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代表取締役社長 曽禰 寛純

過去最高益を更新。

更なる高みを目指し中長期的な視点で成長戦略を加速するとともに、持続的成長を可能にする体制整備を着実に進めていきます。

Q1
azbilグループはどのようなビジョンに向かって進んでいるのですか。

経済発展と社会的課題の解決を両立する未来の社会・産業の実現に向けて、「人を中心とした」の発想のもと最先端のオートメーション技術で貢献するグローバル企業を目指しています。

代表取締役社長 曽禰 寛純

   azbilグループは、オートメーションという技術を1世紀以上にわたって追求してきました。オートメーションは、目標を定め、現状を分析、課題把握に基づく適切な対処を行うことで目標を達成するという基本サイクルを支える基幹技術です。そして、このサイクルに新たな目標や技術が組み込まれることでさらに発展し続ける技術領域です。私たちは、オートメーションを核に据えた事業を展開することでこれまで成長を続けてきました。それも、単に機械を制御するという発想ではなく、「技術の力を使って人々を苦役から解放したい」という創業者の想いを受け継いで、常に人を中心に据えて課題を解決するという発想で技術・サービスを磨き上げてきたところに、azbilグループの独自性があります。
 こうした創業当時のDNAを企業文化としたオートメーションの探求は、やがて快適性・生産性の向上、さらには人の充足感をつくるという企業グループ理念「人を中心としたオートメーション」とそのシンボルであり社名となっている「azbil(automation・zone・builder)」へと進化し、現在の私たちはこれを根幹として経営を実践しています。そして、この「人を中心とした」の発想による経営の展開として、azbilグループの企業価値は、株主の皆様、お客様・取引先、社員・パートナー、社会という様々なステークホルダーの皆様との共創によって形作られているものと認識し、企業の社会的責任(CSR)を広く解釈して、社会に存立するうえで果たさなければならない「基本的CSR」の遂行と、本業等を通じて社会的課題の解決に貢献する「積極的CSR」の遂行の双方で企業価値を捉え、これら両輪を回したバランスのとれたazbilグループ独自の「CSR経営」に取り組んでいます。
 本業である事業面においては、この「人を中心とした」の発想のもと、独自のオートメーション技術を核として、3つの異なる特性を持つ市場セグメントで事業環境リスクの分散を図り、「ビルディングオートメーション(BA)」「アドバンスオートメーション(AA)」「ライフオートメーション(LA)」を展開しています。これらの事業は今、社会的課題の高度化とIoT、ビッグデータ、AIといった技術進歩の潮流の中で、それぞれの領域を着実に広げています。同時にメーカとして高品質な製品を開発・生産するだけでなく、様々なサービスを提供する機会が増えています。
 今、世界ではICT(Information and Communication Technology:情報伝達技術)の発達により、ビッグデータをインターネット等を通じて集約、AIを活用して複雑な判断を伴う作業やサービスの提供を可能にし、様々な社会問題の解決を目指す第4次産業革命等が進行しています。また、日本政府は「第5期科学技術基本計画」(2016年度~2020年度)において、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会「Society 5.0」※1を提唱しました。まさに私たちの将来ビジョンもそこに重ね合わせることができます。すなわち、azbilグループは、世界に先駆けた「超スマート社会」を見据え、最先端の「オートメーション技術・サービス」と「人を中心とした」の発想を組み合わせ、人と技術がより高度に共創する社会づくりに貢献する世界有数の企業グループを目指しています。

※1:Society 5.0
日本政府が「第5期科学技術基本計画」(2016年度~2020年度)で提唱した科学技術政策の基本指針のひとつ。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続き、第4次産業革命によって、新しい価値やサービスが次々と創出され、人々に豊かさをもたらしていく人間中心の社会です。azbilグループは、「人を中心としたオートメーション」の追求を通して、オートメーションの新たな価値を創出・提供することで、このSociety 5.0で目指す社会・産業の実現にも貢献していきます。

