事業報告(平成29年4月1日から平成30年3月31日まで)

当社グループの事業活動の状況

 当社グループは、グループの企業価値の向上を目指し、証券業を中核とした事業活動を行っております。当社グループの当期(平成29年度)の事業の概況は以下のとおりであります。

(注)本事業報告において、「当社グループ」とは、当社及びその関係会社から成る企業集団を指します。

経済・市場環境と当社グループの事業活動の成果

経済・市場環境

 当期のわが国の経済は、内需を中心に緩やかな回復基調が続きました。失業率が一段と低下した他、賃金も緩やかに増加するなど、雇用・所得環境の改善が続きました。もっとも、天候不順による生鮮食品の高騰や原油価格の上昇、人手不足などに伴うコスト増などを受けて、消費者物価の上昇率は高止まり、個人消費は緩やかな回復に留まりました。住宅投資は、日本銀行の緩和的な金融政策によって、住宅ローン金利が低位で推移したことが下支え要因となったものの、貸家建設を中心に減速感が強まりました。一方、企業の設備投資については、高水準の企業収益と労働需給の逼迫を背景に、人手不足に対応した合理化・省人化投資や、競争力を維持するための設備の更新、研究開発投資などが増加しました。もっとも、企業は支出全般に慎重な姿勢を崩しておらず、設備投資の水準は、キャッシュ・フローを大きく下回り、減価償却費を一定程度上回る水準に留まりました。外需に目を向けると、アジア向けの輸出が持ち直したほか、米国やEU(欧州連合)向けは概ね横ばいとなるなど、輸出は総じて堅調に推移しました。また、輸入は持ち直しの動きが見られました。このように、堅調な内需に加えて世界経済の拡大を背景として、企業の生産活動は、輸送機械やはん用・生産用・業務用機械などを中心に、緩やかな拡大基調を辿りました。
 株式市場においては、海外の動向に左右される展開となりました。当期前半は、地政学リスクの高まりを受けて株価が下落する場面も見られましたが、概ね横ばいで推移しました。その後、年末にかけては、世界経済の拡大や米国の税制改革法案の成立を背景に、企業業績が向上するとの期待から、株価は上昇基調を辿り、平成30年1月には日経平均株価は約26年ぶりに24,000円台を回復しました。もっとも、2月に入ると、FRB(米国連邦準備制度理事会)が利上げペースを加速させるという見方が強まり、長期金利が急上昇したことから米国の株式相場が急落し、世界的な株安につながりました。さらに、3月にかけては、米国の保護主義的な通商政策をきっかけに、米中の貿易摩擦激化への警戒感が強まり、相場の重しとなった結果、当期末の日経平均株価は21,454円30銭となりました。
 債券市場では、米国市場金利の上昇を受けて、日本の国債利回りが上昇する局面もありましたが、日本銀行が、長期金利をゼロ%程度で推移させるよう金融政策を継続したことから、10年国債利回りは、年度を通じて、0.0~0.1%という狭いレンジで推移しました。この結果、当期末の10年国債利回りは0.043%となりました。

