の強い影響力の下にあった法人)が投資先企業に対して行ったのと同様に、ヨロズについても、同社株式を大量に買い付けた上、同社の経営陣に様々な圧力をかけることによって、買集めた大量の同社株式を短期間のうちに同社やその関係先に高額で売り付け、多額の利益を享受することを目的としており、その障害となる買収防衛策を廃止することを企図していると推認できること等を認定した上で、保全の必要性を認めることはできない旨判示している。

ちなみに、本仮処分原審決定においては、

「ア  債権者〔注:レノ。以下同じ〕、債権者の100%株主である株式会社B、同社の株式50%を保有し、平成26年12月1日まで債権者の代表取締役であったC、A〔注:村上氏。以下同じ〕の子が代表取締役である株式会社D、株式会社E、株式会社F、株式会社G、株式会社H及び株式会社I等は、Aの強い影響力の下にある(以下、Aの強い影響力の下にある上記関係者を『債権者ら』という。)。

イ Aは、平成27年、債権者らが債務者〔注:ヨロズ。以下同じ〕の株式を10%程度取得した際、債務者に対し、具体的な事業計画や事業運営に関する改善提案等を全く示さないまま、債務者の配当が低い、配当性向を100%にせよ、株主還元を含めた新たな中長期計画を出せ等と要求し、Aが債務者の株主還元も含めた中長期計画に納得しない場合には、『公開買付けさせてください。プロセスに入りましょう』、『11人の取締役を一応、クビ、やめてもらうと。それについては、3人は残して、4人うちから入れて、その7人の取締役会で配当政策を決める』などと述べる一方、『大きな自己株〔自社株買い〕をやるのであれば僕はOK出しますから、撤回します』と述べ、『御社は株主価値を上げるのか、Aの会社になるのか、はたまたMBOをするのかの3択です』などと要求したが、結局、債権者らは、その後、債務者の株価が上がった段階で全株式を売却した。

ウ 債権者は、平成30年になって再度債務者の株式を取得し始め、平成31年に入ると、債務者に対する持株割合が10%に満たない段階で、『株主価値の向上』をうたいつつも、債務者の中長期的利益に資するような具体的な事業計画や事業運営に関する改善策に興味を示すことなく、単に、買収防衛策の廃止や自社株買いといった施策の実施を求めた上、株主提案権の行使をほのめかした上、本件株主提案を行い、その後も、債務者の株式を買い増している。

エ 債権者らは、平成24年から平成31年にかけて、株式会社J、K株式会社、L株式会社、M株式会社及び株式会社Nに対し、大量の株式を買い付け、対象会社の経営者に様々な圧力を掛けた上、対象会社自身又は対象会社の関係者に対し、買い付けた株式の全部又はその大半を高値で購入させ、転売益を得ている。

オ Aの強い影響力の下にあった株式会社O、株式会社Pは、平成14年から平成17年にかけて、上記エの債権者らと同様の手法により、株式の転売益を得ている。」

と一応認定されている。

公表情報によれば、その後、レノは、2020年11月20日、ヨロズに対して、買収防衛策の廃止等についての権限を株主総会に付与する旨の定款変更を議案とする臨時株主総会招集請求を行った。ヨロズは、かかる請求を受けて、同年11月25日に、当該議案に対して反対の意見表明を行うことを決定・公表し、2021年1月22日に開催された同社の臨時株主総会においては、50%を超える反対により当該議案は否決された。

第5 エクセルに対する投資事例


公表情報によれば、2019年3月頃(なお、2019年3月31日時点で村上ファンド関係者はエクセルの発行済株式の38.07%を保有するに至っていた。)、村上氏は、自らが交渉に関与して、株式会社エクセル(以下「エクセル」という。)の、加賀電子株式会社(以下「加賀電子」という。)への実質的な売却に係る交渉を開始したが、かかる状況下において、エクセルは、同年5月にレノの代表取締役をエクセルの社外取締役とすることを受け入れるに至り、同年6月26日開催のエクセルの定時株主総会においてレノの代表取締役が同社の社外取締役に選任され、その後社外取締役に就任した。

そして、かかる社外取締役への就任から5か月余りしか経過していない2019年12月9日に、エクセルは、加賀電子との間で経営統合(以下「本経営統合」という。)を行うことを決定し、公表した(なお、同日時点で村上ファンド関係者はエクセルの議決権割合の39.93%を保有するに至っていた。)。

公表情報によれば、本経営統合のスキームは、①エクセル株式を保有していないシティインデックスイレブンスを株式交換完全親会社とし、エクセルを株式交換完全子会社とする現金を対価とする株式交換(以下「本現金株式交換」という。)を行った上、②エクセルの資産を、(a)本経営統合後のエクセルにおいて事業運営上必要な資産(以下「事業用資産」という。)と(b)本経営統合後のエクセルにおいて事業運営上必ずしも必要とはならない資産(以下「移管対象外資産」という。)とに分離した上で、本現金株式交換の効力発生直後に移管対象外資産をエクセルからシティインデックスイレブンスに対する現物配当により移管し、③当該現物配当の実施直後に、シティインデックスイレブンスが加賀電子に対してエクセル株式の全てを譲渡するというものである。

このスキームは、従前、一体の組織として事業を営んできたエクセルを実質的に2つに分割し、さらに、移管対象外資産については、単なる投資ビークルであるシティインデックスイレブンスに現物分配しようとするものである。

以上のとおり、レノの代表取締役が2019年6月にエクセルの社外取締役に就任して約5か月余りで、村上ファンド関係者の主導の下で、エクセルについて、事業を解体する形での本経営統合の公表に至り、最終的に本経営統合は2020年4月1日に効力が発生している。

第6 東芝機械(現芝浦機械)に対する投資事例


公表情報によれば、村上ファンド関係者であるオフィスサポート並びにその共同保有者の野村絢氏及び株式会社エスグラント(以下「エスグラント」という。)は、東芝機械株式会社(なお、東芝機械株式会社は2020年4月1日にその商号を芝浦機械株式会社に変更しているが、以下では、その前後を問わず、「東芝機械」という。)株式を市場で大量に買集め、2019年11月29日までにその持株割合を9.19%(総議決権に対する割合は約11.49%)にまで高めた。その後、公表情報によれば、オフィスサポートは東芝機械との間で実質的な協議を行うことなくTOBの準備を行い、2020年1月10日以降、TOBの諸条件やTOB後の東芝機械の経営方針等についての一切の説明をすることなしに、東芝機械株式に対するTOBを予告するに至った。東芝機械は、同月17日、当該TOBの予告を受け、オフィスサポートないしその子会社からの当社株式を対象とするTOBや、当該TOBの予告がなされている状況下において企図されることがあり得る他の大規模買付行為等への対応方針(以下「東芝機械対応方針」という。)を導入することを取締役会において全会一致で決議し、公表した。

東芝機械対応方針の導入にもかかわらず、その後、オフィスサポートの子会社であるシティインデックスイレブンスは、2020年1月21日、東芝機械対応方針に定める手続を遵守することなく、東芝機械株式を対象とするTOBを開始した(なお、この時点において、村上ファンド関係者であるオフィスサポート及びエスグラントは合計して持株比率12.75%に相当する東芝機械株式を保有するに至っていた。)。

2020年2月12日、東芝機械は、当該TOBについて、①シティインデックスイレブンス・公開買付者グループ(村上ファンド関係者であるオフィスサポート、エスグラント及びシティインデックスイレブンスを総称していう。以下同じ。)からTOB後における東芝機械の経営方針が一切示されておらず、シティインデックスイレブンス・公開買付者グループによる東芝機械への経営の関与の態様が全く不明瞭なこと、②TOBに至るまでの経緯においても、東芝機械の企業価値向上を目指す意図はなく、自らのキャッシュ獲得のみに関心があると考えられること、③村上氏の影響下にある法人による過去の投資事例を踏まえると、東芝機械に対するTOB及びシティインデックスイレブンス・公開買付者グループの株主価値向上案は東芝機械の企業価値を毀損する可能性が高いこと、④シティインデックスイレブンス・公開買付者グループが、対話の過程において東芝機械の要請を継続的に無視し続け、シティインデックスイレブンスによるTOBについても東芝機械対応方針を無視して開始されたこと、⑤シティインデックスイレブンス・公開買付者グループは外為法に違反していることが疑われ、東芝機械の大株主の適格性に疑義があること、⑥シティインデックスイレブンスによるTOBは、支配権の移転に反対する株主が、かえってTOBに応募する動機を持つという強圧性を有するものであること等を理由にしてシティインデックスイレブンスによるTOBに対して反対の立場をとり、東芝機械対応方針の導入及び東芝機械対応方針に基づく対抗措置(差別的行使条件等及び取得条項等が付された新株予約権の無償割当て)(本項において、以下「本対抗措置」という。)の発動の是非を問うため、株主意思確認総会の開催を決定した。

公表資料によれば、その後、シティインデックスイレブンス・公開買付者グループは、東芝機械に対して、東芝機械が既に公表していた約30億円の特別配当に加えて、約120億円の大規模な自社株買いを決定すれば、株主意思確認総会を待たずにTOBの撤回をするとし、シティインデックスイレブンスによるTOBの撤回を「取引材料」として東芝機械に約120億円の大規模な自社株買いを決定すること等を迫ったものの、東芝機械は、シティインデックスイレブンス・公開買付者グループが、シティインデックスイレブンスによるTOBを、東芝機械に最終的に自社株買いを実行させて、それを通じて自らが保有する株式を売却して利益を上げるための不当な圧力の手段として用いていたことについて、「ニッポン放送事件の東京高裁決定(東京高決平成17年3月23日判時1899号56頁)がいう、『会社を食い物にする』四類型の一つである、『真に企業経営に参加する意思がないにもかかわらず、ただ株価をつり上げて高値で株式を会社関係者に引き取らせる目的で株式の買収を行っている場合』に当てはまる疑いが強い」ものとして強く非難した上で、約120億円の大規模な自社株買いの要求を拒否し、2020年3月27日に株主意思確認総会を開催した。当該株主意思確認総会においては、東芝機械対応方針の導入及び本対抗措置の発動のいずれの議案についても、出席株主の総議決権数の約62%を超える賛成をもって承認可決されている。

なお、公表資料によれば、買収防衛策の導入や更新議案に対して極めて否定的な立場をとることで知られている世界最大の議決権行使助言会社であるInstitutional Shareholder Services Inc.(ISS)も、シティインデックスイレブンスによるTOBが成立した場合にはシティインデックスイレブンスが実質的な経営支配権を取得し得るにもかかわらず経営方針を持たない点に疑義がある等として、東芝機械対応方針の導入及び本対抗措置の発動のいずれの議案についても賛成の議決権行使を推奨した。

当該株主意思確認総会の結果を踏まえて、2020年3月27日、東芝機械は、対抗措置として、差別的行使条件等及び取得条項等が付された新株予約権の無償割当ての決議を行い、これを受け、シティインデックスイレブンスは、同年4月2日、TOBを撤回している。

第7 レオパレス21に対する投資事例


公表情報によれば、レノ、エスグラント、レノの従業員である大村将裕氏(以下「大村氏」という。)及びシティインデックスイレブンスの村上ファンド関係者は、2019年頃より、株式会社レオパレス21(以下「レオパレス21」という。)の株式を市場において大量に買集め、2019年12月11日までにその持株比率を14.46%にまで高めた。

その後、2019年12月27日に、レノ及びエスグラントは、レオパレス21に対して、取締役全員(10名)の解任と取締役3名の選任を目的とした臨時株主総会の招集請求をした。公表情報によれば、その後、レノ及びエスグラントは他の大株主の賛同を得られないこと等から、2020年1月28日に突如として方針を変更し、取締役全員を解任する株主提案の撤回と、3人の取締役候補を1人(大村氏)に絞る株主提案に修正した。

公表資料によれば、レオパレス21は、①村上ファンドグループがコーポレートガバナンスの向上を標榜して会社の株式を大量に買集め、かかる会社の経営陣に対して様々な圧力をかけるという手法を過去にも繰り返してきたという周知の事実、②村上ファンドグループが自らが推薦する取締役を会社に送り込み、非現実的な高水準の株主還元等の要求を繰り返し、かかる会社を上場廃止に追い込んだ事例の存在、③村上ファンドグループが、会社の経営権を取得した後に、その資産の全部又は一部を切り売りするといういわゆる「解体型買収」を行った複数の事例の存在、④これまでのレノやエスグラントとのやり取りを踏まえると、レノやエスグラントは、レオパレス21の中長期的な企業価値の向上に取り組む意図がないことが明らかであって、むしろ、株主提案を通じてレオパレス21の「解体型買収」を企図していることが推認され、レノやエスグラントは、他の株主を含むステークホルダーの利益を犠牲にして自己の利益を追及する可能性が高いこと等を理由にレノ及びエスグラントの株主提案(大村氏の取締役選任)に反対をしていた。

なお、レオパレス21は、プレスリリースにおいて、レノやエスグラントは、レオパレス21における施工不備問題の発覚後の2019年3月頃よりレオパレス21株式の取得を開始しており、同年4月以降のレオパレス21の面談や書簡のやり取りの中で、レオパレス21の解体や減資を示唆する発言を行うほか、自らが主導した「解体型買収」の他社事例に言及した上で、レオパレス21の解体的買収ないし資産の切り売りを実現して自らの短期的な利益のみを追求しようとしていたことを明らかにしている。

その後、2020年2月27日に開催された臨時株主総会において、レオパレス21が提案した会社提案(社外取締役2名の選任)については可決され、レノ及びエスグラントの株主提案(大村氏の取締役選任)は否決された。

