事業報告(2018年4月1日から2019年3月31日まで)

当社グループの事業活動の状況

 当社グループは、グループの企業価値の向上を目指し、証券業を中核とした事業活動を行っております。当社グループの当期(2018年度)の事業の概況は以下のとおりであります。

(注) 本事業報告において、「当社グループ」とは、当社及びその関係会社から成る企業集団を指します。

経済・市場環境

 当期のわが国の経済は、内需を中心に緩やかな回復基調が続きました。もっとも、2018年7月から9月にかけては、酷暑に加えて、豪雨や台風、大地震といった自然災害が相次いだため、個人消費やインバウンド需要が低迷するとともに、生産・輸送面で企業活動が一時的に制約を受けました。また、当期後半には、海外経済の減速を受けて輸出や生産が落ち込み、経済成長率は伸び悩みました。当期の実質GDPの水準は概ね横ばい圏で推移するなど、わが国の経済は総じて足踏み状態にありました。失業率は低水準で推移し、賃金も緩やかに増加するなど、雇用・所得環境の改善が進みました。一連の自然災害の影響を受けたものの、家電販売や旅行、外食などが増加し、個人消費は持ち直しました。住宅投資は、貸家建設の減速感が強まったものの、2019年10月に予定される消費増税に向けた駆け込み需要が徐々に顕在化したことから、当期後半にかけて持ち直しの動きが見られました。一方、企業の設備投資については、堅調な企業収益や低金利、労働需給の逼󠄀迫などを背景に、人手不足に対応した合理化・省人化投資や、競争力を維持するための機械・設備の更新、研究開発投資などが増加しました。もっとも、当期後半にかけては、海外経済の減速から、情報関連財や資本財を中心に輸出・生産が落ち込みました。中でも、中国などアジア向けの輸出数量は減少しました。また、米中の通商交渉やイギリスのEU(欧州連合)離脱の行方など先行きの不透明感が高まったために、企業の景況感は悪化し、設備投資に対する態度にも慎重さが見られるようになりました。
 株式市場においては、引き続き海外の動向に左右される展開となりました。当期前半は、先進国は日米欧いずれも景気が拡大していたことから、株価は上昇基調を辿󠄀り、2018年9月下旬から10月初めにかけて日経平均株価は約8ヵ月ぶりに24,000円台を回復し、1991年11月以来の高値を更新しました。しかし、12月に入ると、米中の通商交渉の先行き懸念や、中国をはじめとする世界全体の景気減速懸念の高まりを受けて、世界的な株安となり、日経平均株価は1年3ヵ月ぶりに2万円を割り込みました。2019年に入ると、米欧の中央銀行が景気に配慮した金融政策の姿勢を強め、中国も大規模な景気刺激策を発表したことから、先行きに対する過度な悲観的見方が後退しました。この結果、株価は再び上昇基調となり、当期末の日経平均株価は21,205円81銭となりました。
 債券市場では、日本銀行による短期金利に加えて長期金利も操作対象とする金融緩和措置が継続したことから、金利は極めて低位で推移しました。2018年7月に、日本銀行が長期金利の一定程度の変動を容認する姿勢に転じると、10年国債利回りは上昇し、8月以降は概ね0.1%台で推移しました。もっとも、12月に入ると、世界経済の減速懸念を背景に世界的に金利が低下する中、日本の長期金利も大幅に低下し、2019年2月以降はマイナス圏で推移しました。この結果、当期末の10年国債利回りは△0.082%となりました。

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連結業績の概況

(1)当社グループの損益の状況

(2)当社グループの資産・負債・純資産の状況

当社グループの事業活動の成果(各セグメントの実績)

