事業報告(2018年4月1日から2019年3月31日まで)
企業集団の現況に関する事項
(1)事業の経過及びその成果
当連結会計年度における我が国経済は、雇用・所得環境の改善が続く中で、各種政策の効果もあり、緩やかな回復基調で推移いたしました。一方、米国の金融政策の動向が為替相場や株式市場に影響を及ぼす局面があるなど、海外経済の動向や金融資本市場の変動の影響には、予断を許さない状況が続いております。当社グループが属する住宅関連業界におきましては、新設住宅着工戸数並びに中古マンション、中古戸建住宅の成約件数は、前年並みの水準で推移しております。また、低水準の住宅ローン金利や政府による住宅取得支援策が継続しており、住宅ローンの実行件数については安定的に推移しております。
このような状況のもと、当連結会計年度の当社グループの新規融資実行件数は、前連結会計年度後半から成長が顕著となっている当社独自の商品である「ARUHIスーパーフラット8・9」及び銀行代理業者としての変動金利商品の販売が好調に推移しており、新規の住宅ローン実行件数については前連結会計年度と比較して19.7%増加となりました。一方、前連結会計年度から継続して借換需要が減少傾向となっていることに加え、投資用マンションローンの実行が減少したことなどにより、当連結会計年度における融資実行合計件数は、前連結会計年度と比較して3.8%増加となりました。
営業収益については、融資実行業務では、オリジネーション・フィー売上が融資実行件数の推移に伴い、8.1%増加であった一方、ファイナンス業務では、当社独自の商品である「ARUHIスーパーフラット8・9」が好調であることなどから貸付債権流動化関連収益が58.4%増加するなど、当連結会計年度の営業収益は23,844百万円(前連結会計年度比16.7%増)となりました。一方、ファイナンス業務の増収に伴う金融費用の増加、新規融資実行の継続した成長に向けた人材の確保、積極的なプロモーション活動などの戦略的な費用が増加したことに加え、従来の国際会計基準第39号「金融商品:認識及び測定」を置き換えた国際財務報告基準第9号「金融商品」を適用したことに伴う影響(△295百万円)もあり費用は増加しましたが、税引前利益は6,264百万円と前連結会計年度比20.5%増加となりました。当期利益及び親会社の所有者に帰属する当期利益は4,312百万円(同9.6%減)となりました。税引前利益の増加にもかかわらず、当期利益及び親会社の所有者に帰属する当期利益が減少している要因は、前連結会計年度において、1,240百万円の繰延税金資産を認識したことによります。
以上により、当社グループの当連結会計年度の営業収益は以下のとおりとなりました。
(注)
- 1.融資実行業務:当業務における主な収入は当社が融資実行した際に受領するオリジネーション・フィー売上(実行金額に一定の料率を乗じて算出)、主な費用はFC(フランチャイズ)運営法人へ支払う支払手数料(オリジネーション・フィー売上の約50%)です。
- 2.債権管理回収業務:当社は、当社が実行した住宅ローン債権について、住宅金融支援機構や信託銀行などの金融機関から委託を受けて、債権譲渡後の住宅ローンに関する債権の管理・回収業務を受託しております。当業務における主な収入は当社が住宅金融支援機構等から受領するサービシング・フィー売上です。なお、住宅ローンの債権譲渡により会計上認識される回収サービス資産について、期中回収分をサービシング・フィー売上に含めております。
- 3.保険関連収益:当社は住宅ローンの販売に際して、保険会社からの業務委託を受けて、保険代理店としての業務を行っております。また、住宅ローンに付帯する団体信用生命保険等の取扱いに関する業務を行っております。当業務における主な収入は、保険代理店手数料売上及び団体信用生命保険料売上です。
- 4.ファイナンス業務:当社は、住宅ローンの融資実行により発生した貸付債権を対象として、債権流動化・証券化を実施することで資金調達を行っております。また、融資実行後、債権流動化・証券化を実施するまでの間、当社が貸付債権を保有する場合には、主に銀行借入により資金調達を行っております。当業務における主な収入は、貸付債権の債権譲渡時に発生する貸付債権流動化関連収益(債権譲渡の対象となる貸付債権について、当社が受け取る権利を有している金利スプレッド等の将来キャッシュ・フローを公正価値で評価し収益認識するもの)及び当社で保有している貸付債権から発生する利息収入です。
- 5.その他業務:その他業務の主な売上の内容は、FC運営法人に対するシステム利用料です。
(ご参考)業績ハイライト
営業収益
23,844百万円
前連結会計年度比16.7%増
税引前利益
6,264百万円
前連結会計年度比20.5%増
当期利益
4,312百万円
前連結会計年度比9.6%減
ARUHIにおける融資実行件数の推移(住宅ローン商品及び投資用マンションローンの合計件数)
年間20兆円※1(新規貸出額)という巨大な住宅ローン市場において、外部環境にも大きく左右されず、融資実行件数は成長を実現しております。
(2)対処すべき課題
当社の中核ビジネスである住宅ローン市場を取り巻く環境は、長期的には少子高齢化に伴う人口の減少によりマーケット全体は縮小傾向に向かうと予想されるものの、地域別では地方から大都市圏への人口流入を背景とした住宅需要の活性化、セグメント別では国の中古物件流通促進政策を背景とした中古セグメント等、住宅ローン市場において引き続き成長が見込める領域が存在すると想定しております。
このような事業環境を踏まえ、当社グループは、住宅ローン市場の成長ポテンシャルの着実な取込みを通じたシェアアップによる住宅ローン事業の中期的な成長を基盤としつつ、川上・川下領域への事業拡大を進めております。
① 中核ビジネスの成長
主な取り組み内容