報道によれば、臨時株主総会では、「会社が再建に向かっているときに、ハゲタカファンドに付け入る隙を与えてどうするのか」といったレノ側に否定的な発言が出るたびに株主総会の会場では拍手がわいたとのことであり、臨時総会における投票においては、「村上氏らは信用ならない。会社を解体されてはたまらない」、「レノが主張する事業売却をすれば会社が潰れてしまうかもしれない」といった意見に代表される、レノの実質的なオーナーの村上氏への懸念のほか、レノが旧村上ファンド系ということ自体への不安、「レノが自社の利益だけを追求するのでは」といった懸念等から、レオパレスの物件オーナーの株主を中心に株主提案(大村氏の取締役選任)に対して反対が集まったと分析されている(2020年2月27日付け日経ビジネス電子版「レオパレス、村上氏ファンドの提案否決も勝利にあらず」1~2頁、2020年2月28日付けFujisankei Business i.「レオパレスとレノ、対立続く 臨時総会、社外取締役選任案を否決」1頁、2020年2月28日付け産経新聞 東京朝刊「ファンド側提案 否決 レオパレス 株主の不安拭えず 業績回復・不備改修改革に猶予」10頁等参照。)。

第8 三信電気に対する投資事例


1.第1回自社株TOB


公表情報によれば、C&I、オフィスサポート、南青山不動産、エスグラント、野村絢氏等の村上ファンド関係者は、2015年4月頃から三信電気株式会社(以下「三信電気」という。)の株式を市場において大量に買集め、最終的に村上ファンド関係者の三信電気株式の持株比率を約38%まで高めた。

しかし、公表情報によれば、C&I、オフィスサポート、南青山不動産及びエスグラントは、かかる株式大量取得の開始から約3年数か月後の2018年5月に、三信電気が実施した総額197億1,200万円の自社株TOB(以下「第1回自社株TOB」という。)に応募して、その保有に係る三信電気株式の大部分を売却した。

第1回自社株TOBは、TOB価格を2,191円と設定しており、公表の前営業日である2018年5月11日時点の三信電気の市場株価の終値2,234円との比較ではディスカウント価格であったが、そのディスカウント率はわずか1.92%であり、同社株式の過去3か月間の終値の単純平均値に対して約120円のプレミアムを付した、いわゆるプレミアム付き価格で行われたものであった。なお、第1回自社株TOB公表の3か月前における三信電気の市場株価の終値は1,826円(2018年2月9日)であったところ、第1回自社株TOB公表の前営業日における終値は2,234円(同年5月11日)であった。この3か月間に同社の株価は約22%上昇しているが、大量保有報告書の変更報告書から判明する限り、この間、村上ファンド関係者は、三信電気株式を市場内で持株比率にして少なくとも約1%買い増している。

上記第1で述べたとおり、プレミアム付きの高値での自社株TOBは、応募株主に対して、その時点における発行会社の株価を上回る金額が払い出されることになるため、一般的に、発行会社の中長期的な企業価値が低下するおそれが相対的には高いと考えられており、実務上も、自社株TOBがプレミアム付きの高値で行われる例は少ない。

三信電気の株価は、第1回自社株TOB公表日の前営業日である2018年5月11日には2,234円であったところ、TOB期間の終了日である同年6月11日には、TOB価格である2,191円を下回る2,152円に下落し、その後1,700円台まで続落している。

公表情報によれば、三信電気による第1回自社株TOBにおける買付予定数の上限は、900万100株(当時の同社の発行済株式総数の約30.74%相当)と大規模なものであり、第1回自社株TOBの公表直前における村上ファンド関係者による三信電気株式の保有株式数の合計である1,120万9,100株(当時の同社の発行済株式総数の約39.58%相当、自社株式を除いた発行済株式総数全体に占める割合にして40.98%相当)に近い株式数であり、三信電気による第1回自社株TOBにより、村上ファンド関係者は、三信電気株式を(市場で売却した場合における売却価格の大幅な下落を回避しつつ)、市場価格よりも高く売却する機会を与えられることとなった。

なお、自社株買いの手法として、市場買付けやToSTNeT-3ないしToSTNeT-2の手法ではなく、自社株TOBの手法が用いられたことによって、三信電気につき、自社株式を除いた発行済株式総数全体に占める割合(実質的には議決権割合に等しいため、本項において、以下、これを「議決権割合」という。)にして5%超3分の1以下を有していた、(村上ファンド関係者を構成する投資ビークルである)内国法人のC&I、オフィスサポート及び南青山不動産は、第1回自社株TOBに応募する結果として認識されるみなし配当部分につき、配当益金不算入の恩典を50%享受することが可能となり、みなし配当部分についての50%益金不算入とそれに基づく多額の税務上の株式譲渡損の認識による課税所得の大幅な圧縮という多額の税務メリットを得ることが可能となった。

2. 第2回自社株TOB


公表情報によれば、上記1.の第1回自社株TOBに応募したことによって、村上ファンド関係者は、いったん、三信電気に対する持株比率を大きく減少させた(2018年7月3日時点で約13.90%)が、その後、再び三信電気株式を大量に買集めるに至り、2020年11月4日までに、村上ファンド関係者の持株比率を約27.63%(議決権割合にして約34.73%)にまで高めた。

しかしながら、公表情報によれば、シティインデックスイレブンス及びエスグラントは、2021年6月に三信電気が実施した総額157億4,300万円の自社株TOB(以下「第2回自社株TOB」という。)に応募して、その保有に係る三信電気株式の大部分を売却している。

第2回自社株TOBは、TOB価格を2,249円と設定しており、TOBの公表の前営業日である2021年5月11日時点の三信電気の市場株価の終値2,070円から8.65%(179円)のプレミアムを付した、いわゆるプレミアム付き価格によるものであった。

上記1.でも述べたとおり、プレミアム付きの高値での自社株TOBは、応募株主に対して、その時点における発行会社の株価を上回る金額が払い出されることになるため、一般的に、発行会社の中長期的な企業価値が低下するおそれが相対的には高いと考えられており、実務上も、自社株TOBがプレミアム付きの高値で行われる例は少ない。

三信電気の株価は、第2回自社株TOBの公表日の前営業日である2021年5月11日には2,070円であったところ、TOB期間の終了日である同年7月19日には、TOB価格である2,070円を下回る2,015円に下落している。

公表情報によれば、第2回自社株TOBにおける買付予定株式数の上限は、700万株(現在の同社の発行済株式総数の約28.82%相当)であって、第2回自社株TOB公表直前におけるシティインデックスイレブンス及びエスグラントによる三信電気株式の保有株式数の合計である670万9,100株をわずかに上回る株式数に設定されており、シティインデックスイレブンス及びエスグラントからは、第2回自社株TOBの公表後に応募の意向が明らかにされた。その結果、上記1.で述べた第1回自社株TOBと同様に、第2回自社株TOBも、村上ファンド関係者に対して、その保有に係る同社株式を(市場で売却した場合における売却価格の大幅な下落を回避しつつ)、売り抜ける機会を与えることとなった。

なお、この件でも、自社株買いの手法として自社株TOBの手法が用いられたことによって、村上ファンド関係者は保有する三信電気株式をシティインデックスイレブンスに集約した上で第2回自社株TOBに応募し、多額の税務メリットを得られたものと考えられる。

第9 フージャースに対する投資事例


公表情報によれば、シティインデックスイレブンス、オフィスサポート、南青山不動産、エスグラント等の村上ファンド関係者は、2018年頃から株式会社フージャースホールディングス(以下「フージャース」という。)の株式及び新株予約権を市場において大量に買集め、最終的に村上ファンド関係者の持株比率を約37.57%にまで高めた。

しかしながら、公表資料によれば、シティインデックスイレブンス及びエスグラントは、保有するフージャース株式をシティインデックスイレブンスに集約し、シティインデックスイレブンスにおけるフージャースに対する議決権割合を3分の1超にまで高めた上で、シティインデックスイレブンスらによる株式買集めの開始から約3年後となる2021年1月28日にフージャースが公表・実施した総額約148億1,200万円の大規模な自社株TOBに応募して(シティインデックスイレブンス及びエスグラントは、当該自社株TOBに際して、フージャースとの間でその保有に係るフージャース株式の全てについて応募契約を締結している。)、あん分比例後の手残り分を市場で売却した分も含めて、その保有に係るフージャース株式の全てを売却している。

当該自社株TOBにおいては、TOB価格を684円と設定しており、公表の当日である2021年1月28日時点のフージャースの市場株価の終値685円との比較では1円低いディスカウント価格であったが、公表の前営業日である1月27日までの過去1か月間の終値単純平均である663円と比較して3.17%のプレミアムが付されており、同じく過去3か月間の終値単純平均である685円との比較でも1円低いだけであった。また、C&I提出の大量保有報告書の変更報告書によれば、同社は、上記自社株TOBの実施前において、2020年12月17日までの間、一貫してフージャース株式を市場で買い増しており、上記3か月間のうち前半の1か月半超(2020年10月27日から12月17日まで)における買増しの数量は、持株比率にして2.07%相当分に上っている。当該買増し以前の期間である2020年7月の1か月間の平均株価は534円であり、その後シティインデックスイレブンス等による大量の市場買集めが始まったと思われる同年8月以降に株価が急騰している。

上記第1で述べたとおり、プレミアム付きの高値での自社株TOBは、応募株主に対して、その時点における発行会社の株価を上回る金額が払い出されることになるため、一般的に、発行会社の中長期的な企業価値が低下するおそれが相対的には高いと考えられており、実務上も、自社株TOBがプレミアム付きの高値で行われる例は少ない。

公表情報によれば、当該自社株TOBにおける買付予定株式数の上限は、2,163万7,500株(当時の同社の発行済株式総数の約37.59%相当)であって、当該TOB公表直前における村上ファンド関係者によるフージャース株式の保有株式数の合計である2,157万200株をわずかに上回る株式数と設定されており、また、上記のとおり、村上ファンド関係者とフージャースとの間においては、当該自社株TOBについて応募契約が締結された。その結果、フージャースによる上記自社株TOBは、村上ファンド関係者に対して、その保有に係る同社株式を(市場で売却した場合における売却価格の大幅な下落を回避しつつ)売り抜ける機会を与えることとなった。

さらに、上述のとおり、上記自社株TOBは買付総額が約148億1,200万円に上る大規模なものであったが、フージャースは、上記自社株TOBの公表の2週間前である2021年1月14日に、「2020年4月1日から2020年12月31日までの期間の損益を当社の分配可能額に取り込み、財務戦略の柔軟性及び機動性を確保するため」として、上場会社では極めて異例な臨時決算を行っており、それにより、上記自社株TOBの原資となる分配可能額が上増しされていた。

なお、自社株買いの手法として、市場買付けやToSTNeT-3ないしToSTNeT-2の手法ではなく、自社株TOBの手法が用いられることによって、フージャースにつき、議決権割合にして3分の1超を有していたシティインデックスイレブンスは、当該自社株TOBに応募する結果として生じるみなし配当部分につき、配当益金不算入の恩典を100%享受することが可能となり、みなし配当部分についての100%益金不算入とそれに基づく多額の税務上の株式譲渡損の認識による課税所得の大幅な圧縮という多額の税務メリットを得られたものと考えられる。

第10 西松建設に対する投資事例


公表情報によれば、シティインデックスイレブンス、エスグラント、南青山不動産及び野村絢氏の村上ファンド関係者は、西松建設株式会社(以下「西松建設」という。)の株式を市場において大量に買集め、2021年5月10日時点において、村上ファンド関係者の持株比率を22.84%にまで高めた。

公表情報によれば、その後、村上ファンド関係者は、西松建設に対し、西松建設が保有する不動産の売却等を原資として、最大で2,000億円の大規模な自社株買いを実施することを提案していた。また、村上ファンド関係者が当該自社株買いに応募した場合に有利な税効果を享受することが可能となる点を理由として、西松建設に対する持株比率を議決権割合にして3分の1超にまで高めたいとの発言もしていた。さらに、村上ファンド関係者は、西松建設に対し、村上ファンドが2021年4月15日時点で約33.08%の議決権を有していた大豊建設との間で、経営統合を含むM&Aを行うよう、繰り返し提案していた。

西松建設は、2021年5月20日付けで、村上ファンド関係者に対して、村上ファンド関係者による西松建設株式の持株比率の合計が25%を超える株式買増しを行わないこと、及び、仮にこれに反して株式買増しを行った場合には、当該株式買増しに係る株式等について、市場における売却(ToSTNeT-1の方法によるものを除く)又は西松建設が別途合理的に指定する方法により速やかに処分することを要請(本項において、以下「本要請」という。)し、本要請について株主から承認及び賛同を得るために、2021年6月29日付けの西松建設の第84期定時株主総会において、本要請の承認に係る議案の上程を予定していた。

しかしながら、公表情報によれば、西松建設は、村上ファンド関係者から、2021年5月21日以降、西松建設による2022年3月期第2四半期決算発表がなされるまでの間、村上ファンド関係者による持株比率の合計が25%超となる西松建設株式の買付けを行わない旨の誓約書を受領し、同様の内容の合意に至ったとして、2021年6月2日付けで上記議案の取下げを決定した。

その後、公表情報によれば、2021年6月上旬から2021年7月下旬までの間、西松建設は村上ファンド関係者と対話を重ねたものの、両者間の見解の相違が解消することはなかった。そのため、西松建設は、同社が公表していた長期ビジョン及び中期経営計画の下で持続的成長の維持と中長期的な企業価値向上に向けた施策を円滑に推進していくため、村上ファンド関係者がその所有する西松建設株式を売却した上で、西松建設における経営戦略及び資本政策の立案及び遂行を円滑化することにより、機動的かつ安定的な事業運営の実現を図ること等が必要であるとの考えに至り、2021年9月21日付けで、総額543億円の自社株TOBの実施を公表した。

村上ファンド関係者は、当該自社株TOBに際して、西松建設との間でその保有に係る西松建設株式の全てについて応募契約を締結し、実際に自社株TOBに応募したことで、その保有に係る西松建設株式を売却した。