リテール部門

 大和証券株式会社では、「クオリティNo.1」の実現に向け、「商品・サービスのクオリティ向上」、「お客様担当の最適化」、「お客様との接点拡大」に注力した営業体制改革により、お客様からの信頼の飛躍的向上を目指しています。
 当期は、大和版NPS®(注)の全店導入をはじめ、お客様満足度を踏まえた営業店の評価制度の拡充などに取り組みました。
 2018年7月には、相場の不透明感が高まる中、償還時に円建ての元本確保を目指す投資信託として国内初となる、「ゴールドマン・サックス社債/国際分散投資戦略ファンド」の取扱いを開始しました。また、同月には、「ダイワファンドラップ プレミアム」において、保有資産の安定した成長を図りながら、ご家族への生前贈与を確実・簡単に行うことができる「ダイワの暦年贈与サービス」の取扱いを開始しました。お客様のあらゆるニーズに応える最適なサービスを提供してきたことで、ラップ口座サービスの契約資産残高は2兆円を突破しました。
 また、大和証券株式会社は、株式会社大和ネクスト銀行(当期末の預金残高:約3.6兆円)の銀行代理業者として、円預金及び外貨預金を取扱い、全国の店舗網を通じて、好金利の預金と利便性の高いサービスを幅広いお客様に提供しています。
 さらに、相続関連業務を専門とし、お客様の個別のお悩み、ニーズに対応する「相続コンサルタント」を全店に配置し、シニア層のお客様を主に担当する「あんしんプランナー」の配置店は当期末に41店舗、2019年4月には70店舗に拡大しました。
 上記に加え、お客様との更なる接点拡充を目指し、低コスト・小規模な営業所を増やしました。当期末に国内店舗の合計は43営業所を含め、160店舗となりました。

(注) NPS®:Net Promoter Scoreの略であり、お客様のロイヤルティを数値化する指標。なお、NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

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ホールセール部門

 ホールセール部門は、グローバル・マーケッツとグローバル・インベストメント・バンキングで構成されています。
 グローバル・マーケッツでは、主に機関投資家や事業法人を対象とした株式、債券・為替及びそれらの金融派生商品のセールス及びトレーディング、並びにリテール部門への商品供給、販売サポートを行っています。当期は、日経平均株価が27年ぶりの高値を更新したものの、米中貿易摩擦や世界経済減速への懸念を背景に年末にかけて調整するなど、変動の激しい年となったため、収益は減少した一方、前期に引き続き、株式関連ビジネスを中心として、リテール部門とホールセール部門との連携により、お客様のニーズや市場環境の変化に対応した商品のタイムリーな提供が、収益に貢献しました。
 グローバル・インベストメント・バンキングでは、有価証券の引受業務及びM&Aアドバイザリー業務などを行っています。
 引受業務のうち国内では、ルネサスエレクトロニクス株式会社の株式の売出し、株式会社メルカリのIPO(注1)などにおいて、ジョイント・グローバル・コーディネーターを務めたほか、ソフトバンク株式会社のIPOにおいて、主幹事を務めました。また、東京建物株式会社が発行したグリーンボンドとして国内初の公募ハイブリッド社債(注2)の事務主幹事及びGreen Bond Structuring Agent(注3)を務めました。
 M&Aアドバイザリー業務では、出光興産株式会社と昭和シェル石油株式会社の経営統合案件において、大和証券株式会社が出光興産株式会社のアドバイザーを務めました。また、大和証券株式会社とアメリカのDCS Advisory LLC、フランスのDaiwa Corporate Advisory SASが協働し、大正製薬株式会社によるBristol-Myers Squibb Companyが保有するフランスの医薬品製造販売会社UPSA SASの子会社化及び関連事業資産の取得に際し、大正製薬株式会社のアドバイザーを務めるなど、当社グループ各社の連携により多くのM&A案件に関与しました。
 さらに、グローバル、特に欧州におけるM&Aアドバイザリー事業強化のため、スペインのMontalbán Atlas Capital, S.L.を買収しました。

(注1) IPO(Initial Public Offering):新規株式公開を実施するときに株式の公募・売出しを行うこと

(注2) 公募ハイブリッド社債:公募劣後特約付社債

(注3) Green Bond Structuring Agent:グリーンボンドのフレームワークの策定及びセカンドオピニオン取得の助言などを通じて、グリーンボンドの発行支援を行う者

