<株主提案>
第5号議案 定款一部変更(子会社の管理)の件

<株主提案(第5号議案から第8号議案まで)>

第5号議案から第8号議案までは、株主様1名(議決権数300個)(以下、「本提案株主」といいます。)からのご提案(以下、「本株主提案」といいます。)によるものであります。

<株主提案全般に対する当社取締役会の意見>

当社取締役会としては、第5号議案から第8号議案までのすべての議案に反対いたします。

本提案株主からの一連のご提案は、第5号議案の提案の理由の冒頭に記載のありますとおり、当社上場子会社である鳥居薬品株式会社(以下、「鳥居薬品」といいます。)を念頭に、親子上場の解消を求めるところにございます。これについて、当社取締役会は次のとおり考えております。

当社医薬事業は、グループの利益成長目標である中長期に亘る為替一定ベース調整後営業利益の年平均mid to high single digit成長において、その利益成長を補完する役割を担っております。この役割を果たすべく、次世代戦略品の研究開発及び各製品の価値最大化を目標に掲げ、創薬力向上のあくなき追求、個別製品の価値最大化、中長期的な事業基盤の最適化によるコスト削減に取り組んでおります。

当社医薬事業の収益の状況について、自社開発品の、自社による上市に固執せず、積極的な導出入活動を通じて、2016年12月期以降、Gilead Sciences, Inc.との日本国内における抗HIV薬の販売に係る契約の終了といった難局はあったものの、営業利益ベースで利益創出を継続しており、2022年12月期においても、前年と比較して遜色のない水準となっております。

2023年12月期においても、増益となる計画を有しており、引き続き、当社グループの利益成長を補完する役割を果たし続けることができるよう、前述した取組みを加速させてまいります。

当社子会社である鳥居薬品においても、2022年2月に同社が公表した中長期事業ビジョン「VISION2030」においては、導入活動の強化及び製品価値最大化のための仕組み作りを通じて、2030年に過去最高の売上高を達成すること、過去最高益の更新を射程に入れることを目標に掲げております。

鳥居薬品も含めた当社グループの医薬事業がこれらの役割、目標を果たす上で、当社が研究開発を行う一方で、鳥居薬品が製造・販売及びプロモーション活動を担い、両社で一体的なバリューチェーンを構築している効率的な協業体制の継続、強化が重要と考えております。

協業体制の継続、強化に際し、医薬事業において重要となる優秀な人的資本の確保や信用の獲得等による事業上の競争優位性の向上が必要であることに加え、資本市場における規律等の子会社の経営上のメリット、株式報酬の活用による人的資本のエンゲージメントの強化等も総合的に勘案し、上場子会社として鳥居薬品を有している意義があると考えております。

現に、150年を超える歴史を有している鳥居薬品のブランド・知名度は、製薬業界における知見、経験、人財等、当社グループ内のリソースだけでは賄えない専門性の高いリソースを広く獲得することに貢献しており、これも鳥居薬品が上場企業として高い信頼を得ていることに由来していると考えております。

1998年の鳥居薬品株式の過半数取得以降、既存体制を漫然と継続してきた事実はなく、研究開発機能及び臨床開発機能の当社への一元化等、グループ全体として最適な事業遂行体制の構築を継続的に進めております。今後も当社グループの企業価値向上に向け連携を強化してまいります。

なお、鳥居薬品のPBRが1倍を割れていることは事実です。一方、同社が2023年2月10日に公表した決算発表においては、中長期事業ビジョン「VISION2030」の目標達成に向けた中期経営計画の進捗状況や主要施策の説明に加え、株主還元についても、2022年度通期の一株当たり配当金の増配を同社株主総会にお諮りする予定であることや、引き続き継続的かつ安定的な配当の実施を基本方針としつつ更なる充実を図るといった企業価値の向上に向けた取組みも示されております。当社としてはこれらの発表内容を支持するとともに、今後とも事業面での協業を強化すると同時に、上場企業の過半数の株式を有する株主としての責任も適切に果たしていきたいと考えております。

以上が、本提案株主が4件の本株主提案の狙いとして訴求する親子上場解消に関する当社の考えです。

議案ごとの当社取締役会の意見については、それぞれ議案の後に記載しております。

以下の提案の内容(議案の要領)及び提案の理由は、本提案株主から提出された株主提案書の該当箇所を原文のまま掲載しております。

1.議案の要領

当社の定款に以下の章及び条文を新設する。なお、本定時株主総会における他の議案(会社提案にかかる議案を含む。)の可決により、本議案として記載した条文に形式的な調整(条文番号のずれの修正を含むが、これらに限られない。)が必要となる場合は、本議案に係る条文を、必要な調整を行った後の条文に読み替えるものとする。