なお、上記自社株TOBは、TOB価格を3,626円と設定しており、公表の前営業日である2021年9月17日時点の西松建設株式の市場株価の終値3,605円から0.58%(21円)のプレミアムを付した、いわゆるプレミアム付き価格によるものであった。

上記第1で述べたとおり、プレミアム付きの高値での自社株TOBは、応募株主に対して、その時点における発行会社の株価を上回る金額が払い出されることになるため、一般的に、発行会社の中長期的な企業価値が低下するおそれが相対的には高いと考えられており、実務上も、自社株TOBがプレミアム付きの高値で行われる例は少ない。

西松建設の株価は、上記自社株TOB公表日の前営業日である2021年9月17日には3,605円であったところ、TOB期間の終了日である同年10月20日には、TOB価格である3,626円を下回る3,425円に下落し、その翌日には3,325円まで続落している。

また、公表情報によれば、当該自社株TOBにおける買付予定株式数の上限は1,500万100株であって、当該自社株TOB公表直前における村上ファンド関係者による西松建設株式の保有株式数の合計である1,389万6,800株を上回る株式数と設定されており、また、上記のとおり、村上ファンド関係者と西松建設との間においては、当該自社株TOBについて応募契約が締結された。その結果、西松建設による上記自社株TOBは、村上ファンド関係者に対して、その保有に係る同社株式を(市場で売却した場合における売却価格の大幅な下落を回避しつつ)売り抜ける機会を与えることとなった。

その後、公表情報によれば、村上ファンド関係者は、2021年12月15日付けで西松建設が伊藤忠商事株式会社(以下「伊藤忠商事」という。)との間で締結した資本業務提携契約に関連し、同日付けで、伊藤忠商事に対し、その保有する残りの西松建設株式402万2,800株全てを譲渡している。

第11 大豊建設に対する投資事例


公表情報によれば、シティインデックスイレブンス、野村絢氏、オフィスサポート、株式会社ATRA、南青山不動産及びエスグラントら村上ファンド関係者は、2020年5月14日にシティインデックスイレブンスにより大豊建設の株券等に係る大量保有報告書が初めて提出されて以降、大豊建設の株式及び新株予約権付社債券を市場において大量に買集め、2021年12月28日時点において、村上ファンド関係者の持株比率を41.66%(712万5,379株)にまで高めた。

公表情報によれば、村上ファンド関係者は、2020年6月中旬以降、大豊建設の各決算期におけるIR説明や意見交換を通じて、大豊建設に対し株主還元による自己資本の縮減を繰り返し要請していたが、2021年12月3日の面談において、(i) 経営陣が自社株を買い取るマネジメント・バイ・アウト(MBO)による上場廃止、又は(ii) 純資産の圧縮(具体的には、2021年3月期末の純資産額約741億円の約300~400億円への圧縮)による徹底したROE向上策の実施による株主価値の向上を要請(本項において、以下「本要請」という。)するに至り、2021年12月14日付け書簡においても、再び本要請を行った。

大豊建設は、2021年9月10日に、株式会社麻生(以下「麻生」という。)から大豊建設の連結子会社化を含む麻生グループとの協業の意向について伝達を受けて検討を開始していたところ、村上ファンド関係者からの本要請を受け、大豊建設として、本要請に従うことは、上場廃止によるデメリットや自己株式取得による財務健全性等の喪失といった悪影響が懸念され、持続的成長の維持と中長期的な企業価値向上を志向する経営戦略としては採用し得ず、中期経営計画の着実な実行によって中長期的な企業価値の向上を目指すためには、村上ファンド関係者が筆頭株主である状況を脱し、麻生を村上ファンド関係者に変わる新たな大株主として、麻生グループと提携すべきとの考えに至った。そこで、大豊建設は、2022年1月、村上氏らに対し、麻生によるTOBに村上ファンド関係者が応ずることを提案したところ、村上氏らから、広く買付者を募り最も高いTOB価格を募るのでない限り、TOBに応募することは受け入れられず、大豊建設として麻生以外の傘下に入ることが選択肢にないのであれば、4,500円(なお、同価格の伝達を受けた同月31日時点の市場株価は始値3,655円)以上のTOB価格による、800万株以上(議決権ベースで50%超)の自社株TOBであれば応募の意向があり、麻生との資本業務提携は、株主価値を希釈化しないよう、当該自社株TOBにおける取得価格以上の価格による第三者割当増資とすべき旨が示された。そこで、大豊建設は、TOB価格を1株当たり4,730円、総額約419億円、買付予定株式数を885万株として自社株TOB(本項において、以下「本自社株TOB」という。)を実施するとともに、麻生に対し発行価格1株当たり4,750円で850万株を割り当てる第三者割当増資(払込金額総額約404億円、議決権ベースでの希薄化率49.93%。本項において、以下「本第三者割当増資」という。)を実施し、本第三者割当増資による払込金額を、本自社株TOBに係る決済のためのブリッジローンの返済に充てることとし、2022年3月24日付けで、2022年5月26日を始期とする本自社株TOB及び本第三者割当増資を含む一連の取引の実施を公表した(本自社株TOBのための分配可能額の創出に資本準備金の減資手続を要するため、事前公表型のTOBを実施)。

村上ファンド関係者は、本自社株TOBに際して、大豊建設との間でその保有に係る大豊建設株式の全て(2022年3月24日時点で合計720万640株、2021年12月31日における持株比率42.04%、)について応募契約を締結し、実際に本自社株TOBに応募したことで、その保有に係る大豊建設株式733万8,000株(持株比率39.8%)を売却した。なお、シティインデックスイレブンスが2022年7月22日に提出した大量保有報告書によれば、村上ファンド関係者は、本自社株TOB買付期間中にも一部株式を市場において売却しており、当該自社株TOBの決済後に保有する大豊建設株式は65万5,231株(持株比率3.55%)となっている。

本自社株TOBは、TOB価格を4,730円と設定しており、公表の前営業日である2022年3月23日時点の大豊建設株式の市場株価の終値3,665円から29.06%(1,065円)のプレミアムを付した、いわゆるプレミアム付き価格によるものであった。

上記第1で述べたとおり、プレミアム付きの高値での自社株TOBは、応募株主に対して、その時点における発行会社の株価を上回る金額が払い出されることになるため、一般的に、発行会社の中長期的な企業価値が低下するおそれが相対的には高いと考えられており、実務上も、自社株TOBがプレミアム付きの高値で行われる例は少ない。

大豊建設の市場株価は、本自社株TOB及び本第三者割当増資を含む一連の取引の実施の公表日の前営業日である2022年3月23日には3,665円であったところ、公表後、市場株価は本自社株TOBにおける取得価格及び本第三者割当増資における発行価格を大きく下回る水準で推移した。

前記のとおり、本自社株TOBにおける買付予定株式数の上限は本自社株TOB公表直前における村上ファンド関係者による大豊建設株式の保有株式数の合計数を上回る非常に大きな株式数(当時の同社の発行済株式総数の約51.67%)に設定されており、また、上記のとおり、村上ファンド関係者と大豊建設との間において、本自社株TOBに関し応募契約が締結された結果、大豊建設による本自社株TOBは、村上ファンド関係者に対して、その保有に係る同社株式を(市場で売却した場合における売却価格の大幅な下落を回避しつつ)売り抜ける機会を与えることとなった。

第12 その他の投資事例


その他、平成28年7月19日東京高等裁判所判決(判例集未登載)(控訴人レノ及び同C&Iによる控訴を棄却したもの。最一小決平成28年12月15日判例集未登載による上告不受理決定により確定)では、村上氏の影響下にあるファンド等による過去の投資事例につき、以下の事実が認定されている(証拠は省略。)。

「a  旧村上ファンドの中核となる投資ビークルの一つであるM&Aコンサルは、ニッポン放送の株式を買集め、平成15年に株式保有率が7.37%に達した。さらに、M&Aコンサル(代表者は村上)は、平成17年1月までにニッポン放送株式を18.57%まで買集め、ニッポン放送が大株主である株式会社フジテレビジョン(以下「フジテレビ」という。)に対し、ニッポン放送の株式のTOBを行わなければニッポン放送経営陣の退陣を求めるプロキシーファイト(委任状争奪戦)を行う旨の圧力をかけ、これに応じてフジテレビがTOBを開始したが、M&Aコンサルは、株式会社ライブドア(以下「ライブドア」という。)・・・に対し、より高く買い取るのであればライブドアに売却する旨を持ちかけ、最終的に、より高い価格でライブドア側に売却した。

b 旧村上ファンドの中核的な投資ビークルの一つであったMACアセットは、平成17年10月14日付けで、TBS株式につき大量保有報告書を提出したが、そこでは、同年9月30日の時点で株式保有率が7.45%とされていた。MACアセットは、同年8月にはTBSの経営陣に対して、経営陣が自社株を買い取るマネジメント・バイ・アウト(MBO)を提案したり、・・・連合によるTBS買収を図ったりし、最終的には、保有するTBSの株式を売り抜けた。同株式は、市場を通さない相対取引で・・・譲渡された。MACアセットは、同譲渡により、200億円の利益をあげたと報道されている。

c 旧村上ファンドの中核的な投資ビークルの一つであるMACは、平成12年に敵対的TOBにより昭栄株式会社(以下「昭栄」という。)の株式を取得し、株主重視の経営や株主還元策の強化を求めてきたところ、平成14年には昭栄の株式の6.52%を保有していたが、昭栄の自社株TOBにより、同社がこれを買い取った。同自社株TOBの買付株式総数は129万8800株であったところ、そのうち91万2800株はMACが売却したものであった。

d M&Aコンサルは、平成13年ころから株式会社サイバーエージェント(以下「サイバーエージェント」という。)の株式を買い増し、平成14年には同社の発行済み株式の9.2%を保有し、サイバーエージェントに対し、自社株買いの実施などを提案していた。サイバーエージェントは、同年末の株主総会で自己株保有を目的として発行済み株式総数の19%にあたる自社株取得枠の設定を決議し、東京証券取引所の終値取引(ToSTNeT-2)によって自社株を買い付けた。同買付価格は1株35万円であり、日本経済新聞によると、村上は、平均買付コストを明らかにしていないが、M&Aコンサルは利益を確保したもようと報じられている。

e M&Aコンサルは、平成15年3月19日、保有していたアールビバン株式会社(以下「アールビバン」という。)の株式全株(アールビバンの発行済み株式総数の10.35%相当)を、アールビバンに対し、日本証券業協会の規則に従って行われるJASDAQ売買システム稼働時間外取引によって、1株600円で売却した。

f MACは、平成16年に、転換価格428円の社債購入により日本フェルト株式会社(以下「日本フェルト」という。)の発行済み株式の21.70%に相当する株式を取得し、日本フェルトが平成17年2月から3月に実施した〔自己株式の〕TOBにより、同21.10%相当の株式を1株612円で売却した。

g MACは、株式会社ダイドーリミテッド(以下「ダイドー」という。)の株式を大量保有(発行済み株式総数の19.82%)していたが、ダイドーが平成18年2月から3月にかけて実施した自社株TOBにおいて、同14.29%分の株式を1株1708円で売却した。

h MACは、平成18年6月23日、保有していた株式会社東京ソワール(以下「東京ソワール」という。)264万株(発行済み株式総数の約12%)を、東京ソワールが実施した自社株TOBにおいて、1株482円で売却した。

i MACは、平成18年8月30日、保有していたホシデン株式会社(以下「ホシデン」という。)の株式257万1800株を、東京証券取引所のToSTNeT-2(終値取引)による買付を通して、ホシデンに対し、1株1207円で売却した。

j 控訴人レノは、・・・を共同保有者として、平成24年10月までの間に、株式会社フェイス(以下「フェイス」という。)の株式6万2408株(発行済み株式総数の5.22%)を取得し、平成27年7月8日には保有株式数が発行済み株式数の8.24%まで増加したが、同日、フェイスに対する株式買取請求権を行使して、全株式を売却した。

k アコーディアは、平成24年12月3日、PGMが同年11月16日に開始したアコーディア株式のTOB(買付価格1株8万1000円)に対して、反対の意見を表明した。〔控訴人〕レノは、〔控訴人〕C&I及び南青山不動産と共同で、アコーディア株を買い進め、平成25年1月には、アコーディアの株式の18.12%を保有していた。原告レノは、平成25年1月13日付けで、アコーディアに対し、①PGMとの経営統合に関する諸条件について交渉の場につくこと、②自己株式取得を徹底的に行うといった株主還元策の実施を希望するなどを内容とする書面を送付した。アコーディアが上記要望を受け入れる旨表明し、自己株式取得を積極的に行うと表明したことから、PGMによる上記TOBは不成立に終わった。アコーディアは、所有するゴルフ場の過半を売却した上で、売却金を原資として自社株TOBを行う旨の計画を表明した。〔控訴人〕レノは、株主還元の規模に不満を持ち、平成26年8月5日付けの書面で、アコーディアの社外取締役6名の解任を要求して臨時株主総会の招集請求を行った。アコーディアは、同年8月12日、200億円の株主還元を行うことを公表したため、〔控訴人〕レノは臨時株主総会の招集請求を撤回した。控訴人レノは、共同保有6社とともに、保有株式全て(発行済み株式総数の35.20%)について、アコーディアによる同年8月開始のTOBに応募したが、買付予定数を超える応募があったことから、あん分比例方式により決済がされた結果、アコーディアに対し、同TOBにより発行済み株式総数の20.07%の株式を売却した。」

との事実が認定されている。
その上で、同判決においては、「控訴人ら〔レノ及びC&I〕及び村上直系のファンドが行った前記・・・認定の各株式取引は、買集めた株式を発行会社とストラテジック・バイヤーのどちらに売却しても損はないという状態を利用して投機を行うタイプのイベント・ドリブン的な手法を用いたものといえ、村上の直系である控訴人らはこの手法を得意としていると評価することができる」と判示されている。

