事業報告

1. 企業集団の事業の概要

当社を取り巻く経営環境は、国内景気が雇用・所得環境の改善により緩やかな回復基調にあるものの、不安定な国際情勢や将来への先行き不安等を背景に、消費者の生活防衛意識は依然として高く、個人消費の先行きは不透明な状況が続きました。一方アジアにおいては、堅調な米国景気や安定した中国経済の成長を背景に個人消費が回復し、なかでも新興国では、高い経済成長が継続しました。
このような環境の中、当社は、グループの成長と社会の発展を両立させるサステナブル経営の実現に取り組むとともに、2018年2月期を初年度とするイオングループ中期経営計画を策定し、既存事業の収益構造改革、新たな成長に向けたグループ構造改革に着手しました。12月には、2020年に向けたイオングループ中期経営方針としてリージョナル(地域)シフト、デジタルシフト、アジアシフトを掲げ、それらに連動する投資のシフトというグループの方向性を打ち出しました。
また、お客さまの低価格志向にお応えすべく、イオンのブランド「トップバリュ」では、物流体制の効率化や生産管理の強化等のさらなる企業努力を重ねて合理的にコスト削減をしたことで、値下げの対象商品を拡大しました。
海外においては、当社グループの事業展開を通じ、展開国の経済活性化と地域の一層の発展に寄与すべく、ベトナムでは、ハノイ市人民委員会と地域の経済活性化に向けた包括的な覚書を、またインドネシアにおいては、同国国家輸出発展局とインドネシア製品の販売促進協力に関する包括的覚書を締結しました。
以上のような取り組みにより、連結業績は、営業収益8兆3,900億円(前期比102.2%)、営業利益2,102億円(同113.8%)、経常利益2,137億円(同114.1%)とそれぞれ過去最高を更新するとともに、親会社株主に帰属する当期純利益は、245億円(同217.9%)と前期に引き続き増益となりました。
セグメント別営業利益につきましては、収益構造改革に取り組むGMS(総合スーパー)事業が全セグメントの中で最大の損益改善となったほか、SM(スーパーマーケット)事業では第4四半期には増益となりました。また、総合金融事業、ディベロッパー事業ならびにドラッグ・ファーマシー事業が利益の柱として着実に伸長したことに加え、国際事業が黒字化する等、全事業が利益貢献しました。

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営業収益、営業利益、経常利益が、過去最高を更新しました。

■連結営業成績および財産の状況の推移

■事業の種類別セグメントの状況

数字でみるイオン

イオンは、強い競争力を有する小売、金融、ディベロッパー、サービス等、グループ各事業・企業が有機的に結びつき、高いシナジーを創出する総合グループへの進化を目指し、革新に挑戦し続けています。

  • 日本・中国・アセアンで2万店舗を展開しています。
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(1)各事業の成果

  • 小売

    ・GMS事業では、イオンリテール株式会社が、鮮度感あふれる売場づくりや大型イートインスペースの導入、シニア向けのG.G(グランド・ジェネレーション)店舗の展開を強化するため、9店舗の出店、51店舗の既存店活性化を推進するとともに、荒利益率の改善や販促費用の効率化に取り組み大幅に業績を改善しました。

    ・SM事業では、株式会社ダイエーが、お買い得価格で提供する「えっ!安い値!」の品目拡大や、食品加工センターとの連携を強化し店舗作業の軽減化を進めたほか、生鮮品の鮮度保持に効果がある包装技術の導入により食品ロス削減等、業績向上に努めました。ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社では、セミセルフレジの拡大や、トータルLSP(作業割当)システムの導入等、効率的な店舗オペレーションの構築を推進しました。

    ・ドラッグ・ファーマシー事業では、ウエルシアホールディングス株式会社が、111店舗の出店に加え、調剤併設店舗や24時間営業店舗の拡大、東北地方を地盤とする株式会社丸大サクラヰ薬局の連結子会社化等により増収増益となりました。また、同社では、中国に続きシンガポールに合弁会社を設立し、2017年11月より出店を開始しました。

    ・専門店事業では、国内最大のペット専門店のイオンペット株式会社が、積極的な出店や会員112万人への販促活動、ペットの健康サポートサービスの拡大等により増収増益となりました。

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  • 金融

    総合金融事業では、新規提携のクレジットカードの発行に加え、ロボット技術を活かしたカード入会受付の実験開始等、ビジネスモデルの変革を進めました。銀行業においては、開業10周年を迎えた株式会社イオン銀行がインストアブランチを138店舗に拡大し、個人型確定拠出年金のiDeCoや少額投資非課税制度のつみたてNISAの受付を開始しました。海外においては、タイにおける大手小売業との提携カード発行や、フィリピンにおける新たなIoTデバイスを活用したオートローン事業の開始等、新たな収益源の開拓に取り組みました。

