<株主提案>
第7号議案 定款一部変更(上場子会社との間におけるCMSによる資金貸借の禁止)の件

1.議案の要領

当社の定款に以下の章及び条文を新設する。なお、本定時株主総会における他の議案(会社提案にかかる議案を含む。)の可決により、本議案として記載した条文に形式的な調整(条文番号のずれの修正を含むが、これらに限られない。)が必要となる場合は、本議案に係る条文を、必要な調整を行った後の条文に読み替えるものとする。

2.提案の理由

鳥居薬品は、2022年9月30日時点で、141億7100万円もの金額を親会社がグループの資金を集中管理するキャッシュマネジメントシステム(CMS)経由で当社に預託している。米ギリアド・サイエンシズが製造する抗HIV薬品の独占的販売権に関する契約が終了したため、鳥居薬品では2019年に400億円を超える金銭を得て運用資産が膨らんだ。当社グループにおけるCMSの運用状況から判断すると、CMSの存在は、キャピタル・アロケーション(資本の配分)の観点から、この膨大なキャッシュを適切に活用する機会を鳥居薬品から取り上げる役割を果たしており、当社が保有する鳥居薬品株式の価値がPBRやEV/EBITDAなどの株価・財務指標面で大幅にディスカウントされる状態が長期化している実態に鑑みるに、鳥居薬品の株主価値、ひいては鳥居薬品の大株主である当社の株主価値も損なう。

仮に、「医薬事業よりも他のグループ事業の収益性が高いがゆえに、親会社経由で資金を再配分する目的でCMSが存在する」と主張するならば、そもそも、鳥居薬品をはじめとする医療事業を売却の対象とし、その売却資金で他の事業に再投資するべきである。

前述したように、親子上場は経済学でいう死重損失を生む可能性が高い。親会社のみを意識した資本の配分が、独自の資本コストで規律される上場子会社にも適用されれば、上場子会社の少数株主の利益はもちろん、上場子会社の価値が毀損されることで、親会社の株主の利益も損なわれ、親子ともに経済的効率性が害される。

以上のとおり、当社グループにおけるCMSは当社の株主価値を損なっているため、当社と当社の上場子会社との間におけるCMSによる資金貸借を禁じる旨の定款規定を設けることを提案するものである。

<第7号議案に対する当社取締役会の意見>

当社取締役会は、本議案に反対いたします。

CMSは、当社グループ内の各会社で一時的に余剰となっている資金を親会社である当社に集中させ、反対に一時的に資金が不足している会社に回すことにより、グループ全体でより効率の良い資金運用を行う仕組みとして運用しております。

各子会社におけるメリットとして、CMSでは一般の金融機関の預金と比較して、同等以上の水準の利率での利息を設定していることが挙げられます。また、CMSは普通預金と同じく超短期で回収できるものであり、ごく短期的な余剰資金が発生した場合の一時的な保管場所としてCMSを各社にご利用いただいていると認識しております。

一方で、当社は、子会社に対してCMSの利用を強制しておらず、各子会社は、当社が子会社に対して提示する、前述した条件を踏まえて、CMS利用の要否を独自に判断しております。鳥居薬品においては、手数料・資金決済の利便性等を勘案の上、当社グループCMSを通じた資金運用の要否を決定しているものと認識しております。

鳥居薬品における当社グループCMSを通じた資金運用の今後の方向性については、鳥居薬品において、2023年度末までに、資金決済口座としての利用目的のために必要な額までCMSを通じた資金運用額を削減していく方針が示されており、当社としてもこの方針を尊重する考えです。現時点において、その利用を強制せず、各子会社において諸条件を検討した上で任意での利用としている当社グループCMSについて、上場子会社のみに限定してその利用を制限することの合理性は低いものと考えております。

また、このようなグループ全体における資金運用のあり方については、まさに取締役による具体的な業務執行権限の行使として適時に検討・実施されるべきものであるところ、これを定款によって固定的かつ一律に定めることは、会社法における基本的な権限分配の考え方にも抵触し得るものであり、適切ではないと考えております。