別紙2

別紙3

別紙4

大規模買付者グループによる過去のグループ内における株主保有主体の頻繁な変更の実例


大規模買付者グループは、過去の投資事例において、そのグループ内で、投資先会社の株式の保有主体を、随時、頻々と自由自在に変えてきた経緯があります。


例えば、株式会社レノ(以下「レノ」といいます。)、株式会社C&I Holdings(以下「C&I」といいます。)及び南青山不動産株式会社(以下「南青山不動産」といいます。)の3社は、2012年11月にゴルフ場の運営・管理を事業とするアコーディア・ゴルフ株式会社(以下「アコーディア」といいます。)に対し、そのライバル企業であるPGMホールディングス株式会社(以下「PGM」といいます。)が敵対的TOBを実施した直後から、アコーディアの株式を市場において大量に買い集め、当該TOB期間の末日である2013年1月17日の直前である同月13日には、アコーディア株式の18.12%を買い集めて、同社とPGMとの経営支配権争奪戦のキャスティングボートを握りました。

そして、PGMの当該TOBが不成立に終わった後も、上記3社に加えて株式会社シティインデックスホスピタリティを含めた4社でアコーディア株式の買増しを続けて、2014年3月28日までにアコーディアに対する持株割合を約24%まで高め、同日、これら4社との合意の下に、アコーディアに、同年6月の定時株主総会後に大規模なプレミアム付自社株公開買付け(以下「本自社株TOB」といいます。)を実施する旨を公表させることに成功しました。

にも拘らず、大規模買付者グループは、アコーディアによる上記発表後も、同社との間でTOB応募合意の当事者となっていなかった株式会社シティインデックスホールディングス、株式会社フォルティス及び株式会社リビルド(以下「リビルド」といいます。)を通じてアコーディア株式を市場内で買い集め、さらに、2014年8月5日にはレノがアコーディアに対して本自社株TOB後における株主還元の規模等が不満であるとして臨時株主総会の招集請求を行う等して、アコーディアに対して株主還元の圧力を強め、最終的に、アコーディアは、同年8月12日に、上記の本自社株TOB公表時に併せて公表していた、当該TOB後の減配方針を撤回し、本自社株TOB後も2年間に亘って合計200億円の大規模な株主還元を行う旨の発表を行うに至りました1


また、三信電気株式会社(以下「三信電気」といいます。)のケースでも、大規模買付者グループは、2015年6月29日以降、2021年の三信電気による第2回目のプレミアム付自社株公開買付けに至るまでに、大量保有報告書に共同保有者として名義が登場するエンティティだけでも、①村上世彰氏(以下「村上氏」といいます。)及び南青山不動産→②村上氏、南青山不動産及びリビルド→③村上氏、南青山不動産、リビルド及びC&I→④C&I、南青山不動産、リビルド及び中島章智氏(以下「中島氏」といいます。)→⑤C&I、株式会社オフィスサポート(以下「オフィスサポート」といいます。)、野村絢氏(以下「野村氏」といいます。)、レノ及び中島氏→⑥株式会社エスグラントコーポレーション(以下「エスグラント」といいます。)、株式会社シティインデックスサード、株式会社ATRA

(以下「ATRA」といいます。)、野村氏及び福島氏→⑦エスグラント、オフィスサポート、野村氏及び株式会社シティインデックスイレブンス(以下「シティインデックスイレブンス」といいます。)→⑧シティインデックスイレブンス及びエスグラント、といった具合に、途中、頻々とエンティティを入れ替えながら、市場内買い上がりを行っています。


このように、大規模買付者グループは、過去においても、随時、自由自在にそのグループ内において投資先会社の株式保有主体を入れ替えながら市場内買い上がりを行い、最終的に、投資先会社によるプレミアム付自社株公開買付けに応募して保有株式を売り抜けてきています。

1 大規模買付者グループは、2014年8月28日には、その持株割合を合計約35%にまで高めていましたが、上記発表をうけて、臨時株主総会の招集請求を撤回すると共に全てのエンティティが本自社株TOBに応募し、最終的に、その保有に係るアコーディア株式約35%のうち約20%を売り抜けています。

別紙5

Creeping Takeover(段階的・漸次的買収)の問題点


creeping takeover(段階的・漸次的買収)とは、一般的には、対象会社の株式を市場内において(徐々に)買い増すことを通じて、事実上の支配権を獲得することを意味するところ、欧米等においては、当該手法は、応募者に均一の価格及び当該価格において一般に支配権プレミアムを付して支払われる等の特徴を持つTOBと異なり、都度その時点での市場株価だけを支払って株式を取得するという点で、対象会社の株主にとって、他の株主と平等な条件で支配権プレミアム付きでその保有株式を買い取って貰える(それにより、いわゆる支配権プレミアムの平等分配を受ける)機会が保障されないという問題点があると指摘されています。このような手法が用いられた場合、一般株主は、徐々に買増しを行う買付者が買増しを行って対象会社の経営に支配力・影響力を及ぼし得る状況になるにつれて、少数株主として株主間の利益相反関係から生じ得る不利益を甘受せざるを得ない地位に転落していくことから、そのような状況に鑑み、一般株主には公正な対価で株式を売却して会社から退出する機会を保障すべきであると考えられます。それにも拘らず、このような段階的・漸進的買増しを行う買付者が、支配権取得の意図を秘匿し、一般株主に支配権プレミアムを支払わないまま、支配権を実質的に取得していくのは不当であると考えられます。また、市場内買付けによる方法は強圧性が強い買付手法であることについては、既に繰り返し述べているとおりです。


この点、米国においても、例えば、2014年のサザビーズ事件 1(Third Point LLC v. Ruprecht, C.A. No. 9469-VCP (Del. Ch. May 2, 2014))に関して、デラウェア州衡平法裁判所は、著名アクティビスト・ファンドであるサード・ポイントが市場内買い増しによって9.3%を保有する筆頭株主になった段階で2サザビーズが取締役会限りで導入した(アクティブ投資家との関係では)10%以上の株式取得で発動されるライツ・プランの発動・維持が適法であると判断するに際して、支配権プレミアムを支払うことなく市場内買増しによって支配ブロックを形成することを〝creeping control″と呼び、そのような危険性があることを、上記ライツ・プランの発動・維持の適法性を基礎づける理由の一つに挙げ、また、サード・ポイントが20%に向けて買い上がる意向を示していることは、サード・ポイントに「重要な会社の決定に対して、不釣り合いな支配力と影響力をもたらす」として、この点も同様に上記ライツ・プランの発動・維持の適法性を基礎づける理由の一つに挙げています

また、2010年のバーンズ・アンド・ノーブル(以下「B&N社」といいます。)事件(Yucaipa American Alliance Fund II v. LR, 1 A.3d 310 (Del. Ch. 2010))でも、アクティビスト・ファンドであるYucaipa American Alliance Fund II(以下「YP」といいます。)が市場内において約17.8%までB&N社の株式を買い増した段階3でB&N社が20%を発動基準とするライツ・プランを取締役会限りで導入したライツ・プランの発動・維持が適法であると判断するに際して、デラウェア州衡平法裁判所は、「支配株主による会社の非上場化の提案や不公正な価値を引き出す取組みに対して米国会社法等〔によって法的保護が与えられている〕ことは、YPのようなアクティビスト投資家が、単独であれ、他の株主と協働してであれ、一般株主の利益の犠牲の下に自らの利益を追求するための大きな交渉力を振りかざすような提案を可能とする実効的支配ブロックを獲得することのないよう、B&N社取締役会が合理的かつ非排除的な行動を行う権利を持たないということまでも意味するものではない」「YPがB&N社全体を買収する意図はないとしていることが真実であるとすれば、EU企業買収指令における関心の対象でもある取締役会側の懸念、即ち、YPが(〔他のアクティビスト・ファンド〕等と共に)支配権プレミアムを適切に支払うことなく支配権を取得できてしまうという懸念をより悪化させてしまう」等として、それらを、上記ライツ・プランの適法性を基礎づける理由の一つに挙げています。


これらの裁判例からすれば、米国においては、市場買増しによって段階的に対象会社の支配権が取得されるような状況がある場合には、他のアクティビストと併せて持株割合が20~30%にとどまっていても、取締役会限りで対抗措置を発動し得ることが認められているといえます。

この点、本件では、大規模買付者らが本件大規模買付行為等の実行後に保有するに至る議決権割合は24.56%にとどまりますが、そのような割合であっても、上記のとおり、米国においてライツ・プランの発動が認められている裁判例が複数存在する以上、本対応方針の下において対抗措置を発動するために必要な「脅威」としては十分であるものと考えられます。


1 米国において、著名なアクティビスト・ファンドであるサード・ポイントによる市場内株式買集めの標的となった対象会社であるサザビーズが、取締役会限りでライツ・プランを導入した事件。

2 他の2つのアクティビスト・ファンドもそれぞれ6.6%と5.0%を保有していたため、それらを合計するとその持株割合の合計は20.9%に達していました。

3 他のアクティビスト・ファンドも17.44%まで市場内で株式を買い増していました。

別紙A


2023年1月11日

各  位



株式会社シティインデックスイレブンスらによる当社の株券等を対象とする大規模買付行為等が行われていることに基づく当社の会社支配に関する基本方針及び当社の株券等の大規模買付行為等に関する対応方針の導入に関するお知らせ