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  • ディベロッパー

    ディベロッパー事業では、イオンモール株式会社が、国内にて、7箇所のSC(ショッピングセンター)の開設のほか、2箇所の増床、12箇所のリニューアルを実施しました。さらに「イオン ブラックフライデー」や、地域ならではの魅力を活かす「究極のローカライズ2017」等の営業施策により、業績が順調に推移しました。海外では、5箇所のSCをオープンするとともに、前期までに開業した19箇所のSC中14箇所が黒字化しました。このような国内外での成長により営業収益ならびにすべての利益において過去最高となりました。

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  • サービス

    サービス事業では、イオンディライト株式会社が、国内外での新規顧客の開拓ならびに資産価値向上の観点から既存顧客への提案を強化しました。また、ファシリティマネジメントの自動化や効率化を目的に、各種設備の遠隔監視や自動制御化をはじめ、IoTや人工知能といったテクノロジーを活用した実証実験や研究開発を推進しました。
    株式会社イオンファンタジーでは、国内の既存店が好調に推移するとともに、新業態やサービスの開発、中国でのアプリ会員136万人の組織化、アセアン事業の黒字化達成等により売上高ならびにすべての利益において過去最高となりました。

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  • 国際

    国際事業では、アセアン地域の事業基盤強化に向けてイオンマレーシア(AEON CO.(M)BHD.)が、購入商品を専属シェフがその場で調理するレストラン型の売場やキッチンスタジオ併設型生鮮コーナーの展開等、商品・売場改革を推進しました。また、イオンベトナム(AEON VIETNAM CO.,LTD.)では、社会行事需要の取り込みや、自社開発商品の拡大等に取り組み大幅な増収増益となりました。
    中国では、GMS店舗を55店舗に拡大するとともに、商品開発体制の刷新を図りました。青島イオン(青島永旺東泰商業有限公司)では、前期に実施した不採算店舗の整理等、事業構造改革が奏功し、黒字転換しました。

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●営業収益 構成比

●営業利益 構成比

(2)環境・社会への取り組み

当期は、持続可能な社会の発展に向けたグループ全体の取り組みを策定した「イオン サステナビリティ基本方針」について、環境面に加え、社会面の重点課題を新たに特定しました。同方針のもと、サプライチェーンにおける社会的責任を果たしていくため、2017年4月に「イオン持続可能な調達方針および2020年目標」を発表、10月に「食品廃棄物削減に向けた新たなグループ目標」を発表しました。

  • 持続可能な社会の実現に向けて

    ・低炭素社会の実現に向けて、エネルギー使用削減、再生可能エネルギー拡大、防災拠点の設置を目標とした「イオンのecoプロジェクト」の達成に継続して取り組みました。

    ・生物多様性の保全に向け、環境負荷の少ない養殖により生産されたASC認証商品や、持続可能な漁業で獲られた天然水産物MSC認証商品の販売を強化しました。10月には、持続可能な水産物の普及に取り組む国際的な機関である「世界水産物持続可能性イニシアチブ(GSSI:The Global Sustainable Seafood Initiative)」にアジアの小売業として初めて参画しました。

    ・1991年から継続している国内外の植樹活動は、公益財団法人イオン環境財団の活動と合わせて累計植樹本数が1,166万本を超えました。

    ・資源循環の促進においては、新たな目標として2025年までに食品廃棄物を半減するとともに、2020年までに食品資源循環モデルを全国10カ所以上に展開することを策定しました。

    ・コミュニティとの協働に向けた取り組みでは、お客さまとともに地域に貢献する団体等を応援する活動として、投函レシート合計金額の1%相当の品物を寄贈する「イオン 幸せの黄色いレシートキャンペーン」の推進や、ご利用金額の一部を地域社会の発展に活用するご当地WAONの拡大に継続して取り組みました。また、地域の安全・安心や活性化、住民サービスの向上等に向けて、日本各地の自治体と包括協定の締結を推進しました。

    ・公益財団法人イオン環境財団では、美しい地球を次代に引き継ぐための環境保全活動に取り組んでいます。国内外での植樹活動のほか、国連環境計画・生物多様性事務局をはじめとする世界各国の政府や研究機関等と連携した環境活動の推進や環境活動に取り組む団体への助成を行いました。さらに、アジア各国の主要大学との連携による環境分野の人材育成等、環境活動を通じ豊かな暮らしを実現できる「自然共生社会」の構築を目指し取り組みました。