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事業区分別の概況

企業集団の事業区分別売上状況は次のとおりであります。

当社グループの事業活動の成果

各セグメントの実績

①リテール部門

 大和証券株式会社では、営業員が付加価値の高い提案型サービスを提供する「ダイワ・コンサルティング」コースと、インターネットやコンタクトセンターを中心に利便性の高いサービスを提供する「ダイワ・ダイレクト」コースの2つのお取引コースを通じて、お客様の多様化するご要望に対応した幅広い商品・サービスを提供しています。
 当期は、「クオリティNo.1」の実現に向け、お客様目線をより重視した営業体制の構築に取り組むとともに、お客様満足度を踏まえた営業店の評価制度の拡充などに取り組みました。また、資産形成層からシニア層まで、幅広いお客様のライフステージに沿ったニーズに対応するための商品・サービスの拡充に注力しました。
 平成28年10月及び平成29年1月にそれぞれ取扱いを開始した「ダイワファンドラップ プレミアム」、「ダイワファンドラップ オンライン」に加えて、投資環境の変化に応じてより機動的に一任でポートフォリオを変更できる「ダイワアドバンスラップ」の取扱いを平成30年3月に開始しました。
 さらに、お客様のご要望に合わせて相続手続のお手伝いをさせていただく相続サポートを一層強化するため、高度な相続関連ノウハウを習得した「相続コンサルタント」の配置を進め、配置店は当期末に87店舗、平成30年4月には100店舗に拡大しました。
 また、大和証券株式会社は、株式会社大和ネクスト銀行(当期末の預金残高:約3.5兆円)の銀行代理業者として、円預金及び外貨預金を取扱い、全国の店舗網を通じて、好金利の預金と利便性の高いサービスを幅広いお客様に提供しています。
 上記に加え、資産形成分野における新たな取り組みとしては、KDDI株式会社と資本業務提携を行い、平成30年2月に合弁会社であるKDDIアセットマネジメント株式会社を発足させ、個人型確定拠出年金「iDeCo」等のサービス開始に向けた準備を行いました。

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②ホールセール部門

 ホールセール部門は、グローバル・マーケッツとグローバル・インベストメント・バンキングで構成されています。
 グローバル・マーケッツでは、主に機関投資家や事業法人を対象とした株式、債券・為替及びそれらの金融派生商品のセールス及びトレーディング、並びにリテール部門への商品供給、販売サポートを行っています。当期は、世界的に株式市場が好調に推移し、株価水準が大幅に上昇したことで、前期に引き続き、株式関連ビジネスを中心として収益は堅調に推移しました。特に、リテール部門とホールセール部門との連携により、お客様のニーズや市場環境の変化に対応した商品のタイムリーな提供が、安定的に収益に貢献しました。
 グローバル・インベストメント・バンキングでは、有価証券の引受業務及びM&Aアドバイザリー業務などを行っています。
 引受業務のうち国内では、日本郵政株式会社やルネサスエレクトロニクス株式会社の株式の売出し、SGホールディングス株式会社のIPO(注)、出光興産株式会社及び大和ハウスリート投資法人の公募増資などにおいて、ジョイント・グローバル・コーディネーターを務めました。また、海外では、株式会社国際協力銀行のベンチマーク債発行の主幹事を務めました。
 M&Aアドバイザリー業務では、投資ファンドのMBKパートナーズによる黒田電気株式会社の買収案件において、大和証券株式会社がMBKパートナーズのアドバイザーを務めました。また、大和証券株式会社とDaiwa Corporate Advisory Limitedが協働し、投資ファンドのCinvenによる英国のITサービス企業Northgate Public Services Limitedの日本電気株式会社への売却に際し、Cinvenのアドバイザーを務めるなど、当社グループ各社の連携により多くのM&A案件に関与しました。
 さらに、グローバル、特に北米におけるM&Aアドバイザリー事業強化のため、業務提携・出資先であったSagent Holdings, Inc.を100%子会社化し、新たにSignal Hill Holdings LLCを買収の上、両社を統合し当社グループ100%子会社のDCS Advisory Holdings Inc.を発足させました。