2022年4月5日に株式会社シティインデックスイレブンス(以下「シティインデックスイレブンス」といいます。)により当社株券等に係る大量保有報告書が初めて提出されて以降、シティインデックスイレブンスは、その共同保有者である野村絢氏及び株式会社レノ(シティインデックスイレブンス並びに野村絢氏及び株式会社レノを合わせて以下「シティら」と総称します。)とともに当社株式等を市場にて買い集めており(以下「本株式等買集め」といいます。)、大量保有報告書の2022年11月22日付け変更報告書によれば2022年11月15日時点において、シティらは当社株券等に係る株券等保有割合にして19.81%に相当する当社株式を保有しているとされており、その後、当社が発行した2022年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債(以下「本新株予約権付社債」といいます。)に係る新株予約権の行使による当社株式の発行及びシティらの当社株式の追加取得を経て、2023年1月4日時点で、シティらは、株券等保有割合にして19.96%に相当する当社株式を保有するに至っている旨を認識しております。
当社は、2022年4月15日、シティインデックスイレブンスの代表取締役である福島啓修氏及び野村絢氏の実父でありシティらに強い影響力を有している村上世彰氏(以下「村上氏」といいます。)から電話を受け、当社とシティインデックスイレブンス及び村上氏との間での面談の提案を受けるとともに、当社として適切と考えるシティらの保有株式の水準について質問を受け、さらに、シティらが当社の株式を長期保有する意向や、当社の了解の下に当社株式の過半数や全部を取得することも選択肢の一つである旨の伝達を受けました。当社は、かかる電話を受けて、2022年4月20日、上記の面談について応諾する意向を伝えるとともに、当社株式等の大量保有の目的等が判然としないまま一部の株主様からそのような保有をされることは、他の株主の皆様をはじめとする当社のステークホルダーの皆様にとっても望ましいことではないことから、シティインデックスイレブンス及び村上氏からの質問に回答する形で、現時点において、シティらが大量保有報告書ベースで20%以上の当社株式を保有することは想定しておらず、20%以上の当社株式の買増しは差し控えていただくよう要請する書簡をシティインデックスイレブンスに対して送付いたしました。その後、同年4月26日に当社取締役常務執行役員山田茂とシティインデックスイレブンス及び村上氏との間で面談が実施されましたが、当該面談において、「今後、貴社が多くの株主の皆様も納得のいくような企業価値、株主価値を向上させていく道筋を公表されることを前提として、現時点において大量保有報告書ベースで20%以上の貴社株式を取得する予定はないことを申し上げます」との回答がなされました。その後も当社はシティら及び村上氏と定期的な対話を継続しておりましたところ、シティら及び村上氏は、同年5月25日に行われた当社代表取締役社長桐山浩とシティインデックスイレブンス及び村上氏との面談、同年8月22日に行われた当社とシティインデックスイレブンス及び野村絢氏との面談、同年11月14日付けのシティインデックスイレブンスからの書簡において、一貫して大量保有報告書ベースで20%以上の当社株式を取得する予定はない旨の意向を表明しておりました。
しかしながら、シティらは当社と対話を継続する一方で、本株式等買集めを継続しており、大量保有報告書ベースで19.81%の当社株式等を保有するに至った後の2022年11月18日、当社とシティインデックスイレブンス及び野村絢氏との面談において、野村絢氏から、大量保有報告書ベースで30%の当社株式を保有することを希望する旨の意向が示され、従前からの発言や書簡によって示されていたシティらの意向が突如として翻されました。その後、同月22日、当社とシティインデックスイレブンス、野村絢氏及び村上氏との面談において、村上氏から、突如、当社に対して社外役員の派遣を希望する旨、村上氏自らが社外役員となることも一案である旨等の意向が示され、さらに、同月25日、当社代表取締役社長桐山浩とシティインデックスイレブンス、野村絢氏及び村上氏との面談において、村上氏から、大量保有報告書ベースで30%の当社株式を取得しない代わりに村上氏の推薦する人物を来年の当社の定時株主総会における会社提案の取締役候補者とすることを希望する旨、当社の指名・報酬委員会(当時は、指名・報酬諮問委員会)が当該推薦された人物を来年の当社の定時株主総会における会社提案の取締役候補者にすることに反対するのであればプロキシーファイトにより当該指名役員の取締役選任議案に反対し落選させる旨、大量保有報告書ベースで20%以上の当社株式を取得しないということと上記の村上氏による役員派遣はパッケージであり、上記の役員派遣を当社が応諾しない場合には、大量保有報告書ベースで30%の当社株式を取得することを希望する旨の意向が示されました。その後、同年12月13日、当社とシティインデックスイレブンス、野村絢氏及び村上氏との面談において、村上氏から再度大量保有報告書ベースで20%以上の当社株式を取得しないという発言がなされたものの、同月27日には、当社とシティインデックスイレブンス、野村絢氏及び村上氏との面談において、再度意向が覆され、当社が発行した本新株予約権付社債に係る新株予約権の行使により転換に割り当てられた株式(8,899,262株)について、当社の2022年度第3四半期決算までに自社株買いをすること(以下「本自社株買い」といいます。)を当社が2023年1月6日までに決定しない場合には大量保有報告書ベースで20%以上の当社株式を取得する意向が示されました。その後、2023年1月6日、当社とシティインデックスイレブンス、野村絢氏及び村上氏との面談において、当社は、本自社株買いの是非は当社の中期的な経営戦略と関連するため、2023年3月に公表予定の中期経営計画の中で必要な自己資本を説明する予定であり、同日時点において本自社株買いの実施は確答できない旨を村上氏に伝えたところ、村上氏から、同日の面談の日までに本自社株買いが約束されなかったため、大量保有報告書ベースで20%以上の当社株式を取得する旨の一方的な宣言がなされ、この点については対話の余地がない旨の意向が示されました。
また、同日の面談においては、当社の中長期的な企業価値の向上策として、当社が約20年間にわたり陸上風力発電事業で培ったノウハウを活用して取り組んでいる洋上風力事業についての説明を行った際に、村上氏は何ら合理的な根拠を示すこともなく当社の洋上風力事業の価値を毀損するかのように一方的に断じた上で、当社の中長期的な戦略の話題を打ち切り、また、当社が必要な自己資本について、洋上風力事業を中心とした中長期的な投資が控えていることも見据えた上で当社の考えを説明した際においても、村上氏は、十分な根拠も示さずに、当社の自己資本は、4,000億円が適当であり、村上氏としては5,000億円まで妥協することができる旨や、当社による100%の株主還元がなければ自己資本が増えすぎる旨言及する等して、当社の必要な自己資本についての議論を一方的に打ち切り、本自社株買いの要求及び大量保有報告書ベースで20%以上の当社株式を取得する旨の話に終始したこと等を含め、同日の面談における、当社の中長期的な戦略に関心を示すことなく執拗に目先の株主還元を求める村上氏及びシティらの態度や発言等から、村上氏及びシティらは、当社の中長期的な戦略や当社の中長期的な企業価値の向上については関心がなく、当社に対して目先の株主還元を求めるのみであり、当社と当社の中長期的な事業戦略や企業価値の向上について議論するつもりがないという強い疑義を抱かざるを得ませんでした。
このように、シティらが本株式等買集めを通じて大量保有報告書ベースで19.96%の当社株式を保有するに至っているなかで、村上氏から、大量保有報告書ベースで20%以上の当社株式を取得する旨の一方的な宣言がなされ、この点については対話の余地がない旨の意向が示されたことから、当社は、今後、シティらが大量保有報告書ベースで20%以上の当社株式の買付行為を行う蓋然性が相応に高いものと合理的に判断するに至りました。
また、上記のとおり、大量保有報告書ベースで19.81%の当社株株式を保有するに至った後の2022年11月25日に、村上氏から、突如、大量保有報告書ベースで30%の当社株式を取得しない代わりに、村上氏の推薦する人物を来年の当社の定時株主総会における会社提案の取締役候補者とすることを希望する旨及び当社の指名・報酬委員会(当時は、指名・報酬諮問委員会)が村上氏の要求を受け入れない場合にはプロキシーファイトにより、当該指名委員を落選させる旨の言及がなされ、同月27日及び2023年1月6日には、本自社株買いを即時に決定しない限り大量保有報告書ベースで20%以上の当社株式を取得する旨の発言がなされる等、シティら及び村上氏は、自らが有する当社株券等に係る議決権割合の増加を背景とし、また、更なる買増しを交渉材料として、当社に対して要求をエスカレートさせ強硬手段も辞さない姿勢を見せていることも踏まえると、本株式等買集めについて、本株式等買集めの意図や目的、今後のシティらの当社株式の取得予定数、シティら及び村上氏の当社の経営への関与の有無・方法等の本株式等買集めに関する情報について、シティら及び村上氏から真摯に共有や説明がなされることは期待できないと考えるに至りました。
このように、現在シティらにより実施されている本株式等買集めの目的や内容等に関する情報が不足しており、その共有や説明がなされることは期待できず、村上氏及びシティらは当社の中長期的な企業価値の向上については関心がなく、当社に対して目先の株主還元を求めるのみであり、当社と当社の中長期的な事業戦略について議論するつもりがないという強い疑義が存するなかで、別紙1に記載のような村上氏、及び村上氏の影響下にあるファンド等(以下「村上氏ファンド等」といいます。)の過去の投資活動に関する裁判所の認定(例えば、横浜地決令和元年5月20日(資料版商事法務424号126頁)において、村上氏及び同氏の影響下にあるファンドが、2012年から2019年にかけて、複数の上場会社に対し、大量の株式を買い付け、当該上場会社の経営者に様々な圧力を掛けた上、当該上場会社又はその関係会社に対し、買い付けた株式の全部又はその大半を高値で購入させ、転売益を得たことが裁判所により認定されています。)等に鑑みると、本株式等買集めの目的ないしその結果が、当社の企業価値ないし株主の皆様共同の利益の最大化を妨げるようなものであるおそれは否定できないものと認識しております。
かかる認識の下、当社取締役会は、上記のとおり、シティらが、大量保有報告書ベースで20%以上の当社株式を取得する予定はないとの従前の意向に反し、今後、本株式等買集めにより、大量保有報告書ベースで20%以上の当社株式の買付行為(即ち、大規模買付行為等(下記Ⅲ2(2)で定義されます。以下同じです。)を行う蓋然性が相応に高いと合理的に判断できることを受け、また、シティらによる当社株式等を対象とする大規模買付行為等が継続している状況下において他の当事者による大規模買付行為等が企図されるに至る場合も想定し、これらの大規模買付行為等が当社の企業価値やその価値の源泉に対してどのような影響を及ぼし得るかについて、株主の皆様が適切なご判断を下すための情報と時間を確保するとともに、当社取締役会が大規模買付行為等又は当社の経営方針等に関して大規模買付者(下記Ⅲ2(2)で定義されます。以下同じです。)と交渉又は協議を行うことができるよう、かかる大規模買付行為等については、当社取締役会の定める一定の手続に基づいてなされることが、当社の企業価値ないし株主の皆様共同の利益の最大化に資するとの結論に至りました。
その結果、当社取締役会は、本日開催の当社取締役会において、当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を確保し、向上させることを目的として、基本方針(会社法施行規則第118条第3号)を決定し、さらに、基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み(会社法施行規則第118条第3号ロ(2))として、①シティらによる当社株式等を対象とする大規模買付行為等及び②シティらによる当社株式等を対象とする大規模買付行為等が継続している状況下において企図されるに至ることがあり得る他の大規模買付行為等への対応方針(以下「本対応方針」といいます。)を導入することを決議いたしましたので、以下のとおり、お知らせします。本対応方針は、既に具体化している本株式等買集めを含む大規模買付行為等への対応に主眼を置いて導入されるものであり、平時に導入されるいわゆる事前警告型買収防衛策とは異なるものとなります。なお、本対応方針の導入につきましては、上記取締役会において、監査等委員であるか否かを問わず独立社外取締役4名を含む当社取締役全員の賛成によって決議されております。

なお、上記の決議と併せて、当社取締役会は、当社取締役会による恣意的な判断を防止し、本対応方針の運用の公正性・客観性を一層高めることを目的として、独立委員会を設置し、当社の独立社外取締役4名を選任いたしました。独立委員会の設置及び独立委員会の委員の選任については、本日付け「独立委員会の設置及び独立委員会の委員の選任に関するお知らせ」をご参照下さい。

なお、会社法及び金融商品取引法その他の法律、それらに関する規則、政令、内閣府令及び省令等並びに当社株式等が上場されている金融商品取引所の規則等(以下「法令等」と総称します。)に改正(法令等の名称の変更や旧法令等を継承する新法令等の制定を含みます。以下同じとします。)があり、これらが施行された場合には、本対応方針において引用する法令等の各条項は、当社取締役会が別途定める場合を除き、これらの法令等の各条項を実質的に継承する当該改正後の法令等の各条項にそれぞれ読み替えられるものとします。

Ⅰ 会社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針


当社は上場会社として、特定の者による当社の経営の基本方針に重大な影響を与える買付提案があった場合、それを受け入れるにあたっては、最終的には株主の皆様のご判断に委ねられるべきものであり、また、そのご判断を適切に行っていただくにあたっては、ご判断のために必要かつ十分な情報が必要であると認識しております。

そして、実際に大規模買付行為等が行なわれる場合、大規模買付者からの必要かつ十分な情報の提供なくしては、当該大規模買付行為等が当社の企業価値ないし株主の皆様共同の利益に及ぼす影響を、株主の皆様に適切にご判断いただくことは困難です。また、大規模買付行為等の中には、経営を一時的に支配して当社の有形・無形の重要な経営資産を大規模買付者又はそのグループ会社等に移譲させることを目的としたもの、当社の資産を大規模買付者の債務の弁済等にあてることを目的としたもの、真に経営に参加する意思がないにもかかわらず、ただ高値で当社株式を当社やその関係者に引き取らせることを目的としたもの(いわゆるグリーンメイラー)、当社の所有する高額資産等を売却処分させる等して、一時的な高配当を実現することを目的としたもの、当社のステークホルダーとの良好な関係を毀損し、当社の中長期的な企業価値を損なう可能性があるもの、当社の株主や当社取締役会が買付けや買収提案の内容等について検討し、当社の取締役会が代替案を提示するために合理的に必要な期間・情報を与えないものや、当社の企業価値を十分に反映しているとはいえないもの等、当社が維持・向上させてまいりました当社の中長期的な企業価値ないし株主の皆様共同の利益を毀損するものがあることは否定できません。

かかる認識の下、当社は、①大規模買付者に株主の皆様のご判断に必要かつ十分な情報を提供させること、さらに②大規模買付者の提案が当社の中長期的な企業価値ないし株主の皆様共同の利益に及ぼす影響について当社取締役会が評価・検討した結果を、株主の皆様に当該提案をご判断いただく際の参考として提供すること、場合によっては③当社取締役会が大規模買付行為等又は当社の経営方針等に関して大規模買付者と交渉又は協議を行うこと、あるいは当社取締役会としての経営方針等の代替案を株主の皆様に提示することが、当社取締役会の責務であると考えております。

当社取締役会は、このような基本的な考え方に立ち、大規模買付者に対しては、当社の中長期的な企業価値ないし株主の皆様共同の利益が最大化されることを確保するため、大規模買付行為等の是非を株主の皆様が適切に判断するために必要かつ十分な情報を提供するよう要求する他、当社において当該提供された情報につき適時適切な情報開示を行う等、法令等及び定款の許容する範囲内において、適切と判断される措置を講じてまいります。


当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本的な考え方は以上のとおりであり、当社取締役会といたしましては、大規模買付者が大規模買付行為等を実行するに際しては、最終的には、当該大規模買付行為等の目的や内容等の詳細を検討し、その是非を判断するのに必要な時間と情報とが株主の皆様に対して事前に十分提供された上で、当社の株主の皆様が、当該大規模買付行為等を実行することに同意されることが条件となるべきものと考えております。かかる観点から、大規模買付者が本対応方針に定めた手続を遵守する限り、当社取締役会が本対応方針に基づく対抗措置を発動するに当たっては、当社の株主の皆様によるこのような検討及び判断の場として、株主総会(以下「株主意思確認総会」といいます。)を開催することといたします。そして、株主意思確認総会において、株主の皆様が、当該大規模買付行為等に賛同する意思を表明された場合には(当該意思は、当該大規模買付行為等が行われた場合に当社が所定の対抗措置を講じることについての承認議案が、株主意思確認総会に出席された議決権を行使できる株主の皆様の議決権の過半数の賛成によって可決されるか否かを通じて表明されるものとさせていただきます。)、当社取締役会といたしましては、当該大規模買付行為等が、株主意思確認総会において開示された条件及び内容等に従って行われる限り、それを実質的に阻止するための行為を行いません。
従って、本対応方針に基づく対抗措置(具体的には新株予約権の無償割当て)は、(a)株主意思確認総会による承認が得られた場合であって、かつ、大規模買付者が大規模買付行為等を撤回しない場合、又は、(b)大規模買付者が下記Ⅲ2(3)に記載した手続を遵守せず、大規模買付行為等(当社株券等の追加取得を含みます。)を実行しようとする場合にのみ、独立委員会による勧告を最大限尊重して発動されます。

Ⅱ 基本方針の実現に資する特別な取組み


1 当社の企業価値及び株主の皆様共同の利益向上に向けた取組み


(1)グループ理念

当社は、「私たちは、地球と人間と社会の調和と共生を図り、無限に広がる未来に向けての持続的発展をめざします。」をコスモエネルギーグループ理念として掲げ、サステナビリティの基本的な考え方として「調和と共生(地球環境との調和と共生、エネルギーと社会の調和と共生、企業と社会の調和と共生)」並びに「未来価値の創造(顧客第一の価値創造、個の多様な発想による価値創造、組織知の発揮による価値創造)」を経営の基本方針としております。


(2)経営方針を具現化するための中期経営計画

2018年度より開始した第6次連結中期経営計画では、「Оil & New 石油のすべてを。次の『エネルギー』を。」をスローガンに、前連結中期経営計画で収益基盤の中心であった石油精製・販売を強化しながら、風力発電事業や石油化学事業への成長投資を進め、脱化石燃料の動きが加速することを見据え、事業ポートフォリオの拡充を目指しております。