Q2
2021年度の長期目標の実現に向けた中期経営計画の取組みの方向性について教えてください。

持続的成長に向けた事業領域の拡大に焦点を当て、攻めの経営を推進しています。

   現在の中期経営計画(2017~2019年度)は、2021年度をゴールとした長期目標、営業利益300億円以上、売上高3,000億円規模、ROE10%以上への第2ステップであるとともに、企業の持続可能性に関わるガバナンス、コンプライアンス、人材育成の変革も積極的に推し進めながら、2020年の東京オリンピック・パラリンピック以降の事業成長と高水準の収益を確保できる事業基盤を構築する3年間と位置付けています。
 具体的には、より攻めの経営に軸足を置き、①技術・製品を基盤にソリューション展開で「顧客・社会の長期パートナー」へ②地域の拡大と質的な転換で「グローバル展開」③体質強化を継続的に実施できる「学習する企業体」を目指す、という3つの基本方針のもと、顧客事業の展開ステージにあわせて価値提供する「ライフサイクル型事業の強化」、モノと情報の融合から生まれるイノベーションに対応した「新オートメーション領域の開拓」、環境負荷低減やエネルギー需要抑制へのソリューション提供による「環境・エネルギー分野の拡大」を三本柱に、新たな製品開発や施策を推進しています。そして最終年度となる2019年度には、営業利益250億円、売上高2,700億円、ROE9%以上を目標としています。

Q3
中期経営計画の初年度である2017年度の業績について説明してください。

堅調な事業環境に加え、利益体質改善の取組みが奏功し、大幅な増益を達成することができました。

   国内の活況な都市再開発投資等を背景に、大型建物向けの機器やシステムの需要が高い水準で推移しており、また、生産設備に対する設備投資も国内外において堅調です。こうした事業環境を背景に、受注拡大に積極的に取り組んだ結果、受注高※2は前年度比4.4%増加の2,662億円となりました。事業セグメント別では、ビルディングオートメーション(BA)事業は、堅調な事業環境の中で、受注高は前年度における大型の複数年契約計上の反動等の影響により、全体として減少となりましたが、アドバンスオートメーション(AA)事業、ライフオートメーション(LA)事業がそれぞれ大きく増加しました。また、売上高については、BA・AA両事業を主体に3つの事業全てで増加し、前年度比2.2%増加の2,603億円となりました。損益面については、増収に加えて前年度からの利益体質改善の取組みがさらに進展したことなどにより、営業利益が前年度比19.3%増加し、計画を上回る240億円を達成し、過去最高益を計上することができました。経常利益についても、営業利益の改善を主因に、前年度比18.8%増加の243億円となりました。なお、親会社株主に帰属する当期純利益については、営業利益の増加及び投資有価証券売却益の計上に加えて、関係会社整理損の減少、子会社の繰延税金資産の回収可能性の見直し等による税金費用の減少もあり、前年度比36.0%と大幅に増加し、178億円を計上しました。これにより2017年度のROEは10.5%となり、投資有価証券売却益や子会社の税金費用の減少による一時的な影響を除いても約9.5%と、着実に改善しました。

※2:受注高
当年度より受注残高の評価替えによる為替換算差額等を除いた受注高の記載に変更しています。

Q4
2017年度の業績は計画を上回る成果を上げましたが、目標や事業施策に変更はありますか。

中期経営計画の数値目標は据え置き、持続的成長に必要な取組みを加速していきます。

   2017年度の業績は、事業構造・業務構造改革の成果と堅調な事業環境が重なり合ったことによるものと捉えています。足元では東京オリンピック・パラリンピックを控え、再開発やインフラ整備が進められていることに加え、人手不足を背景とした合理化・省力化に向けた投資意欲も高まり、事業環境は堅調な状況を維持しています。こうした事業環境が継続すれば、現中期経営計画策定時の想定を上回る業績伸長の可能性も高まってくると思われます。しかしながら、現中期経営計画最終年度である2019年度、さらに長期目標である2021年度を展望しますと、国内では少子高齢化・人口減少による市場縮小が見込まれ、グローバルな経済環境も米中の貿易摩擦問題など不安定要素を抱えています。設備投資も、特に国内の需要は限定的でその継続性も楽観視できる状況ではなく不透明です。
 したがって、改革の取組みは相当程度進捗したという認識ですが、現時点では2019年度の業績目標を据え置き、一層の収益体質の強化、事業領域拡大に向けた取組みを加速することで、事業環境に変化があった場合でも迅速、的確に対応できる備えを進めるとともに、2021年度の目標とそれ以降の持続的成長も視野に入れた事業基盤の強化に向け、必要な投資を積極的に行っていきます。