(注)IPO(Initial Public Offering):新規株式公開を実施するときに株式の公募・売出しを行うこと

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③アセット・マネジメント部門

 大和証券投資信託委託株式会社及び大和住銀投信投資顧問株式会社は、幅広い販売チャネルを通じた商品の提供や運用力の強化により、運用資産額の拡大に取り組みました。
 大和証券投資信託委託株式会社では、「ロボット・テクノロジー関連株ファンド」の販売が好調で2,488億円の資金増加となったほか、テクノロジーの進展に伴い拡大が想定されるIoT(注1)に着目し新規設定した「ダイワ・グローバルIoT関連株ファンド」が1,466億円の資金増加となりました。また、上場投資信託への資金流入を主因として、公募株式投資信託全体で当期の資金増加額は1兆4,118億円、当期末の純資産残高は14兆1,235億円となりました。
 大和住銀投信投資顧問株式会社では、国内外の年金基金等を対象とする投資顧問業務において運用能力の向上に努めました。また、投資信託業務では、長期成長分野をテーマとした「グローバルEV関連株ファンド」が1,547億円の資金増加となり、純資産残高の拡大に貢献しました。
 不動産アセット・マネジメント分野では、大和リアル・エステート・アセット・マネジメント株式会社及び株式会社ミカサ・アセット・マネジメントが運用する投資法人において、新規物件の取得や資産の入替によるポートフォリオ利回りの向上、既存物件の価値向上に努め、両社の当期末の運用資産規模は8,220億円となっています。
 また、平成30年2月に、サムティアセットマネジメント株式会社(上場REIT(注2)であるサムティ・レジデンシャル投資法人の運用会社)の株式33%を取得し、持分法適用関連会社としました。

(注1)
IoT(Internet of Things):物同士がインターネット経由で連携・動作すること

(注2)
REIT(Real Estate Investment Trust):不動産投資信託

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④投資部門

 大和企業投資株式会社は、国内外の様々なステージのベンチャー企業への投資を実行するとともに、投資先の上場などにより既存投資案件の回収を進めました。
 大和PIパートナーズ株式会社は、不動産ローンなど債権投資対象を拡大するとともに、企業向け投融資や再生可能エネルギー事業に対する投資を実行しました。また、不良債権投資や企業投資などの既存投資案件の回収を進め収益に貢献しました。
 大和証券エスエムビーシープリンシパル・インベストメンツ株式会社では、不動産投資案件の回収を進めました。

⑤その他

 当社は、最先端のテクノロジーを活用した金融サービスをデジタル・ネイティブ世代(注)に提供することを目的として子会社を新設することを決定し、平成30年4月2日付でFintertech株式会社を発足させました。
 また、株式会社大和総研及び株式会社大和総研ビジネス・イノベーションは、東京大学と連携した「未来金融フォーラム」を発足し、また、AI(人工知能)による株価予測モデルを用いて選定した国内株式に関する情報の提供を開始しました。さらに、地域別の景況感をAIで算出した「大和地域AI(地域愛)インデックス」の開発・公表など、先端技術の調査・研究とその活用に積極的に取り組みました。

(注)子供の頃からパソコンやインターネットに親しんでいる世代

[CSR(注1)]

 当社グループは、金融機能を活用して持続可能な社会の形成に貢献する取り組みとして、新たに執行役社長を委員長とする「SDGs(注2)推進委員会」を平成30年2月に発足させました。委員会では、外部有識者を交え、グループ横断的な対応を検討します。
 また、子供の貧困問題に取り組むNPO団体などへの支援を行うプロジェクトとして、「大和証券グループ 夢に向かって!こどもスマイルプロジェクト」を開始しました。
 一方、当期も引き続き、インパクト・インベストメント(注3)商品の提供に積極的に取り組み、気候変動の緩和と適応に関連するプロジェクトを支援する「グリーンボンド」などの引受け・販売を手がけました。
 また、東日本大震災の被災地への継続的な支援として、当期は、現地NPO9団体への助成を決定いたしました。
 さらに、経済・金融教育の支援も継続して行っており、小学校高学年以上を対象とした金融教育テキスト「『株式』について知ろう」を現場の教職員と協働して制作し、およそ2,200人の小学生が、このテキストを利用した授業を受けました。

(注1)
CSR(Corporate Social Responsibility):企業の社会的責任

(注2)
SDGs(Sustainable Development Goals):持続可能な開発目標。平成27年の国連サミットで採択された17の目標

(注3)
経済的な利益を生むだけでなく、貧困や環境問題などの社会的課題の解決に資金の用途を限定する投資

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連結業績の概況

 当期の連結決算は以下のとおりとなりました。当期の連結子会社は59社であり、持分法適用の関連会社は10社であります。
 当社の連結計算書類は、「会社計算規則」(平成18年法務省令第13号)並びに同規則第118条の規定に基づき、当社グループの主たる事業である有価証券関連業を営む会社の貸借対照表及び損益計算書に適用される「金融商品取引業等に関する内閣府令」(平成19年内閣府令第52号)及び「有価証券関連業経理の統一に関する規則」(昭和49年11月14日付日本証券業協会自主規制規則)に準拠して作成しております。