石油製品の需要減少が想定される中、当社グループが持続的に成長するためには、将来に向けた新しい事業の柱を作ることが必要不可欠であり、第6次連結中期経営計画では「再投資可能な収益力の確保」「将来に向けた成長ドライバーの強化」「財務体質の健全化」「グループ経営基盤の強化」を基本方針として、石油開発事業や石油事業の収益力を強化しつつ、事業ポートフォリオを拡充させることで、強固な財務基盤を確立してまいります。具体的には、「再投資可能な収益力の確保」として石油事業におけるキグナス石油への燃料油供給の開始、並びにIMO規制への対応とした製油所ボトムレス化による収益油種の拡大等、「将来に向けた成長ドライバーの強化」として風力発電事業の規模拡大を始めとした、次代の成長を担う投資等、「財務体質の健全化」として収益力の強化による自己資本の拡充等、「グループ経営基盤の強化」として社会と当社グループの持続的な発展と中長期的な企業価値に影響を与える重要なESG課題(マテリアティ)を特定し、当社グループの持続的価値創造を実現するためのサステナブル経営を推進しております。

また、2023年度から開始される第7次連結中期経営計画については、2023年3月に公表予定ですが、現在、当社グループの更なる企業価値向上を実現すべく議論を進めております。


2 コーポレートガバナンスの強化


当社は、コーポレートガバナンスを一層強化すべく、以下のような具体的取組みを実施しております。


(企業統治の体制)

当社は、「私たちは、地球と人間と社会の調和と共生を図り、無限に広がる未来に向けての持続的発展をめざします。」をグループ理念として掲げ、当該理念及びこれを推進し達成するための具体的指針に基づき、「経営の透明性・効率性の向上」「迅速な業務執行」「リスクマネジメント及びコンプライアンスの徹底」を推進しております。


具体的には、当社は、2015年10月の持株会社体制への移行とともに、経営監督機能を強化し、経営の透明性・効率性の向上を図るため、統治形態を監査等委員会設置会社としております。また、経営監督と業務執行の分離をより明確化し、事業環境の変化に即応し、迅速な意思決定を行うため執行役員制度を導入しております。

当社の取締役会は、社内取締役5名(うち、監査等委員である取締役1名)、独立社外取締役4名(うち、監査等委員である取締役2名)で構成され、経営の基本方針等重要な事項を決定するとともに、業務執行を監督しています。取締役に社外取締役を招聘することにより、取締役会の監督機能の強化と公正で透明性の高い経営の実現を図っています。

また、社長の諮問機関として社長執行役員を含む主要な執行役員、監査等委員である社内取締役により構成される経営執行会議は原則として隔週1回開催され、取締役会で決定した経営方針に基づき、業務執行に関する意思決定を行っています。

さらに、当社では、取締役候補者及び報酬の決定プロセスに関する透明性と客観性を確保することを目的として、指名・報酬委員会を設置しております。指名・報酬委員会は、社内取締役1名、独立社外取締役4名で構成され、役員の指名及び報酬に関する審議を実施しております。委員長は社外取締役が務めています。


(監査等委員会監査及び内部監査)

監査等委員会は、社内取締役1名、独立社外取締役2名で構成され、「監査等委員会規程」及び「監査等委員会監査等基準」に基づき内部統制システムを利用して、取締役の職務執行、その他グループ経営にかかわる全般の職務執行の状況について、監査・監督を実施しております。原則として月に1回以上開催し、必要に応じて臨時に開催することとしています。

また、当社の内部監査部門である監査室は、業務執行ラインから独立した代表取締役社長直轄の組織であります。監査室は、「内部監査規程」及び「財務報告に係る内部統制評価規程」に則り、当社及び関係会社の内部監査及び内部統制の評価を実施しております。

監査室は、各種法令・社内規程に対する準拠性やリスクマネジメント対応等の監査結果と内部統制の評価結果を経営執行会議並びに監査等委員会へ定期的に報告するとともに、各執行部門への助言・勧告に対する業務改善状況を把握するためフォローアップ監査等を実施しております。


(その他)

上記の他、当社は、最新のコーポレートガバナンス・コードを踏まえながら、コーポレートガバナンスの強化に鋭意取り組んでおります。当社のコーポレートガバナンス体制の詳細につきましては、当社コーポレート・ガバナンス報告書(2022年6月27日)をご参照下さい。

Ⅲ 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み


1 本対応方針の目的


本対応方針は、当社の中長期的な企業価値ないし株主の皆様共同の利益を最大化することを目的として、上記Ⅰ「会社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針」に沿って導入されるものです。


当社取締役会は、大規模買付行為等がなされることを受け入れるにあたっての判断についても、当社の中長期的な企業価値ないし株主の皆様共同の利益の最大化の観点から、最終的には株主の皆様によってなされるべきものと考えております。そして、株主の皆様が、大規模買付行為等がなされることを受け入れるにあたっての判断を適切に行うためには、当該大規模買付行為等の開始に先だって、株主意思確認総会によって株主の皆様の総体的な意思を確認する機会を確保することが必要であり、また、かかる意思確認を熟慮に基づく実質的なものとするためには、その前提として、大規模買付者からの十分な情報提供及び株主の皆様における検討時間を確保することが必要であると考えております。


以上の認識に基づき、当社取締役会は、大規模買付行為等がなされるに際して、当該大規模買付行為等が当社の中長期的な企業価値ないし株主の皆様共同の利益の最大化を妨げるものであるか否かを、当社の株主の皆様が事前に十分な情報に基づいてご判断されることを可能にすべく、その前提として、大規模買付者に対して所要の情報を提供するよう求めるとともに、かかる情報に基づいて株主の皆様が当該大規模買付行為等の実行の是非を熟慮されるために要する時間を確保する枠組みとして、大規模買付行為等がなされる場合に関する手続として、以下のとおり、本対応方針を決定いたします。かかる手続は、株主の皆様に対し、大規模買付行為等がなされることを受け入れるか否かについて適切な判断をするための必要かつ十分な情報及び時間を提供するためのものであり、当社の中長期的な企業価値ないし株主の皆様共同の利益の最大化に資するものであると考えております。


それ故、当社取締役会は、大規模買付者に対して、本対応方針に従うことを求め、当該大規模買付者が本対応方針に従わない場合には、当社の中長期的な企業価値ないし株主の皆様共同の利益の最大化を図る観点から、独立委員会の意見を最大限尊重した上で、一定の対抗措置を講じる方針です。

なお、本対応方針は、本株式等買集めにより、シティらが大量保有報告書ベースで20%以上の当社株式等の買付行為(即ち、大規模買付行為等)を行う蓋然性が相応に高いと合理的に判断できることを受けて、当社の中長期的な企業価値ないし株主の皆様共同の利益の最大化を図る観点から、①シティらによる当社株券等を対象とする大規模買付行為等及び②シティらによる当社株式等を対象とする大規模買付行為等が継続している状況下において企図されるに至ることがあり得る他の大規模買付行為等に対して一定の手続を定めることが必要であるとの判断のもと、当社取締役会においてその導入を決定しました。また、大規模買付行為等に対して当社が所定の対抗措置を講じるか否かについても、大規模買付者が本対応方針に定めた手続を遵守する限り、最終的には、株主意思確認総会を通じて株主の皆様のご意思に委ねられる仕組みとなっております。従って、大規模買付行為等の詳細を評価・検討するのに必要な時間及び情報が十分に確保されることを前提に、当社取締役会が株主の皆様に対して説明責任を果たした上で、対抗措置の発動について株主意思確認総会に出席された議決権を行使できる株主の皆様の議決権の過半数の賛成によって可決された場合には、当該対抗措置は株主の皆様の合理的意思に依拠しているものと解し得ると考えており、その合理性については問題がないものと判断しております(本対応方針の合理性を高める仕組みの詳細については下記5をご参照下さい。)。

2 本対応方針の内容


(1)概要


①本対応方針に係る手続


上記のとおり、当社としては、大規模買付行為等がなされることを受け入れるにあたっての判断は、最終的には、株主の皆様によってなされるべきものと考えております。そのため、株主意思確認総会により承認が得られ、かつ、大規模買付行為等が撤回されない場合には、当社の中長期的な企業価値ないし株主の皆様共同の利益の最大化を図るため、独立委員会の意見を最大限尊重した上で、所定の対抗措置を発動することとしています。


また、本対応方針は、株主の皆様によるご判断の前提として、大規模買付者に対して所要の情報を提供するよう求め、かかる情報に基づき株主の皆様が、当該大規模買付行為等がなされることの是非を熟慮されるために要する時間を確保し、その上で、株主意思確認総会を通じて、当該大規模買付行為等がなされることを受け入れるにあたり、株主の皆様のご意思を確認することとしておりますので、万一、かかる趣旨が達成されない場合、即ち、大規模買付者が、下記(3)に記載した手続を遵守せず、大規模買付行為等(当社株式の追加取得を含みます。)を実行しようとする場合にも、当社取締役会は、独立委員会の意見を最大限尊重した上で、所定の対抗措置を発動することとしています。


②独立委員会の設置


当社は、本対応方針の運用に関して、本対応方針を適正に運用し、当社取締役会によって恣意的な判断がなされることを防止し、その判断の客観性・合理性を担保するため、独立委員会規程(概要につきましては、別紙2をご参照ください。)に基づき、独立委員会を設置しております。独立委員会は、当社取締役会に対し、対抗措置の発動の是非その他本対応方針に則った対応を行うに当たって必要な事項について勧告するものとします。当社取締役会は、かかる独立委員会の勧告を最大限尊重した上で、対抗措置の発動の是非等について判断します。


なお、独立委員会は、必要に応じて、当社取締役会及び独立委員会から独立した外部専門家(フィナンシャル・アドバイザー、弁護士、公認会計士、税理士等)の助言を得ること等ができるものとします。なお、かかる助言を得るに際して要した費用は、合理的な範囲で全て当社が負担するものとします。

独立委員会の決議は、原則として現任の委員全員が出席し、その過半数をもってこれを行います。但し、独立委員に事故あるとき、あるいは、その他特段の事由があるときは、独立委員の過半数が出席し、その過半数をもってこれを行います。


③対抗措置としての新株予約権の無償割当ての利用


上記①で述べた対抗措置が発動される場合においては、当社は、非適格者(下記3(1)⑤(a)で定義されます。以下同じです。)による権利行使は認められない旨の差別的行使条件等及び非適格者以外の株主が所有する新株予約権については当社普通株式を対価として取得する一方、非適格者が所有する新株予約権については一定の行使条件や取得条項が付された別の新株予約権を対価として取得する旨の取得条項等が付された新株予約権(以下「本新株予約権」といいます。)を、新株予約権の無償割当ての方法(会社法第277条以下)により、当社の全ての株主の皆様に対して割り当てることとなります(詳細は下記3をご参照下さい。)。


④当社による本新株予約権の取得


本対応方針に従って本新株予約権の無償割当てがなされ、当社による本新株予約権の取得と引換えに、非適格者以外の株主の皆様に対して当社株式が交付される場合には、非適格者の有する当社株式の割合は、一定程度希釈化されることとなります。

(2)対象となる大規模買付行為等


本対応方針において、「大規模買付行為等」とは、

①特定株主グループ(注1)の議決権割合(注2)を20%以上とすることを目的とする当社株券等(注3)の買付行為(公開買付けの開始を含みますが、それに限りません。以下同じです。)、

②結果として特定株主グループの議決権割合が20%以上となるような当社株券等の買付行為、又は

③上記①若しくは②に規定される各行為の実施の有無にかかわらず、当社の特定株主グループが、当社の他の株主(複数である場合を含みます。以下本③において同じとします。)との間で行う行為であり、かつ、当該行為の結果として当該他の株主が当該特定株主グループの共同保有者に該当するに至るような合意その他の行為、又は当該特定株主グループと当該他の株主との間にその一方が他方を実質的に支配し若しくはそれらの者が共同ないし協調して行動する関係(注4)を樹立するあらゆる行為(注5)(但し、当社が発行者である株券等につき当該特定の株主と当該他の株主の株券等保有割合の合計が20%以上となるような場合に限ります。)

であると合理的に判断される行為を意味し(いずれも事前に当社取締役会が同意したものを除きます。)、「大規模買付者」とは、上記のとおり、かかる大規模買付行為等を自ら単独で又は他の者と共同ないし協調して行う又は行おうとする者を意味します。


(注1)特定株主グループとは、(i)当社の株券等(金融商品取引法第27条の23第1項に規定する株券等をいいます。)の保有者(同法第27条の23第1項に規定する保有者をいい、同条第3項に基づき保有者に含まれる者を含みます。)及びその共同保有者(同法第27条の23第5項に規定する共同保有者をいい、同条第6項に基づき共同保有者とみなされる者を含みます。以下同じです。)、(ii)当社の株券等(同法第27条の2第1項に規定する株券等をいいます。)の買付け等(同法第27条の2第1項に規定する買付け等をいい、取引所金融商品市場において行われるものを含みます。)を行う者及びその特別関係者(同法第27条の2第7項に規定する特別関係者をいいます。以下同じです。)並びに(iii)上記(i)又は(ii)の者の関係者(これらの者との間にフィナンシャル・アドバイザリー契約を締結している投資銀行、証券会社その他の金融機関その他これらの者と実質的利害を共通にしている者、公開買付代理人、弁護士、会計士、税理士その他のアドバイザー若しくはこれらの者が実質的に支配し又はこれらの者と共同ないし協調して行動する者として当社取締役会が合理的に認めた者を併せたグループをいいます。)を意味します。