Q5
各セグメントにおける施策の進捗状況を教えてください。

各種の取組みは前倒しで進捗し、LA事業の収益構造も安定しつつあります。

ビルディングオートメーション(BA)事業
~好採算の既設案件も着実に確保~

   BA事業においては、効率的に業務を遂行できる体制を整備・強化して、東京オリンピック・パラリンピックに向けて継続して見込まれる高水準の新設建物案件への対応を着実に進めています。これらの案件は今後、サービスや既設建物の改修といったライフサイクルでの事業機会につながっていきます。新設建物案件については、オリンピック前の再開発ラッシュや人手不足の状況を避け、需要が平準化される傾向にあり、一時心配されたようなオリンピック後の需要の大きな落ち込みはないと思われます。これに加えて、2020年以降には、既設建物の改修需要の拡大が見込まれています。新設建物案件への対応を着実に行いながら、拡大が予想される既設建物の改修需要獲得に向けた提案も積極的に行っています。採算の良いこれら既設建物改修案件の増加は、今後の収益性向上に寄与することになります。このほか、2017年度においては、IoT等の技術動向を捉え、オープンネットワーク化を強化するなど、顧客ニーズにライフサイクルで応えることのできるビルディングオートメーションシステムの投入等を行い、グローバル展開におきましても、アジア諸国でのランドマーク物件等で着実に実績を積み上げることができました。

アドバンスオートメーション(AA)事業
~計画を上回る収益改善を実現~

   AA事業においては、3つの事業単位※3でのオペレーションを徹底し、マーケティングから開発、生産、販売・サービスに至る一貫体制で上流からきめ細かくニーズを捉え、収益性改善に向けた取組みと海外を含めた成長市場での事業拡大に注力しております。国内の石油・化学業界のような市場では、メンテナンスや機器のリプレース等の安定需要で採算性向上を図る一方、IoT、ビッグデータ等を活用したスマート保安等の新領域の開拓を進めています。また、国内外で半導体、FPD(フラットパネルディスプレイ)、二次電池に代表される最先端の成長市場に向け、高精度位置計測センサをはじめ、多様な生産工程でのオートメーションをサポートする製品を投入しています。この結果、2017年度においては計画を上回る収益改善を実現しました。引き続き収益改善を進展させるとともに、半導体製造装置分野、高機能素材生産関連分野、燃焼関連装置分野等のazbilグループが強みを活かすことができる領域に人員を含めた経営資源を集中的に投入し、高付加価値事業の拡大を加速させていきます。

※3:3つの事業単位(管理会計上のサブセグメント)

  • CP事業 :コントロールプロダクト事業(コントローラやセンサ等のファクトリーオートメーション向けプロダクト事業)
  • IAP事業:インダストリアルオートメーションプロダクト事業(差圧・圧力発信器やコントロールバルブ等のプロセスオートメーション向けプロダクト事業)
  • SS事業 :ソリューション&サービス事業(制御システム、エンジニアリングサービス、メンテナンスサービス、省エネソリューションサービス等を提供する事業)

ライフオートメーション(LA)事業
~安定した収益構造の構築が進展~

   LA事業においても、事業構造改革及び事業基盤整備の成果が顕在化し、安定した収益構造が確立しつつあります。加えて、ガス自由化の進展やIoT等の技術革新を捉えた新たな領域の開拓・深耕も進展させています。例えば、LPWA※4ネットワーク対応の通信モジュールを内蔵した新型LPガスメータを開発し、検針値の遠隔計測の実証事業に参画しています。また、ライフサイエンスエンジニアリング(LSE)分野では、医薬品製造の安全性・生産性向上に貢献する「凍結乾燥装置向け自動搬送システム」を開発しました。LA事業では引き続き、同事業を構成する各分野の収益の安定化・向上に取り組むとともに、セグメントの枠を超えたグループシナジーを発揮し、ガス等のエネルギー供給市場での事業機会創出やグローバルな製薬市場の変化に対応する新製品・新サービスの開発を推進していきます。