(1)当社グループの損益の状況

 当期の連結の営業収益は前期比15.6%増の7,126億円、純営業収益は同6.9%増の5,053億円となりました。販売費・一般管理費は同4.7%増の3,702億円となり、経常利益は同14.8%増の1,556億円となりました。これに特別損益、法人税等及び非支配株主に帰属する当期純利益を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は同6.3%増の1,105億円となりました。
 各セグメントの業績は、次のとおりであります。

[リテール部門]

 お客様目線をより重視した営業推進体制のもと、ニーズにマッチした提案により、外国株式の売買代金が拡大したことや、株式投資信託の販売額が増加したことなどにより、純営業収益は前期比13.9%増の2,142億円、経常利益は同74.7%増の513億円となりました。

[ホールセール部門]

 エクイティ引受やM&Aアドバイザリーなど投資銀行業務収益が前期に比べ増加した一方、債券トレーディング収益が低調に推移したことなどから、純営業収益は同6.4%減の1,711億円、経常利益は同30.7%減の453億円となりました。

[アセット・マネジメント部門]

 マーケットが堅調に推移したことや資金増加を伴う公募株式投資信託の運用資産残高の拡大などにより、純営業収益は同6.4%増の493億円、経常利益は同9.6%増の291億円となりました。

[投資部門]

 投資案件の回収により、純営業収益は同74.1%増の274億円、経常利益は同87.9%増の244億円となりました。

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(2)当社グループの資産・負債・純資産の状況

 当期末の資産合計は、現金・預金が前期末に比べ1,343億円、有価証券が同7,549億円減少した一方で、トレーディング商品が同1,208億円、営業貸付金が同7,872億円、有価証券担保貸付金が同1兆1,912億円増加したことなどから、同1兆3,144億円増加し、21兆1,417億円となりました。
 当期末の負債合計は、有価証券担保借入金が同2,429億円、1年内償還予定の社債が同167億円減少した一方で、銀行業における預金が同4,027億円、短期借入金が同1,728億円、長期借入金が同1,485億円増加したことなどにより、同1兆2,873億円増加し、19兆7,712億円となりました。
 純資産の部は、自己株式の控除額が同415億円増加したほか、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことから利益剰余金が同674億円増加したことなどにより、純資産合計は同270億円増加して1兆3,705億円となり、1株当たり純資産額は786円56銭となりました。

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(3)当社グループの設備投資の状況

 当社グループでは、幅広いニーズに対応する商品・サービスの提供によるお客様満足度の向上、営業の効率化による収益力の強化、事業継続に不可欠なインフラ基盤の整備や法制度への対応、リスク管理体制の強化などを目的とする設備投資を行っております。
 当期は、つみたてNISAやファンドラップ、オンラインサービスの拡充などの投資を行いました。また、音声認識やAI(人工知能)、RPA(注)などの技術を活用した生産性向上に対する取り組みを進めたほか、お客様に安心してお取引いただけるよう、お届出いただいたマイナンバーの管理やサイバーセキュリティ対策のさらなる強化などを行い、総額約333億円のIT関連投資を行いました。
 また、店舗に関しては、大和証券株式会社が香里園営業所、センター南営業所、ひばりヶ丘営業所、阿佐ヶ谷営業所、向ヶ丘遊園営業所、大津営業所、前橋営業所及びときわ台営業所を新設しました。

(注)RPA(Robotic Process Automation):AI等の技術を活用することにより、オフィス業務などを自動化する技術・仕組みのこと

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(4)当社グループの資金調達の状況

 当社は、海外市場において米ドル建て普通社債10億米ドル(平成29年4月19日払込)を発行しました。また、第30回無担保社債250億円(平成29年8月28日払込)及び第31回無担保社債150億円(平成29年8月28日払込)を発行しました。

連結計算書類

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