(注2)議決権割合とは、特定株主グループの具体的な買付方法に応じて、(i)特定株主グループが当社の株券等(金融商品取引法第27条の23第1項に規定する株券等をいいます。)の保有者及びその共同保有者である場合の当該保有者の株券等保有割合(同法第27条の23第4項に規定する株券等保有割合をいいます。この場合においては、当該保有者の共同保有者の保有株券等の数(同項に規定する保有株券等の数をいいます。)も計算上考慮されるものとします。)又は(ii)特定株主グループが当社の株券等(同法第27条の2第1項に規定する株券等をいいます。)の買付け等を行う者及びその特別関係者である場合の当該買付け等を行う者及び当該特別関係者の株券等所有割合(同法第27条の2第8項に規定する株券等所有割合をいいます。)の合計をいいます。かかる株券等保有割合の計算上、(イ)同法第27条の2第7項に定義される特別関係者、(ロ)当該特定の株主との間でフィナンシャル・アドバイザリー契約を締結している投資銀行、証券会社その他の金融機関並びに当該特定の株主の公開買付代理人、主幹事証券会社、弁護士並びに会計士、税理士その他のアドバイザー、並びに(ハ)上記(イ)及び(ロ)に該当する者から市場外の相対取引又は東京証券取引所の市場内立会外取引(ToSTNeT-1)により当社株式等を譲り受けた者は、本対応方針においては当該特定の株主の共同保有者とみなします。また、かかる株券等所有割合の計算上、共同保有者(本対応方針において共同保有者とみなされるものを含みます。)は、本対応方針においては当該特定の株主の特別関係者とみなします。なお、当社の株券等保有割合又は株券等所有割合の算出に当たっては、発行済株式の総数(同法第27条の23第4項に規定するものをいいます。)及び総議決権の数(同法第27条の2第8項に規定するものをいいます。)は、有価証券報告書、四半期報告書及び自己株券買付状況報告書のうち直近に提出されたものを参照することができるものとします。

(注3)株券等とは、金融商品取引法第27条の23第1項に規定する株券等を意味します。

(注4)「当該特定株主グループと当該他の株主との間にその一方が他方を実質的に支配し若しくはそれらの者が共同ないし協調して行動する関係」が樹立されたか否かの判定は、出資関係、業務提携関係、取引ないし契約関係、役員兼任関係、資金提供関係、信用供与関係、当社株券等の買い上がりの状況、当社株券等に係る議決権行使の状況、デリバティブや貸株等を通じた当社株券等に関する実質的な利害関係等の形成や、当該特定株主グループ及び当該他の株主が当社に対して直接・間接に及ぼす影響等を基礎として行うものとします。

(注5)本文の③所定の行為がなされたか否かの判断は、当社取締役会が合理的に判断するものとします(かかる判断に当たっては、独立委員会の勧告を最大限尊重するものとします。)。なお、当社取締役会は、本文の③所定の要件に該当するか否かの判定に必要とされる範囲において、当社の株主に対して必要な情報の提供を求めることがあります。

(3)対抗措置の発動に至るまでの手続


本対応方針は、当社が大規模買付行為等がなされることを受け入れるにあたり株主の皆様にご意思を表明いただく機会を確保するようにしておりますが、当社の株主意思確認総会を開催するまでには、一定の期間を要します。また、本対応方針は、株主の皆様に、熟慮の上ご意思を表明いただくために要する時間を確保するようにもしております。

そこで、大規模買付者から大規模買付行為等に関する情報を取得し、かつ株主の皆様の熟慮期間を確保した上で、確実に株主意思確認総会を経られるよう、大規模買付者には、本対応方針に定める以下の手続に従っていただくものとします。


①大規模買付行為等趣旨説明書の提出


大規模買付者には、本対応方針導入後に大規模買付行為等に該当する行為を行う場合は60営業日前までに、大規模買付行為等趣旨説明書を当社取締役会宛に書面にて提出していただきます。

大規模買付行為等趣旨説明書には、実行することが企図されている大規模買付行為等の内容及び態様等に応じて、金融商品取引法第27条の3第2項に規定する公開買付届出書に記載すべき内容に準じる内容を日本語で記載していただいた上、大規模買付者の代表者による署名又は記名押印をしていただき、当該署名又は記名押印を行った代表者の資格証明書を添付していただきます。

なお、冒頭に記載のとおり、シティらが、大量保有報告書ベースで20%以上の当社株式を取得する予定はないとの従前の意向に反し、今後、本株式等買集めにより、大量保有報告書ベースで20%以上の当社株式等の買付行為(即ち、大規模買付行為等)を行う蓋然性が相応に高いと合理的に判断できることから、当社は、本日、企業価値ないし株主の皆様共同の利益の最大化の観点から、シティら及び村上氏に対し、シティらにおいて、本対応方針を遵守し、大規模買付行為等(当社株券等の追加取得を含みます。)を取締役会評価期間(下記③で定義されます。)の経過(但し、株主意思確認総会が開催されることとなった場合には、対抗措置の発動に関する議案の否決及び株主意思確認総会の終結)まで中止した上、本対応方針導入後に大規模買付行為等(当社株券等の追加取得を含みます。)に該当する行為を行う場合には、当該行為を行う60営業日前までに、上記の内容及び様式を備えた大規模買付行為等趣旨説明書を当社取締役会宛に書面にて提出するよう要請いたしました。

当社取締役会が、大規模買付者から大規模買付行為等趣旨説明書を受領した場合は、速やかにその旨及び必要に応じその内容について公表いたします。


②情報提供


当社は、大規模買付者に対して、遅くとも当社取締役会が大規模買付行為等趣旨説明書を受領した日から5営業日以内(初日は算入されないものとします。以下同じ。)に、株主の皆様が株主意思確認総会において大規模買付行為等がなされることを受け入れるか否かを判断するために必要と考えられる情報(以下、当該情報を「本必要情報」といいます。)の提供を求めます。なお、本必要情報の一般的な項目は別紙3のとおりです。その具体的内容は、大規模買付者の属性及び大規模買付行為等の内容によって異なりますが、いずれの場合も株主の皆様のご判断及び当社取締役会としての意見形成のために必要かつ十分な範囲に限定するものとします。


当社は、本必要情報が提出された場合、その旨及び当該情報の内容を、株主の皆様が、大規模買付行為等がなされることを受け入れるか否かを判断するために必要又は有益な範囲で適時適切に開示します。当社取締役会は、大規模買付者から受領した情報では、大規模買付行為等の内容及び態様等に照らして、株主の皆様において当該大規模買付行為等がなされることを受け入れるか否かを判断されるために不十分であると合理的に判断する場合には、大規模買付者に対し、適宜回答期限を定めた上、追加的に情報を提供するよう求める(かかる判断に当たっては、独立委員会の意見を最大限尊重します。)ことがあります。この場合には、大規模買付者においては、当該期限までに、かかる情報を当社取締役会に追加的に提供していただきます。当該情報が提供された場合にも、当社は、その旨及び当該情報の内容を、株主の皆様が、大規模買付行為等がなされることを受け入れるか否かを判断するために必要又は有益な範囲で適時適切に開示します。


③取締役会評価期間


当社取締役会は、当社が大規模買付者から大規模買付行為等趣旨説明書を受領した日から60営業日以内で取締役会が合理的に定める期間を、当社取締役会による大規模買付行為等がなされることの是非を評価・検討するための期間(以下「取締役会評価期間」といいます。)として設定します。なお、取締役会評価期間については、上記②の情報提供の完了時ではなく、大規模買付行為等趣旨説明書の受領日を期間の起算点としていることに鑑み、暦日ではなく営業日をベースとしております。

今後の大規模買付行為等(当社株式の追加取得を含みます。)は、取締役会評価期間の経過後(但し、株主意思確認総会が開催されることとなった場合には、対抗措置の発動に関する議案の否決及び株主意思確認総会の終結後)にのみ実施されるべきものとします。


④株主意思確認総会の開催


当社は、当社取締役会において大規模買付行為等がなされることに反対であり、これに対して対抗措置を発動すべきであると考える場合には、大規模買付行為等趣旨説明書受領後60営業日以内に株主意思確認総会を開催することを決定し、当該決定後速やかに株主意思確認総会を開催します。当該株主意思確認総会においては、対抗措置の発動に関する議案に対する賛否を求める形式により、大規模買付行為等がなされることを受け入れるか否かに関する株主の皆様のご意思を確認します。また、当社取締役会は、当該株主意思確認総会において、大規模買付行為等がなされることに代わる当社の中長期的な企業価値ないし株主の皆様の利益の最大化に向けた代替案を提案することがあります。かかる提案をするに当たっては、当社取締役会は、独立委員会の意見を最大限に尊重するものとします。

株主の皆様には、大規模買付行為等に関する情報をご検討いただいた上で、大規模買付行為等がなされることを受け入れるか否かについてのご判断を、当社取締役会が提案する対抗措置の発動に関する議案に対する賛否の形で表明していただくことになります。そして、当該議案について株主意思確認総会に出席された議決権を行使できる株主の皆様の議決権の過半数の賛成が得られた場合には、当該対抗措置の発動に関する議案が承認されたものとします。株主意思確認総会を開催する場合には、当社取締役会は、大規模買付者が提供した本必要情報、本必要情報に対する当社取締役会の意見、当社取締役会の代替案その他当社取締役会が適切と判断する事項を記載した書面を、株主の皆様に対し、株主総会招集通知とともに送付し適時・適切に開示します。また、株主意思確認総会を開催する場合には、議決権を行使できる株主の範囲(近時の裁判例や大規模買付行為等の態様等も踏まえて、適切に株主の範囲を決定することを予定しております。)、議決権行使の基準日、当該株主意思確認総会の開催日時等の詳細について、適時適切な方法によりお知らせします。


⑤対抗措置


株主意思確認総会において、株主の皆様が、当社取締役会が提案する対抗措置の発動に関する議案を承認された場合であって、かつ、大規模買付者が大規模買付行為等を撤回しない場合には、当社取締役会は、かかる株主の皆様のご意思に従い、独立委員会の意見を最大限尊重した上で、下記3に記載する対抗措置(差別的行使条件等及び取得条項等が付された新株予約権の無償割当て)を発動します。これに対し、当該株主意思確認総会において株主の皆様が対抗措置の発動に関する議案を承認されなかった場合には、当社取締役会は、株主の皆様のご意思に従い、対抗措置を発動しません。

但し、大規模買付者が上記①から③までに記載した手続を遵守せず、大規模買付行為等(当社株式の追加取得を含みます。)を実行しようとする場合には、大規模買付行為等がなされることを受け入れるか否かに関し、大規模買付者から開示される情報に基づき株主の皆様が熟慮されるために必要な時間を確保することができず、また、株主の皆様のご意思を確認する機会も確保することもできません。従って、かかる場合には、当社取締役会は、株主意思確認総会を経ることなく、特段の事由がない限り、対抗措置を発動します。当社取締役会は、対抗措置発動の是非を判断するに当たっては、独立委員会の意見を最大限尊重するものとします。

3 対抗措置(本新株予約権の無償割当て)の概要


当社が、本対応方針に基づく対抗措置として実施する本新株予約権の無償割当ての概要は、以下のとおりです(下記に定める他、本新株予約権の内容の詳細は、本新株予約権無償割当て決議において当社取締役会が別途定めるものとします。)。


(1)割り当てる本新株予約権の内容


①本新株予約権の目的となる株式の種類
当社普通株式


②本新株予約権の目的となる株式の数
新株予約権1個当たりの目的となる株式の数は、当社取締役会が別途定める数とします。


③本新株予約権の行使に際して出資される財産の価額
新株予約権の行使に際してする出資の目的は金銭とし、その価額は1円に各新株予約権の目的となる株式の数を乗じた額とします。


④本新株予約権を行使することができる期間
本新株予約権を行使することができる期間は、当社取締役会が別途定める一定の期間とします。

⑤本新株予約権の行使の条件
(a)非適格者が保有する本新株予約権(実質的に保有するものを含みます。)は、行使することができません。
「非適格者」とは、以下のいずれかに該当する者をいいます。
(i) 大規模買付者
(ii) 大規模買付者の共同保有者(本対応方針において共同保有者とみなされるものを含みます。)
(iii) 大規模買付者の特別関係者(本対応方針において特別関係者とみなされるものを含みます。)
(iv) 当社取締役会が独立委員会による勧告を踏まえて以下のいずれかに該当すると合理的に認定した者
(x) 上記(i)から本(iv)までに該当する者から当社の承認なく本新株予約権を譲り受け又は承継した者
(y) 上記(i)から本(iv)までに該当する者の「関係者」。「関係者」とは、これらの者との間にフィナンシャル・アドバイザリー契約を締結している投資銀行、証券会社その他の金融機関その他これらの者と実質的利害を共通にしている者、公開買付代理人、弁護士、会計士、税理士その他のアドバイザー若しくはこれらの者が実質的に支配し又はこれらの者と共同ないし協調して行動する者をいいます。組合その他のファンドに係る「関係者」の判定においては、ファンド・マネージャーの実質的同一性その他の諸事情が勘案されます。
(b)新株予約権者は、当社に対し、上記⑤(a)の非適格者に該当しないこと(第三者のために行使する場合には当該第三者が上記⑤(a)の非適格者に該当しないことを含みます。)についての表明・保証条項、補償条項その他当社が定める事項を記載した書面、合理的範囲内で当社が求める条件充足を示す資料及び法令等により必要とされる書面を提出した場合に限り、本新株予約権を行使することができるものとします。
(c)適用ある外国の証券法その他の法令等上、当該法令等の管轄地域に所在する者による本新株予約権の行使に関し、所定の手続の履行又は所定の条件の充足が必要とされる場合、当該管轄地域に所在する者は、当該手続及び条件が全て履行又は充足されていると当社が認めた場合に限り、本新株予約権を行使することができます。なお、当社が上記手続及び条件を履行又は充足することで当該管轄地域に所在する者が本新株予約権を行使することができる場合であっても、当社としてこれを履行又は充足する義務を負うものではありません。
(d)上記⑤(c)の条件の充足の確認は、上記⑤(b)に定める手続に準じた手続で当社取締役会が定めるところによるものとします。