※4:LPWA
Low Power Wide Areaの略。従来よりも圧倒的に少ない電力で長距離通信が可能になる無線通信技術で、IoTでの活用が期待されています。

Q6
海外の設備投資も堅調ですが、成長領域とするグローバル展開の状況はいかがですか。

ソリューションを主体としたazbilグループならではの事業モデル展開を推進し、海外でのブランド力向上を目指しています。

   経済のグローバル化が進展する中、azbilグループは海外市場を成長領域と捉え、基本方針の1つに掲げ一層の基盤構築に取り組んできました。現在、海外での事業拡大に向けて、更なる販売・サービス網の強化や調達・生産体制の拡充を進めています。
 その過程において、戦略の一部見直しが必要となった地域、事業もありましたが、こうした経験を通じて様々な知見を蓄積することができ、新たな施策を展開することもできました。現在、海外の事業は、先行投資の段階から利益を計上できる段階に入っており、一定の進捗を見ることができました。
 現状のグローバル展開において、もう一段の伸長への課題は、実績の積み重ねと、これに裏打ちされた顧客との信頼関係の構築・ブランド力の向上です。そこでBA事業では、各国で中核的な建物、商業施設や空港等の案件獲得に注力し、先進技術を融合させた高度な環境制御を実現する最新鋭のビルディングオートメーションシステムをタイ、シンガポール等の海外市場に、国内に先駆けて投入しました。こうした取組みにより、建物のライフサイクルの各ステージで快適性や省エネを提供する日本発の事業モデルが、徐々にアジア諸国で認知され実績として積み上がっています。また、アドバンスオートメーション(AA)事業においても、azbilグループならではの高度なセンシング・解析技術、AI等を活用したバルブのリモートメンテナンス、異常予兆検知システム等の「スマート保安」や、高機能フィルム等の様々な加工・組立の製造工程で、対象物の位置、厚み、幅などを計測する「位置計測センサ」等が国内同様海外でも高い評価を受けています。化学等のプロセスオートメーション関連市場や、半導体製造装置、二次電池製造装置等のファクトリーオートメーション関連市場における特徴ある分野で、azbilグループが提供するソリューションへの引き合いが増加しています。
 グローバルで世界最先端の快適環境の創造・生産の実現を目指すお客様からの厳しい要求にお応えする中で培った深い信頼関係とともに、高度な技術やサービス提供を通じたライフサイクルにわたる深い事業展開が、私たちにとって最大の財産です。そこから生まれた製品・アプリケーション、そしてこれにサービスも加えたソリューションこそが、azbilグループならではの独自性と競争力の源泉となっています。
 グローバル展開の加速に関しては、このほか、事業横断的な企画・戦略・管理機能を担う「東南アジア戦略企画推進室」をシンガポールに開設しました。今後は、海外市場でも顧客設備のライフサイクルでソリューションを提供する人材の育成も含め各国での体制強化を一層進めるとともに、製品、販売・サービス網等で強みを持つ国内外企業とのパートナーシップの構築をM&Aも含めて積極的に行い、海外市場においてもazbilグループの特長を活かした事業モデル、領域の開拓を進め事業を拡大していきます。