2.提案の理由

提案株主による一連の議案は、親子上場の解消を求める狙いがある。当社は、1998年12月に東京証券取引所に上場する鳥居薬品の株式の過半数を取得し、1999年10月には、グループの医薬事業の研究開発機能を当社に集中し、医薬品の販売・営業といったプロモーション機能を鳥居薬品へ統合した。現在も、当社の唯一の上場子会社である鳥居薬品と鳥居薬品本社ビル内に事務所を構える当社の研究開発部門が、当社の医薬事業の中核をなす。

だが、当社が保有する鳥居薬品株式の市場価値は、買収時からほとんど変化がない。当初は、当社が独自に開発した医薬品を鳥居薬品経由で販売する狙いがあったが、買収から20年以上経過しても、上市されて一定の売上が計上されたと認められるのは、2020年6月発売の外用アトピー性皮膚炎治療剤コレクチムなどに限られる。当社が2022年2月に発表した経営計画において鳥居薬品に関する記載がほとんどないのは、買収当初の目論見が外れて、親子間のシナジーが見込めなくなったからであろうと合理的に推察される。

そもそも、親子上場は経済学でいう「デッドウェイト・ロス」(死重損失)を生む可能性が高い。グループ内の経営資源の配分を誤れば、独自の資本コストで規律される上場子会社の少数株主の利益はもちろん、上場子会社の価値が毀損されることで、親会社の株主の利益も損なわれ、親子ともに経済的効率性が害される。

実際、鳥居薬品の株価は解散価値である株主資産倍率(PBR)1倍に相当する水準を恒常的に下回っている。現預金、キャッシュマネジメントシステム(CMS)預託金、投資有価証券といった、時価総額に匹敵する額の運用資産を鳥居薬品は抱えており、2023年1月18日時点において、こうした本業に資さない運用資産を除いた企業価値(EV)はマイナスである。これは、プレミアムなしで鳥居薬品を買収した場合、事業がタダで手に入るうえに、お釣りが返ってくる極端な株価水準であり、もはや鳥居薬品は上場企業としての体をなしていないとも言える。

仮に、投資有価証券を含めてEVを計算したとしても、鳥居薬品はEV/EBITDA倍率(EVを利払い前・税引き前・減価償却前利益で割る)が4倍程度と当社の水準にサヤ寄せし、同規模の医薬品会社の約10倍を大きく下回る。こうした大幅にディスカウントされた鳥居薬品の株価指標を鑑みるに、当社が鳥居薬品の価値向上に長期にわたって失敗し、大株主としての責任を果たしていないのは明白である以上、鳥居薬品の非上場化や売却といった戦略的な判断こそが、当社の株主価値向上に資する。

そもそも、当社の主力であるたばこ事業と医薬事業は親和性が低い。国内外の企業、医療関係者、アカデミアとの協業を当社は目指しているが、たばこ事業を主力事業として抱えているがゆえに、創薬やマーケティング活動に制約があるのが実態である。昨年は一部メディアが、当社と鳥居薬品が、講演会講師、執筆活動、コンサルティング業の対価として医療者に支払った謝金を批判的に報じている。

経済産業省が2019年6月28日に策定した「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(グループガイドライン)」では、「グループ全体としての企業価値向上や資本効率性の観点から、上場子会社として維持することが最適なものであるか、定期的に点検する」(同124頁)ことが親会社に求められている。また、親会社が子会社の上場を維持する場合には、「上場子会社として維持することの合理的理由」と「上場子会社のガバナンス体制の実効性確保」を取締役会で審議し、投資家に対して、情報開示を通じて十分な説明責任を果たすことが求められている(同126頁)。

さらに、経済産業省が2020年7月31日に策定した「事業再編実務指針~事業ポートフォリオと組織の変革に向けて~(事業再編ガイドライン)」では、「上場子会社の形態は、構造的に少数株主との利益相反リスクを生じさせるものであり、従来、日本企業の一部で見られたように漫然と上場子会社を維持することは必ずしも望ましくない」、「上場子会社化はあくまでも「過渡的形態」と位置づけた上で、・・・最終的には非子会社化することを目的にしていることや、どの程度の期間で非子会社化するのか等の方針を示すことが望ましい」と指摘されている(同97~98頁)。

以上を踏まえて、当社が鳥居薬品の価値向上に長期にわたって失敗してきた経緯に鑑みれば、当社の取締役会が「上場子会社として維持することの合理的理由」と「上場子会社のガバナンス体制の実効性確保」を真摯に審議してこなかったことや当社が漫然と上場子会社を維持してきたことが疑われるところであるため、当社の取締役会にこれらの審議と情報開示を通じた十分な説明責任を果たすことを義務付けるための定款規定を設けることを提案するものである。