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アセット・マネジメント部門

 大和証券投資信託委託株式会社及び大和住銀投信投資顧問株式会社は、幅広い販売チャネルを通じた商品の提供や運用力の強化により、運用資産額の拡大に取り組みました。
 大和証券投資信託委託株式会社では、「ワールド・フィンテック革命ファンド」の販売が好調で1,046億円の資金増加となりました。また、上場投資信託への資金流入を主因として、公募株式投資信託全体で当期の資金増加額は9,398億円、当期末の純資産残高は14兆6,162億円となりました。
 大和住銀投信投資顧問株式会社では、国内外の年金基金などを対象とする投資顧問業務において運用能力の向上に努めました。
 なお、大和住銀投信投資顧問株式会社は、最高品質の運用パフォーマンスとサービスを提供する資産運用会社の実現を図るべく、三井住友アセットマネジメント株式会社と合併し、2019年4月1日に三井住友DSアセットマネジメント株式会社となりました。
 不動産アセット・マネジメント分野では、グループの経営資源集中による運営基盤の安定化及び競争力の更なる向上を図るべく、2018年10月に、大和リアル・エステート・アセット・マネジメント株式会社と株式会社ミカサ・アセット・マネジメントが合併しました。合併後も引き続き、新規物件の取得や資産の入替によるポートフォリオ利回りの向上、既存物件の価値向上に努め、当期末の運用資産規模は9,074億円となりました。

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投資部門

 大和企業投資株式会社は、2018年7月に、主として国内で活動するベンチャー企業に対して投資するファンドである「DCIベンチャー成長支援投資事業有限責任組合」を組成しました。また、国内外の様々なステージのベンチャー企業への投資を実行するとともに、投資先の上場などにより既存投資案件の回収を進めました。
 大和PIパートナーズ株式会社は、国内外で不動産ローンや企業向け投融資を実行しました。また、不良債権投資や企業投資などの既存投資案件の回収を進めました。
 また、大和PIパートナーズ株式会社で行っていたエネルギー・インフラストラクチャー分野における事業領域を更に拡大し、事業展開を加速すべく、2018年7月に大和エナジー・インフラ株式会社を設立し、再生可能エネルギー事業に対する投資を実行しました。

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その他

 株式会社大和総研は、AI(人工知能)を活用した経済指標予測モデルを開発し、月次経済指標の予測値の公表を開始するなど、先端技術の調査・研究とその活用に積極的に取り組みました。
 当社は、2019年3月に、シニア層のお客様やそのご家族に対する新たなサービスの提供や、不動産アセット・マネジメント事業の運用資産規模の拡大などを企図して、高齢者向け施設・住宅の運営会社であるオリックス・リビング株式会社の全株式を取得することを決定しました。
 また、イギリスのEU離脱後もEU域内関連のサービスを継続して提供するため、当社グループがドイツ・フランクフルトに設立したDaiwa Capital Markets Deutschland GmbHが、2018年8月にドイツ金融規制当局より証券業ライセンスを取得しました。

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(3)当社グループの設備投資の状況

 当社グループでは、お客様本位の営業体制の構築やお客様ニーズを捉えた商品・サービスの提供、付加価値の高い業務に従事するための既存業務の効率化とビジネス革新・業務プロセス改革を目指すデジタル・トランスフォーメーション(注1)の推進、事業継続に不可欠なインフラ基盤の整備や法制度への対応、リスク管理態勢の強化などを目的とする設備投資を行っております。
 当期は、「ダイワの暦年贈与サービス」やスマートフォンアプリへの生体認証によるログイン機能の提供など商品・サービスの拡充、音声認識やAIを活用した業務効率化、付加価値の高い金融サービスを提供するためのAPI(注2)基盤の整備、グローバル金融規制への対応やサイバーセキュリティ対策の更なる強化などに取り組み、総額約406億円のIT関連投資を行いました。
 また、店舗に関しては、大和証券株式会社が藤が丘営業所、二俣川営業所、海浜幕張営業所、香椎営業所、桑名営業所、多治見営業所、五井営業所及び久喜営業所を新設しました。

(注1)デジタル・トランスフォーメーション:企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

(注2)API(Application Programming Interface):システム間の接続を標準的な形式で提供する仕様・仕組みのこと

(4)当社グループの資金調達の状況

 当社は、第32回無担保社債(グリーンボンド)100億円(2018年11月29日払込)及び第33回無担保社債120億円(2018年11月29日払込)を発行しました。

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連結計算書類

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