Q7
持続的成長に向けた全社的な経営基盤については、どのように強化していく計画ですか。

グループガバナンスの継続的強化に加え、生産面、研究開発面でも新たな取組みを進めています。また、個々人が能力を発揮しやすい環境を整備しています。

   一つ目は生産体制の再編です。国内生産拠点において、湘南工場と伊勢原工場の生産機能を、湘南工場に集約・機能統合し、湘南工場をカスタマイズ生産等の高付加価値生産に対応し、かつ国内外グループのモノづくり全体の競争力の向上をリードするazbilグループのマザー工場と位置付け、高い技術力、高度な生産ラインを保有する先進の次世代生産工場へと進化させます。併せて、藤沢テクノセンターの施設、設備に対する投資を行い、最先端の重要技術に挑戦しazbilグループならではの生産技術面での一層の強化を図ります。また、海外では、タイ工場に新工場棟を建設いたしました。これによりASEAN他近隣アジアへの製品供給を拡大していきます。
 二つ目は、IoTやAIを用いた産業全般にわたる革新ニーズへの対応力強化です。「ITソリューション本部」を設立し、これら先端技術に特化した製品・サービスの開発を加速する体制を整えました。また、人と機械の共創に着目し、ロボティクスと独自の先端デバイスの融合による新しい生産のあり方を追求した次世代スマートロボットの開発も進めています。
 三つ目はグループガバナンスの強化です。事業と業務の拡大のための人材と手法の整備を行い、その標準手法をグローバルに展開できる基幹情報システムを国内外グループ会社に順次導入していきます。グローバル展開の加速に伴って喫緊の課題である事業活動の一元管理を可能にします。
 最後は、技術革新と市場の変化により生じる労働の質の転換に柔軟に対応できる人材面での強化です。市場環境及びIoT等の技術動向に対応した事業プロセスの見直しや、働き方改革をはじめとした業務構造の改革を迅速に進めることができるように、全社員を対象に一貫したコンセプトに基づき、継続的な価値創造を支える人材づくりとその能力発揮に対応・評価することのできる人事制度の改定を進めています。

Q8
資本政策について教えてください。

2017年度に引き続き、2018年度においても大幅な増配を予定し、自己株式の取得も行います。

   azbilグループは株主価値の増大を図るため、株主還元の充実、成長に向けた投資、健全な財務基盤の3つのバランスに配慮しながら、長期目標としてのROE10%以上を目指して、規律ある資本政策を展開しています。
 経営の重要課題と位置付ける株主還元については、連結業績、ROE(自己資本当期純利益率)、DOE(純資産配当率)の水準及び将来の事業展開と企業体質強化のための内部留保等を総合的に勘案し、配当を中心に自己株式取得を機動的に組み入れた還元を行っていきます。特に配当については、その水準向上に努めつつ、安定した配当を維持していくことを目指しています。
 以上の方針に基づき、2017年度における株主の皆様への還元として、すでに実施した71万株(約30億円)の自己株式取得に加え、配当については、堅調な業績を背景に、昨年5月に公表のとおり、中間配当と合わせて1株当たりの年間配当を82円とさせていただくことを計画しております。また、2018年度においては、事業環境及び事業構造改革、収益体質強化の成果により、引き続き事業活動における増益を計画し、中期経営計画のもと、持続的な成長を展望することから、株主の皆様に一層の利益還元を進め、普通配当を10円増配し、1株当たり年間92円の配当とさせていただく予定です。これに加え資本効率の向上を図るとともに、業績の状況・見通しを反映して、一層の利益還元と企業環境の変化に対応した機動的な資本政策の遂行を可能とするため、取得株数100万株又は取得金額50億円を上限とする自己株式の取得(取得期間:2018年5月14日~7月31日)を決議しました。
 なお、持続的成長の実現や経営体制強化に向けた投資については、内部留保も含めた資本の活用を通じて、更なる株主価値の増大に向けた運営を行っていきます。具体的には、成長に向けた商品・サービスの拡充、先進的なグローバル生産・開発の構造改革など、事業基盤の強化・拡充に注力するとともに、M&Aといった将来の成長投資を進めていきます。また、併せて大規模な自然災害の発生等、不測の事態でも事業を継続し、供給責任を果たすことのできる健全な財務基盤の維持にも引き続き取り組んでいきます。