    ・グループ主要企業が税引前利益の1%を拠出して支援する公益財団法人イオンワンパーセントクラブでは、次代を担う青少年の健全な育成、諸外国との友好親善の促進、地域社会の持続的発展を目指し、子どもたちの継続型農業体験プログラムや、アジアの高校生交流事業、被災地支援活動等を推進しました。

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  • 被災地支援の活動

    東日本大震災後の復興支援から次のステージの地域(ふるさと)の創生を目指し、「にぎわい東北」のスローガンのもと、「事業を通じた地域産業の活性化」「雇用の創出と働きやすい環境づくり」「地域の未来を“ともにつくる”環境・社会貢献活動」「安全・安心にくらせるまちづくり」の4つの方針を柱にさまざまな取り組みを推進しました。10年間にわたる復興支援に労使一体で取り組む「イオン 心をつなぐプロジェクト」では、地域交流型支援活動を通じた持続可能なコミュニティの再生を目指す「イオン 未来共創プログラム」等の活動を推進しました。これらの取り組みを通じ、従業員によるボランティア活動には、延べ28万4千名が参加するとともに、東北沿岸部での累計植樹本数は25万本を超えました。

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  • 人材の活躍・ダイバーシティの推進

    当社は、お客さまに対する価値創造を担う従業員を最大の経営資源と位置付け、従業員一人ひとりが能力を最大限に発揮し、多様な価値観を活かした革新ある経営を実践するため、グループをあげてダイバーシティ経営を推進しています。グループ内のベストプラクティスの共有や、組織の業績成果を出しつつ自身と部下のワークライフバランスを考える管理職の育成、事業所内保育施設の増設等に努めました。また、これまでの女性活躍推進に加え、障がい者や外国籍人材、LGBT(性的マイノリティ)に対象を拡大し、全従業員がダイバーシティの実態を「知る」、社内制度や働く環境が「変わる」、事業へと「拡げる」を目標とした3ヶ年の取り組みをスタートしました。なお、こうした取り組みの結果、2018年3月には、経済産業省と東京証券取引所より、女性活躍推進に優れた上場企業として「なでしこ銘柄」に選定されました。

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2. 企業集団の対処すべき課題

近年、人口動態の変化、さらにはITをはじめとする技術革新により、これまでの常識では考えられなかったスピードで、非常に大きな環境変化が生じています。また、「モノ」から「コト」への支出の変化や、健康・予防意識の高まり、さらなる低価格志向など、お客さまのニーズも変化しており、小売業を取り巻く環境は激変しています。
このような環境の中、当社グループは、“絶えず革新し続ける企業集団”として、将来起こりうるさまざまな変化を予測し、グローバルトップ企業に伍する売上規模と利益水準の実現を目指してまいります。そのために、2020年に向けて、それぞれの地域と事業においてNo.1企業へと革新を図るとともに、デジタル分野とアジア地域に資源を大幅に配分することで、持続的な成長と収益性の向上を実現してまいります。

  • (1)グループ事業構造改革に向けた主要な取り組み
    ① 食品改革

    当社グループは、食を取り巻く環境変化に対応し、お客さまのより豊かな生活を実現するため健康志向や低価格志向の高まりに対応したプライベートブランドの強化や食のSPA化に取り組んでまいります。また、グループの中核であるSM事業とGMS事業の食品分野を再編・統合し、規模を確保することで、地域に密着し、より鮮度の高い商品の安定供給、地域食材の開発、物件開発、物流・プロセスセンターの整備等を推進し、圧倒的な差別化を図ってまいります。
    また、現在グループ各社にある4,000億円規模のディスカウントストアの統合を進めてまいります。独自商品の開発や商品数の絞り込みや物流の効率化により、圧倒的な低価格を実現し、新たなディスカウントストアモデルを確立します。

    ② GMS改革

    GMS事業の食品については地域分社化、衣料や住居余暇、H&BC(ヘルス&ビューティーケア)については、商販一体型の専門会社として分社化を進め、それぞれの専門領域でNo.1を目指してまいります。食品については、地域毎の特色を活かし、強い食品売場を構築します。衣料・住居余暇については、成長が見込まれる分野に資源を集中させ、SPAを確立します。住居余暇については、イオンのホームファッションブランド「HOME COORDY」を中核とし、機能性やデザイン性に優れたプライベートブランドの開発を進めてまいります。H&BCについては、当社グループの事業規模を活かし、独自商品の開発や共同商品調達を行い、サービスレベルと収益性の向上を図ります。加えて、食とH&BC、飲食を組み合わせた新しい食中心の3,000㎡規模の新業態を出店し、GMS事業の成長を実現してまいります。