⑥取得条項
(a)当社は、本新株予約権の無償割当ての効力発生日以後の日で当社取締役会が定める日において、未行使の本新株予約権で、上記⑤(a)及び(b)の規定に従い行使可能な(即ち、非適格者に該当しない者が保有する)もの(上記⑤(c)に該当する者が保有する本新株予約権を含みます。下記⑥(b)において「行使適格本新株予約権」といいます。)について、取得に係る本新株予約権の数に、本新株予約権1個当たりの目的となる株式の数を乗じた数の整数部分に該当する数の当社普通株式を、対価として取得することができます。
(b)当社は、本新株予約権の無償割当ての効力発生日以後の日で当社取締役会が定める日において、未行使の本新株予約権で行使適格本新株予約権以外のものについて、取得に係る本新株予約権と同数の新株予約権で非適格者の行使に一定の制約が付されたもの(以下に記載する行使条件及び取得条項その他当社取締役会が定める内容のものとします。以下、当該新株予約権を「第2新株予約権」といいます。)を対価として取得することができます。
(i)行使条件
非適格者は、次のいずれの条件も満たす場合その他当社取締役会が定める場合には、第2新株予約権につき、第2新株予約権の行使後の大規模買付者の株券等保有割合として当社取締役会が認めた割合が20%又は当社取締役会が別途定める割合(本日時点のシティらの当株券等に係る株券等保有割合が20%を超えている場合には、シティらとの関係では、「20%又は当社取締役会が別途定める割合」は、「本日時点の大規模買付者の株券等保有割合」に読み替えられるものとします。以下同じです。)を下回る範囲内でのみ行使することができます。
(x)大規模買付者が大規模買付行為等を中止又は撤回し、かつ、その後大規模買付行為等を実施しないことを誓約した場合であること。
(y)(α)大規模買付者の株券等保有割合(但し、本(i)において、株券等保有割合の計算に当たっては大規模買付者やその共同保有者以外の非適格者についても当該大規模買付者の共同保有者とみなして算定を行うものとし、また、非適格者の保有する第2新株予約権のうち行使条件が充足されていないものは除外して算定します。)として当社取締役会が認めた割合が20%又は当社取締役会が別途定める割合を下回っている場合であること、又は、(β)大規模買付者の株券等保有割合として当社が認めた割合が20%又は当社取締役会が別途定める割合以上である場合において、大規模買付者その他の非適格者が、当社が認める証券会社に委託をして当社株式等を市場内取引を通じて処分し、当該処分を行った後における大規模買付者の株券等保有割合として当社取締役会が認めた割合が20%又は当社取締役会が別途定める割合を下回った場合であること。
(ii)取得条項
当社は、第2新株予約権が交付された日から10年後の日において、なお行使されていない第2新株予約権が残存するときは、当該第2新株予約権(但し、行使条件が充足されていないものに限ります。)を、その時点における当該第2新株予約権の時価に相当する金銭を対価として取得することができます。
(c)本新株予約権の強制取得に関する条件充足の確認は、上記⑤(b)に定める手続に準じた手続で当社取締役会が定めるところによるものとします。なお、当社は、本新株予約権の行使が可能となる期間の開始日の前日までの間いつでも、当社が本新株予約権を取得することが適切であると当社取締役会が認める場合には、当社取締役会が別途定める日の到来日をもって、全ての本新株予約権を無償で取得することができるものとします。

⑦譲渡承認
譲渡による本新株予約権の取得には、当社取締役会の承認を要します。

⑧資本金及び準備金に関する事項
本新株予約権の行使及び取得条項に基づく取得等に伴い増加する資本金及び資本準備金に関する事項は、法令等の規定に従い定めるものとします。

⑨端数
本新株予約権を行使した者に交付する株式の数に1株に満たない端数があるときは、これを切り捨てます。但し、当該新株予約権者に交付する株式の数は、当該新株予約権者が同時に複数の新株予約権を行使するときは各新株予約権の行使により交付する株式の数を通算して端数を算定することができます。

⑩新株予約権証券の発行
本新株予約権については新株予約権証券を発行しません。

(2)株主に割り当てる本新株予約権の数

当社普通株式(当社の有する普通株式を除く。)1株につき本新株予約権1個の割合で割り当てることとします。

(3)本新株予約権の無償割当ての対象となる株主

当社取締役会が別途定める基準日における最終の株主名簿に記載又は記録された当社普通株式の全株主(当社を除く。)に対し、本新株予約権を割り当てます。

(4)本新株予約権の総数

当社取締役会が別途定める基準日における当社の最終の発行済株式総数(但し、当社が有する普通株式の数を除く。)と同数とします。

(5)本新株予約権の無償割当ての効力発生日

当社取締役会が別途定める基準日以降の日で当社取締役会が別途定める日とします。

(6)その他

本新株予約権の無償割当ては、①株主意思確認総会による承認が得られ、かつ、大規模買付行為等が撤回されないこと、又は、②大規模買付者が上記2(3)に記載した手続を遵守せず、大規模買付行為等(当社株式の追加取得を含みます。)を実施しようとする場合のいずれかが充足されることを条件として効力を生じるものとします。

4 株主及び投資家の皆様への影響


(1)本対応方針導入時に本対応方針が株主及び投資家の皆様へ与える影響


本対応方針の導入時には、本新株予約権の無償割当ては実施されません。従って、本対応方針がその導入時に株主及び投資家の皆様の権利及び経済的利益に直接的具体的な影響を与えることはありません。


(2)本新株予約権の無償割当て時に株主及び投資家の皆様へ与える影響

本新株予約権は、株主の皆様全員に自動的に割り当てられますので、本新株予約権の割当てに伴う失権者が生じることはありません。本新株予約権の無償割当てが行われる場合、株主の皆様が保有する当社株式1株当たりの価値の希釈化は生じますが、株主の皆様が保有する当社株式全体の価値の希釈化は生じないことから、株主及び投資家の皆様の法的権利及び経済的利益に対して直接的具体的な影響を与えることは想定しておりません。また、本新株予約権については、行使期間の到来に先立ち、それらに付された取得条項に基づき当社が一斉に強制取得し、行使条件を充たしている本新株予約権に対して当社株式を交付することを予定しております。
但し、上記3(1)⑤(a)所定の非適格者については、対抗措置が発動された場合、結果的に、その法的権利又は経済的利益に不利益が発生する可能性があります。
また、当社が本新株予約権の無償割当てを行う場合、本新株予約権の無償割当てを受けるための基準日を設定します。本新株予約権の無償割当てによって当社株式1株当たりの価値の希釈化が生じることから、本新株予約権の無償割当てを受ける株主の皆様を確定した後は、当社株式の株価が下落する可能性があります。当社取締役会は、大規模買付行為等の態様その他諸般の事情を考慮した上で、本新株予約権の無償割当てのための基準日を設定します。当社はかかる基準日を設定する場合には適時適切に開示します。
大規模買付者が上記2(3)に記載した手続を遵守し、かつ、株主意思確認総会において対抗措置の発動に係る議案につき株主の皆様のご承認が得られない場合には、本新株予約権の無償割当ては実施されません。また、当社取締役会は、対抗措置を発動する手続を開始した後に対抗措置を発動する必要性がなくなったと判断した場合(例えば、大規模買付者が大規模買付行為等を撤回し、今後大規模買付行為等を実施しないことを誓約した場合等)には、対抗措置の発動を中止又は留保することがあります(その場合には、適用ある法令等に従って、適時適切な開示を行います。)。1株当たりの当社株式の価値の希釈化が生じることを前提に売買等を行った株主及び投資家の皆様は、これらの事態のいずれかが生じる場合には、株価の変動により相応の損害を被る可能性があります。

(3)本新株予約権の無償割当て時に株主の皆様に必要となる手続

(a)本新株予約権の無償割当ての手続

当社取締役会において、本新株予約権の無償割当てを行うことを決議した場合、当社は、本新株予約権の無償割当てのための基準日を定め、適時適切に開示します。この場合、当該基準日における最終の株主名簿に記載又は記録された当社の株主の皆様に対し、その所有する普通株式数に応じて本新株予約権が無償で割り当てられます。従って、当該基準日における最終の株主名簿に記載又は記録された当社株主の皆様は、格別の手続を要することなく、当然に本新株予約権の割当てを受けることとなります。

(b)本新株予約権の取得の手続

株主の皆様に割り当てられた本新株予約権は、上記3に記載のとおり、行使の条件や行使に関する手続が定められておりますが、原則として、行使期間の到来よりも前の当社取締役会が別途定める日に、取得条項に基づき当社が取得することを予定しております。その場合には、当社は、法令等に従い、取得の日の2週間前までに公告をした上で、かかる取得を行います。
当社が、上記3(1)⑥(b)に従って、取得条項に基づき本新株予約権を取得する場合、株主の皆様は、行使価額相当の金銭を払い込むことなく、当社による本新株予約権の取得の対価として、当社普通株式の交付を受けることになります。
但し、非適格者については、本新株予約権の取得又は行使等に関する取扱いが他の株主の皆様と異なることになります。

(c)その他

当社は、上記の各手続の詳細について、実際にこれらの手続が必要となった際に、法令等に従って適時適切な開示を行いますので、当該内容をご確認下さい。

5 本対応方針の合理性を高める仕組み


(1)平時の買収防衛策に関する指針等の趣旨を踏まえたものであること


本対応方針は、平時に導入されるいわゆる事前警告型買収防衛策とは異なるものではありますが、経済産業省及び法務省が2005年5月27日に公表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」の内容、経済産業省企業価値研究会2008年6月30日付け報告書「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」の提言内容、並びに、東京証券取引所の定める平時の買収防衛策に関する、買収防衛策の導入に係る規則及び同取引所が有価証券上場規程の改正により導入し、2015年6月1日より適用を開始した「コーポレートガバナンス・コード」(2021年6月11日の改訂後のもの)の「原則1-5. いわゆる買収防衛策」の趣旨を踏まえて策定されており、これらの指針等に定められる要件のうち、有事の対応方針にも妥当するものについては、本対応方針においても充足されております。


(2)株主意思の尊重(株主の皆様のご意思を直接的に反映する仕組みであること)


当社は、本対応方針に基づく対抗措置を発動するに当たっては、株主意思確認総会を開催することにより、株主の皆様の意思を反映いたします。大規模買付者が上記2(3)に記載した手続を遵守する限り、株主意思確認総会における株主の皆様の意思に基づいてのみ対抗措置の発動の有無が決定されることになります。

また、大規模買付者が上記2(3)に記載した手続を遵守せず、大規模買付行為等(当社株式の追加取得を含みます。)を実施しようとする場合には、独立委員会の意見を最大限尊重した上で、当社取締役会限りで発動されることになりますが、これは、株主の皆様に必要十分な情報について熟慮した上で大規模買付行為等の賛否を判断する機会を与えないという大規模買付者の判断によるものであり、そのような株主意思を無視する大規模買付行為等に対する対抗措置の発動は、当社の企業価値及び株主共同の利益を確保するためにやむを得ないものと考えております。

さらに、下記6記載のとおり、本対応方針は本日から効力が生じるものとしますが、その有効期間は、原則として、2023年開催の当社定時株主総会後最初に開催される当社取締役会の終結時までとします。

このように、本対応方針は、株主意思を最大限尊重するものです。


(3)取締役の恣意的判断の排除


上記(2)記載のとおり、当社は、株主意思確認総会を開催し、株主の皆様のご意思に従い、大規模買付行為等に対して対抗措置を発動するか否かを決定します。大規模買付者が上記2(3)に記載した手続を遵守する限り、株主意思確認総会に基づいて対抗措置の発動の有無が決定されることとなります。また、大規模買付者が、上記2(3)に記載した手続を遵守せず、大規模買付行為等(当社株式の追加取得を含みます。)を実行しようとする場合にも、当社取締役会は、独立委員会の意見を最大限尊重した上で、所定の対抗措置を発動することとしています。このため、当社取締役会の恣意的な裁量によって対抗措置が発動されることはありません。

また、当社は、上記2(1)②記載のとおり、本対応方針の必要性及び相当性を確保し、経営者の保身のために本対応方針が濫用されることを防止するために、対抗措置の発動の是非その他本対応方針に則った対応を行うに当たって必要な事項について、独立委員会の勧告を受けるものとしています。さらに、当社取締役会は、その判断の公正性を担保し、かつ、当社取締役会の恣意的な判断を排除するために、独立委員会の意見を最大限尊重するものとしています。また、独立委員会は、必要に応じて、当社取締役会及び独立委員会から独立した外部専門家(フィナンシャル・アドバイザー、弁護士、公認会計士、税理士等)の助言を得ること等ができます。これにより、独立委員会による判断の客観性及び合理性が担保されております。

従って、本対応方針は、取締役の恣意的判断を排除するものであります。


(4)デッドハンド型買収防衛策又はスローハンド型買収防衛策ではないこと


本対応方針は、下記6記載のとおり、株主総会において選任された取締役により構成される取締役会の決議によっていつでも廃止することができるため、いわゆるデッドハンド型買収防衛策(取締役会の構成員の過半数を交替させてもなお、発動を阻止できない買収防衛策)又はスローハンド型買収防衛策(取締役会の構成員の交替を一度に行うことができないため、発動を阻止するのに時間を要する買収防衛策)ではありません。

6 本対応方針の廃止の手続及び有効期間


本対応方針は本日から効力が生じるものとしますが、その有効期間は、2023年開催の当社定時株主総会後最初に開催される当社取締役会の終結時までとします。但し、2023年開催の当社定時株主総会後最初に開催される当社取締役会の終結時において、現に大規模買付行為等を行っている者又は当該行為を企図する者であって当社取締役会において定める者が存在する場合には、当該行われている又は企図されている行為への対応のために必要な限度で、かかる有効期間は延長されるものとします。なお、上記のとおり、本対応方針は、既に具体化している本株式等買集めを含む大規模買付行為等への対応に主眼を置いて導入されるものであるため、具体的な大規模買付行為等が企図されなくなった後において、本対応方針を維持することは予定されておりません。

なお、有効期間の満了前であっても、当社の株主総会で選任された取締役で構成される当社取締役会により、本対応方針を廃止する旨の決議が行われた場合には、本対応方針はその時点で廃止されることになります。

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