Q9
コーポレート・ガバナンスの強化についてはどのような取組みを行っていますか。

社外取締役の増員により監督機能の強化、多様性の拡大を実現し、相談役・顧問制度を廃止することにより更なる経営の透明性を追求します。

   azbilグループは、株主・投資家の皆様からご評価いただける安定した高収益体質づくりを進めながら、従来からコーポレート・ガバナンスの強化を重点課題として取り組んできました。その一環として、社外取締役が過半数を占める「指名・報酬委員会」の審議を経て、2017年度は、社内取締役の報酬制度を、長期目標と中期経営計画の達成度と連動する成果重視の体系へと見直しました。さらに本年においては、独立社外取締役を現在の3名から1名増員し4名として、取締役会における社外取締役の構成比率を1/3超に引き上げます。これにより、経営への監督機能が強化されるとともに、専門性や経験・知識等のバックグラウンドだけでなく国籍・性別の面でも多様性が進むこととなり、今後の会社の持続的成長と企業価値向上に向けて様々な貴重な意見が頂戴できるものと期待しています。また、これに加えて、社長の諮問に応ずることを目的とした相談役・顧問については設置する必要性が認められなくなったことから、定款を変更し制度自体を廃止することを取締役会にて決議しました。今後とも、このように経営の透明性を高め、さらにコーポレート・ガバナンスを強化したいと考えます。
 さらには今般のコーポレートガバナンス・コード改訂の趣旨も踏まえて、政策保有株式縮減の方針や経営陣幹部の選解任等についても、客観性・透明性の確保に継続的に取り組み、また、コーポレートコミュニケーション担当役員を主体に株主・投資家の皆様をはじめとするステークホルダーの皆様との適時・適切な「対話」の充実にも努め、これらを通じて持続的な成長と中長期的な企業価値向上に結びつくコーポレート・ガバナンスの強化を進めていきます。

Q10
資本市場でのESG評価の動きにはどのように対応していますか。

azbilグループならではの「CSR経営」を実践しています。その結果、ESG※5関連インデックスの採用銘柄となっています。

   すでに申し上げたとおり、azbilグループは、「CSR=社会的責任」を超えて広く解釈したグループ独自の「CSR経営」の考え方に基づく諸施策を実践しており、2017年には、社会的責任投資(SRI)の指標である「FTSE4Good Global Index」の対象銘柄に、当社が11年連続で選出されています。また、世界最大規模の年金運用機関である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が新たに選定した3つのESG指数※6の構成銘柄にも採用されています。
 このように当社が各種ESG関連インデックスの採用銘柄となっていることは、独自の「CSR経営」がESGに通じる継続的な取組みとして評価されてのことと考えています。
 昨今注目されている、国連で採択されたSDGs(Sustainable Development Goals-持続可能な開発目標)についても、創業以来、「人を中心とした」の発想と、積極的に地球環境問題を含め社会の課題に取り組んできた当社にとっては、親和性の高い目標であると認識しています。
 資本市場でのESG重視の動きに対応して小手先の取組みをするのではなく、グループ理念である「人を中心としたオートメーション」のもと、本業を通じて社会のお役に立つことがESGの考え方にもSDGsにもつながるものと考え、これからもCSR経営を誠実に実践している姿をしっかりと示すことで、azbilグループの成長性とその持続可能性をご評価いただき、結果としてESG関連インデックスに採用され続けることを目指していきます。

※5:ESG(環境・社会・ガバナンス)
企業が持続的に成長できるか否かを判断する指標として用いられる、Environment(環境) Social(社会)、Governance(ガバナンス)の3要素の総称。投資における指標として参照される。

※6:3つのESG指数
FTSE Blossom Japan Index、MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数、MSCI日本株女性活躍指数(WIN)

Q11
2018年度の業績見通しについて教えてください。

事業施策と利益体質改善をさらに推し進めることで、最高益更新を目指します。

   中期経営計画初年度にあたる2017年度は、堅調な事業環境を背景に、事業施策及び利益体質改善の取組みが大きく進展したことで計画を上回る業績を上げることができました。2018年度につきましても、国内外の堅調な事業環境は持続することが見込まれています。こうした事業環境見通しを前提に、前年度に着実な成果を収めたこれら事業施策、利益体質改善への取組みを一層強化しつつ、将来の持続的成長を可能とするための研究開発や生産体制の強化・拡充等、事業基盤整備に向けた前向きな投資を行いながらも、営業利益は260億円(前年度比8.2%増)、売上高で2,670億円(前年度比2.5%増)を計画し、2017年度に引き続き最高益の更新を目指していきます。

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