事業報告(2018年4月1日から2019年3月31日まで)
企業集団の現況に関する事項
(1) 事業の経過及びその成果
国内のエネルギー業界は、2016年4月に電力小売りが、2017年4月には都市ガス小売りが全面自由化され、異業種からの参入やエネルギーの垣根を越えた連携が進み、セット割料金メニューによる消費者への提案活動が一層活発化しております。
当社グループは、このような状況下での業容拡大を目指し、テレビCMやWeb広告等を通じたブランディング戦略により認知度向上に努めるとともに、お客様に利便性の高いサービスを提供するセット割料金メニュー「プレミアム5+プラン」のラインナップを拡充するなど、グループの総力を挙げて営業活動を展開しております。
2018年11月には、資本業務提携先である東京電力エナジーパートナー株式会社の協力を得て、業界最安値を目指す電気とガスのセット割料金メニュー「でガ割」を発表し、東京電力エリアで電気の小売事業をスタートいたしました。さらに2019年3月には、静岡県の中部電力エリア(静岡県の富士川以西)において、同メニューによるLPガスと電気のセット販売を開始し、お客様数の増加に注力しております。今後も、より多くのお客様のご支持を得られるような魅力的な料金メニューや付加価値サービスの開発に注力してまいります。
当社グループの主軸であるLPガス事業の順調な顧客基盤拡大への対応と今後の事業連携を見据え、新たな大型LPガス充填ハブ基地「夢の絆・川崎(仮称)」の建設を計画し、用地として神奈川県川崎市に28,900坪の土地を取得いたしました。
2020年度に完成予定の同ハブ基地は、最新のICT、IoT技術を組み込み、LPガスの受入、ガスの協同充填、トレーラーへの積載等の、完全デジタルトランスフォーメーションによる、世界初の完全無人オペレーションの実現を目指しております。加えて、ICタグや画像認証技術等を活用したガスボンベのトレーサビリティを実現し、リアルタイムでの配送経路や容器管理の「見える化」、センサー技術を活用した基地構内におけるトレーラー・ローリー等の自動オペレーションを目指します。
これらエネルギープラットフォーム事業を支える様々なビックデータの連携と、収集した多くのデータをAIで静的・動的に解析し、お客様毎の異なるニーズや多様化する地域社会の動態に対応した新たなサービス開発に応用するシステム「ニチガス・ストリーム」を株式会社ソラコムと協働で構築いたしました。現在、同システムを実装し、収集データの選別と利用方法の検討を進めております。
当社グループは最先端テクノロジーの取り込みこそが、今後の労働生産性向上によるトップライン拡大や、企業価値向上を決定づけるという確信のもと、ICT技術によるイノベーションの創出に取り組み続けてまいります。
定量面に関しましては、当連結会計年度末の当社グループのお客様数は、前連結会計年度末に比べ157千世帯増の1,496千世帯と順調に増加しております。
当連結会計年度の売上高につきましては、期初からの例年にない高気温の影響を受けましたものの、自由化市場でのお客様数の順調な伸びに伴い、ガス売上高が前年同期に比べ増加したこと等により122,577百万円(前年同期比6.8%増)となりました。
利益面につきましては、原料価格の上昇に加え、営業力強化のための人員増に伴う労務費の増加等があり、営業利益は8,927百万円(前年同期比16.5%減)、経常利益は、持分法による投資損失の計上等により7,375百万円(同33.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は4,328百万円(同44.5%減)となりました。
当連結会計年度のセグメント別の概況は次のとおりであります。
事業区分別の概況
LPガス事業
LPガス事業におきましては、ガス販売量は期初からの高気温の影響を受け減少いたしましたが、原料価格の値上がりに伴う販売価格の上昇等により、当連結会計年度の売上高は67,442百万円と前年同期に比べ2,693百万円(前年同期比4.2%増)の増収となりました。
都市ガス事業
都市ガス事業におきましては、ガス販売量が、自由化市場でのお客様数の順調な伸びに伴い前年同期に比べ増加したこと等により、当連結会計年度の売上高は55,135百万円と前年同期に比べ5,158百万円(前年同期比10.3%増)の増収となりました。

(2) 対処すべき課題
国内のエネルギー業界は、電力及び都市ガスの小売市場全面自由化により、異業種からの参入やエネルギーの垣根を越えた連携が進み、市場競争が激化しています。
このような大きな転換期を迎える事業環境の中、当社は、以下の課題に取り組み、企業の持続的成長を目指すとともに、地域社会の大きな変化に対応した新たなイノベーションを実装し、受益者ストレスがなく利便性の高いサービスの構築を進めてまいります。
1.LPガス事業を中心とした成長の確保
当社は、自由化市場であるLPガス小売市場で一人一人のお客様からの支持を積み重ね、事業基盤を構築してまいりました。今後もこの取り組みを強化し、コア事業であるLPガス事業の顧客基盤拡大を最優先に成長を訴求してまいります。コア事業の成長を加速させるためにも、2018年11月より販売を開始しました電気とガスのセット割料金メニュー「でガ割」、2017年4月に参入しました新都市ガス事業の取組も推進し、総合エネルギー事業者として成長を目指してまいります。さらに、デジタルトランスフォーメーション(DX)を実装したシェアリングエコノミー経済圏やデータ共有のためのシステム対応を強力に推し進めてまいります。
2.デジタル技術による新たな事業基盤の創出
当社では、これまで当社の業務の効率化と保安の高質化をけん引してきた基幹クラウドシステム「雲の宇宙船」をレガシーシステムと位置付け、システムの再構築を進めております。この成果の一つとして当社は、「雲の宇宙船」の各機能を個別API化して提供するサービス「データ・道の駅」の運用を開始いたしました。「データ・道の駅」の活用により、ユーザー企業は自社の顧客管理システムを再構築することなく、「雲の宇宙船」の機能の中から必要なものだけを利用できるようになりました。競合、協業に関わらず他の事業者とのシステム連携が進む中で、個別データの暗号化や、暗号化認証システム、ブロックチェーン技術の取り込みなどDXへの取り組みを強化してまいります。また、LPガスの配送に最先端デジタル技術を実装することにより、「LPG託送」という新たな概念を構築し、都市ガス、電力を含めた将来のエネルギー託送の概念構築にも挑戦してまいります。さらに、シェアリングエコノミー時代に即した新サービスとして「LPG託送」サービスを他の事業者に提供することにより、業界の新たな事業環境の構築を目指してまいります。
3.組織改革の推進
当社では、取締役会の構成の見直しを含めた組織改革を進めてまいります。これにより、取締役会の監督機能及び執行役員による業務執行機能を強化し、コーポレート・ガバナンスの徹底を目指してまいります。また、グループ全体での人的リソースのリバランスを徹底し、エネルギー事業を中心とした成長を促進するための組織改革に取り組んでまいります。
連結計算書類
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