<第5号議案に対する当社取締役会の意見>

当社取締役会は、本議案に反対いたします。

当社は、株式会社東京証券取引所の「有価証券上場規程施行規則」に従い、グループ経営に関する考え方や上場子会社を有する意義について「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」により開示しております。上場子会社に対する当社グループ経営方針を開示することは、上場会社として当然順守すべき所与の責務及び対応であると考えており、今後も資本市場の皆様とのより良い対話に向け、開示の充実については不断の検討を行ってまいる所存です。しかし、完全子会社化や売却に関する個別具体的な内容を、検討段階においても開示する旨を組織の根本規範である定款で一律かつ固定的に定めることは、資本市場に対し不要な憶測を惹起させるなどの危険性も含んでいることから相応しくないと考えております。これらの完全子会社化や売却に関する個別具体的な内容は、株主や投資家の皆様との対話なども踏まえつつ、公表の内容、時期や方法等を含め、取締役会において慎重に検討した上で、お知らせすべき結論に達した段階で、適時、適切な方法によって公表すべきであると考えております。したがいまして、本株主提案に従った定款規定を設けることは適切ではないと判断いたします。

以下、本株主提案において具体的に検討・開示すべきとされている事項を中心に、当社におけるグループ経営に関する考え方や上場子会社を有する意義を改めて述べます。

当社は、経営理念である「4Sモデル」の追求をグループ全体で共有・実践することによって、当社グループの中長期に亘る持続的な利益成長と企業価値の向上を目指しております。当社は、コーポレート・ガバナンスの充実が前述の目標達成に資するとの認識のもと、当社グループに共通する機能・規程等を定義し、グループマネジメントを行うことにより、当社グループの全体最適を図っております。また、コンプライアンス体制(通報体制を含む)、内部監査体制、財務管理体制等について子会社と連携を図り、整備しております。

上場子会社である鳥居薬品については、同社の独立性の確保及び少数株主の利益を適切に保護することが、当社及び同社の企業価値向上にとって必要不可欠であるとの考えのもと、上場企業として適切なガバナンス体制の構築に努めております。当社は意思決定に係る社内規程として全社的な責任権限規程を定めておりますが、同社においては選択的に当該規程を適用し、権限上の自由を与えることで、上場子会社としての独立性を担保しております。また、2020年3月26日の同社株主総会において、取締役の過半数を独立社外取締役で構成する取締役会体制への移行が決議され、独立社外取締役を有効に活用した実効的なガバナンス体制の一層の強化を進めております。

上場子会社を有する意義については、前述したとおり、医薬事業において重要となる優秀な人的資本の確保や信用の獲得等による事業上の競争優位性の向上に加え、資本市場における規律等の子会社の経営上のメリット、株式報酬の活用による人的資本のエンゲージメントの強化等を総合的に勘案し、当社は、上場子会社として鳥居薬品を有しております。

上場子会社の実効性のあるガバナンス体制を確保するための適切な取締役の選解任権限の行使に関する考え方については、これを「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」において一律に記載する旨を定款に定めることは、当社が鳥居薬品の議決権の過半数を有していることから、実質的に同社における独立的な判断を阻害する可能性があると考えております。また、当社及び鳥居薬品を取り巻く先行き不透明な社会・経済状況において、求められる役員像は目指すべき企業像や経営環境に応じて変化し得るものであることを踏まえれば、当社としても株主の立場からその時々で必要となる多様な要素を総合的に考慮して判断すべきものと考えております。この観点からも、かかる判断方針を「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」に一律に記載するという旨を、会社の根本規範である定款において固定的に定めることは相応しくないと考えております。もちろん、当社といたしましても、上場子会社における一般株主の利益に配慮し、上場子会社の実効性あるガバナンスを確保することは当社の重要な責務と考えており、引き続き適切な選解任権限行使のための議論を継続してまいります。

なお、提案理由において、経済産業省の事業再編ガイドラインが引用されております。しかしながら、この引用部分のうち、「上場子会社化はあくまでも『過渡的形態』と位置づけた上で、(中略)最終的には非子会社化することを目的にしていることや、どの程度の期間で非子会社化するのか等の方針を示すことが望ましい」という部分は、事業再編の一環として事業切り出し目的でエクイティ・カーブアウトを実施する際に、一時的に上場子会社状態が生じる場合の指針を述べたものであり、上場子会社を有する親会社一般に対してこのような指針を示す(あるいはこのような行動をとる)ことを求めるものではありません。また、同ガイドラインの「日本企業の一部で見られたように漫然と上場子会社を維持することは必ずしも望ましくない」という部分についても、適切なガバナンス等により親子上場に伴うリスクを低減させ、グループ全体の利益を確保できるのであれば、上場子会社という形態は必ずしも否定されないことを含意していると考えられます。以上のことから、少なくとも提案理由中の当該引用部分は、当該提案の直接的な根拠となるものではないと考えております。