    ③ デジタル改革

    Eコマース事業のさらなる強化のため、当社グループ企業をはじめ、テナント企業や地域の生産者や販売者が出品できるマーケットプレイスを構築し、地域の名産品やプライベートブランドをオンラインだけではなく店舗でも販売し、地域とともに成長できるモデルを目指します。また、お客さまの利便性向上のため、店舗での受取りやレジレス化など店舗のデジタル化も推進してまいります。ネットスーパーについては、専任の責任者を配置し、注文・配達時間の短縮、グループ全店舗での受取りなど、利便性のさらなる向上を図り、新たな事業モデルを確立してまいります。

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  • (2)事業基盤の刷新

    前記の3つの改革を実現するために、IT・物流などの事業基盤を刷新します。SM事業とGMS事業の食品分野を再編するにあたり、事業別に収益を最大化してきたIT・物流・サプライチェーンマネジメント基盤を地域単位で見直し、食のSPA化、よりフレッシュな商品の提供、Eコマースでリアル店舗とオンラインをシームレスにつなぐ体制を構築します。さらにはアジア域内でお客さまが求める商品を自在に、グローバルに供給できる体制を構築し、競争力をより一層高めます。
    また、事業基盤の構築に加え、プライベートブランドの拡大、Eコマースや店舗のデジタル化などのデジタル分野において、3ヶ年で5,000億円の投資を行い、食品改革・デジタル改革の早期の完遂を目指します。

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3. 会社の体制および方針

当社のコーポレートガバナンスの基本的な考え方と体制およびその実施状況

  • ① コーポレートガバナンスの基本的な考え方

    イオンは「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する」という基本理念を全ての企業活動の指針とした経営を追求してきました。
    このような価値観に基づき、当社のコーポレートガバナンスのあり方を、以下の5つの基本姿勢を中核とした「コーポレートガバナンス基本方針」として定めています。

    • iお客さま基点、現場主義による価値創造
      お客さまの幸福感の実現を最大の企業使命として、お客さまとの接点である現場主義を貫き、常にお客さま基点で考えることで、変化するお客さまのニーズに対応した最適な価値創造を追求します。
    • ii最大の経営資源である人間の尊重
      人間こそが最大の経営資源であるとの信念に基づき、従業員を尊重し、多様性を重視し、教育機会を積極的に提供することで従業員が自己成長に努め、強い絆で結ばれ、お客さまへの貢献を至上の喜びとする従業員で構成された企業を目指します。
    • iii地域社会とともに発展する姿勢
      地域社会の一員、心を持った企業市民として、同じ地域社会の参加者であるお客さま、従業員、株主、取引先とともに発展し、地域社会の豊かさ、自然環境の持続性、平和に貢献することを目指します。
    • iv長期的な視野と絶えざる革新に基づく持続的な成長
      お客さま、地域社会の期待に応え続けるために、変化する経営環境に対応するための絶えざる革新に挑戦することで、長期的な視野に立った価値創造を伴う持続的な成長と、グループ全体の継続的な価値向上を志向する経営に努めます。
    • v透明性があり、規律ある経営の追求
      お客さま、ステークホルダーとの積極的な対話に努め、評価を真摯に受け止め、常に自らを律することで、透明性と規律がある経営を追求します。
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  • ② 企業統治体制

    当社は、「グループ全体を視野に入れた基本理念に基づく経営」「透明かつ持続性と安定性を持った経営」「お客さまを原点とした絶えざる革新」を追求し、これらを実践するための最適な企業統治体制として、指名委員会等設置会社を選択しています。
    これにより、経営の監督と業務執行を分離して、執行役に大幅な権限移譲を行い迅速な経営の意思決定を実現する体制を整える一方、社外取締役を過半数とする指名委員会・監査委員会・報酬委員会の3委員会を設置して、経営の透明性と客観性を担保しています。
    また、純粋持株会社としてグループの事業や個社の枠組みを越え、グループが目指すべき経営方針の策定や、経営資源配分の最適化、事業を越えたシナジーの創出に取り組んでいます。

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  • ③ 取締役会および委員会の実施状況

配当金について

当期の剰余金の期末配当は、2018年4月11日開催の取締役会決議により、1株当たり普通配当15円とさせていただきました。これにより、中間配当15円と合わせた当期の年間配当金は1株当たり30円となります。なお、期末配当金の支払開始日(効力発生日)は2018年5月1日(火曜日)とさせていただきました。

■年間配当金の推移(1株当たり)

連結計算書類

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