当社グループはこれまで、お客さまのニーズに応じた多様な商品を、FC(フランチャイズ)店舗、直営店舗に加えて、不動産事業者や大手デベロッパーなどを対象とする直販ホールセール営業やWebチャネル(「ARUHIダイレクト」)など、様々な販売チャネルを拡大して提供することで、より大きな市場により効率よくアクセス可能な体制を整備してまいりました。全国に展開する155(2019年3月31日現在)のFC店舗・直営店舗/直販拠点では、お客さまの意思決定を左右する不動産事業者への営業に加え、お客さまに住宅ローンの相談から手続きまでのアドバイスを対面で行っております。
今後も、お客さまに支持される多彩な商品ラインアップをさらに拡充し、全国に展開されるリアルチャネルとWebチャネルを自由に行き来できるマルチ・オムニチャネル戦略を推進することで、お客さまの多様化するニーズへの対応に引き続き取り組んでまいります。
加えて、テクノロジーの活用による認知度の向上(「ARUHI家の検索」及び「ARUHIマガジン」等)、利便性の向上(お申込みからご融資まで最短3営業日、「ARUHI家探し前クイック事前審査」、及びWebチャネル「ARUHIダイレクト」等)、クオリティオブライフの向上(住生活関連サービス「ARUHI暮らしのサービス」及び「ARUHI新生活パック」等)及び事務処理スピードの向上(RPA:Robotic Process Automation)等を図り、これら4つのドライバーを成長エンジンとして、住宅ローン事業の中期的な成長を加速させてまいります。
対処すべき課題
- a.マーケットセグメンテーションとターゲティングによる商品開発戦略の推進
日本銀行によるマイナス金利政策や変動金利型住宅ローン金利引き下げ競争の激化を背景として、当社の主力商品である「フラット35」の金利競争力が相対的に低下する可能性がある中で、当社グループは、競争力のある独自の固定金利型住宅ローンの販売拡大や銀行代理業者として取扱う変動金利型住宅ローンの販売を強化してまいりました。今後は、お客さまの属性やニーズの違いを的確に分析・判断し、最適な商品を開発することに加え、新たな顧客層や不動産事業者等への営業基盤強化等が課題であると認識しております。 - b.FC店舗網の拡大に伴う販売体制及びコンプライアンス体制の強化
当社グループはFC店舗網の強化に取り組んでおり、FC店舗を含む人材の安定的な確保と雇用の拡大、能力向上とコンプライアンス体制の強化が課題であると認識しております。従って、FC運営法人の指導サポート体制の強化、新規出店及び新規店舗の早期育成、許認可事業の全社横断的管理、継続的な臨店監査の実施等に積極的に取り組むべく専門部署を設置し、引き続き販売体制及びコンプライアンス体制の強化に取り組んでまいります。 - c.Webチャネル(ARUHIダイレクト)の推進
当社グループはこれまでFC店舗や直営店等のリアルチャネルにおいて住宅ローンのお申し込み、ご契約に関するお手続きなど幅広いサービスを対面で提供してまいりましたが、多様化するお客さまのニーズに合わせ、住宅ローンのWeb申込サービスである「ARUHIダイレクト」を開始いたしました。今後は全国に広がるリアルチャネルとWebチャネルを自由に行き来できる導線を確保し、マルチ・オムニチャネル化へ向けた取り組みを推進していくことが課題であると認識しております。 - d.RPA(Robotic Process Automation)推進による顧客利便性と事務効率の向上
当社グループは住宅ローン業務において、最先端テクノロジーを活かしてバリューチェーン上の業務プロセスの再構築に取り組み、お客さまの利便性と事務効率の向上に取り組んでまいりましたが、今後も引き続きRPAを推進し、住宅ローン業務の自動化・ペーパーレス化等を通じた更なる事務処理能力、精度の向上及び事務コストの削減に取り組んでまいります。
また、RPA技術を用いた他金融機関等への事務受託サービス等、最先端テクノロジーを活かした新サービスの開発及び収益化に取り組んでまいります。
②川上・川下領域への事業拡大
主な取り組み内容
当社グループは住宅ローン事業を中核ビジネスと位置づけ、中核ビジネスの川上領域である、あらかじめ借入可能額を試算する「ARUHI家探し前クイック事前審査」や家探しサービス「ARUHI家の検索」、川下領域である住宅購入後の住生活関連サービス「ARUHI暮らしのサービス」の提供や新生活をサポートする「ARUHI新生活パック」等によって、お客さまの生涯を通じて価値を提供できるよう事業領域の拡大に引き続き取り組んでまいります。
対処すべき課題
住宅ローン事業で構築したポジショニング、データベース、インフラ等を活用し、川上・川下領域においてお客さまと不動産事業者・金融機関・商品やサービスを提供する企業など様々な関係者を結びつけるプラットフォームとしての役割の事業化に取り組んでまいります。具体的には、川上領域において住宅を購入したいお客さまを不動産事業者に紹介すること、また、川下領域においてはお客さまが住宅購入後に必要とする様々な商品・サービスをご提供する等、住まいと暮らしに関する様々なニーズをマッチングすることで人々の豊かな住生活の実現に貢献します。
③内部管理体制及び経営管理体制の強化
全国規模の店舗網の拡大に伴い、コンプライアンス意識の更なる向上と法令遵守体制の一層の強化の必要性が増している中、当社は、許認可事業を全社横断的に管理する組織の新設、店舗指導サポート体制の強化や内部監査担当部署による継続的な臨店監査の実施等により、内部管理体制の強化に取り組んでおります。また、ガバナンス体制の見直し、ERM(統合リスクマネジメント)の導入、管理会計システムの強化等、経営管理体制の強化に取り組んでおります。
連結計算書類
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