事業報告(2016年4月1日から2017年3月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

事業の経過及びその成果

IFRSの適用

 当社グループは、グローバルにビジネスを展開する上で、財務情報の国際的な比較可能性の向上を通じ、ステークホルダーの皆さまにより有用性の高い情報を提供することを目的として、第32期より、従来の日本基準に代えて国際財務報告基準(IFRS)を適用しています。

全般の状況

業界動向と当社の状況

 日本の情報通信市場は、携帯電話からスマートフォンやタブレット等の「スマートデバイス」への移行が進む中、携帯電話事業者が提供するサービス等の同質化やMVNO※1各社による格安SIM※2サービス等の普及が進んでいます。また、通信事業者は新たな収益の確保に向けて通信以外のサービスへ事業領域を拡大しており、各社の事業戦略は異業種との競争も見据えた大きな転換期にあります。さらに、総務省による「スマートフォンの料金負担の軽減及び端末販売の適正化に関する取組方針」を踏まえたガイドラインの施行等の制度面の変化、IoT※3や人工知能(AI)等のテクノロジーの発展もあり、情報通信市場全般の事業環境は新たな局面を迎えています。
 このような状況の下、当社は、お客さまにお選びいただける企業となるため、「お客さま視点」と「革新」をキーワードに、お客さまの期待を超える「お客さま体験価値を提供するビジネスへの変革」を目指しています。
 国内では、非通信領域において成長軸を確立するために、通信企業からライフデザイン企業への変革を目指しています。従来の通信サービスに加え、コンテンツ・決済・物販・エネルギー・金融サービス等を「ライフデザイン」として総合的に提供することで、auのお客さま基盤上に非通信領域での新たな経済圏である「au経済圏」を最大化していきます。本年1月には、株式会社ディー・エヌ・エー(以下 DeNA)との協業で運営してきた「auショッピングモール」と、DeNAが運営してきた「DeNAショッピング」を統合し、新ブランド「Wowma!」として提供を開始しました。
 通信領域においては、スマートフォン・タブレットの普及やIoTに対する取り組みの強化、様々なデバイスの連携による新たな体験価値の創造等への取り組みを本格的に推進することで、「au通信ARPA(Average Revenue Per Account)※4」と「付加価値ARPA」の拡大を図り、「auのお客さま数×総合ARPA※5」を最大化していきます。また、UQコミュニケーションズ株式会社や株式会社ジュピターテレコム、本年1月に完全子会社化したビッグローブ株式会社においてMVNO事業を推進しており、今後はau+MVNOベースでの「モバイルID数」の拡大を図っていきます。
 海外では、連結子会社のKDDI Summit Global Myanmar Co., Ltd.がミャンマー国営郵便・電気通信事業体(MPT)と共同で行っているミャンマー通信事業を当社のグローバル事業における柱となるように注力していくとともに、昨年3月に連結子会社化したモンゴル国内携帯電話契約者シェアNo.1の総合通信事業者MobiCom Corporation LLCは、昨年5月の4G LTE導入を契機に、さらなる成長を目指しています。また、新興国での事業に加え、データセンターをはじめとした法人向けICTビジネスにおいても、継続して基盤強化を行い、グローバル事業の拡大を図っています。
 その他、新たな取り組みとして、世界初のロボット月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」に挑戦する日本初の民間月面探査チーム「HAKUTO」とのオフィシャルパートナー契約の締結や、公益財団法人日本サッカー協会とサッカー日本代表チームのサポーティングカンパニー契約を締結しました。
 また、本年4月に、当社は「CM好感度No.1」企業として、CM総合研究所が発表した「ベスト・アドバタイザー」に、2014年度より3年連続で選出されました。

  • ※1 Mobile Virtual Network Operator(仮想移動体通信事業者)の略。無線通信インフラを他携帯電話事業者等から借り受けてサービスを提供している事業者のことです。
  • ※2 MVNO事業者が提供するSIMカード。広義では、MVNO事業者が提供する通信サービスを含めます。
  • ※3 Internet of Things(モノのインターネット)の略。あらゆるモノが通信機能を持ってネットワークにつながり、センサーが収集したデータを送信したり、クラウド上のデータを活用したり、またはそれらのデータをもとに自動制御を行ったりすることを指します。
  • ※4 モバイル契約者(プリペイド/MVNO除く)1人当たりの月間売上高のことです。
  • ※5 「au通信ARPA」+「付加価値ARPA」
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事業別概況

「お客さま体験価値」の提供に向けて

 昨年8月29日よりすべてのauのお客さまに感謝の気持ちをこめて、auショップでの優先予約が可能になる「au STARパスポート」、auのご利用年数とデータ定額料に応じてWALLET ポイントをプレゼントする「au STARロイヤル」、ご登録いただいたお客さま全員がご利用できる「au STARギフト」といった、3つの特典を用意した無料の会員制プログラム「au STAR」を開始しました。また、昨年12月には、当社直営店で最大規模となる「au SENDAI」 をオープンしました。本店舗は、店舗面積を生かし、カフェ「BLUE LEAF CAFÉ」を併設するほか、イベントワークショップの開催、東北復興支援の取り組みの展示等、通信とライフスタイルが融合した新しいお店のかたちを体現しています。

「モバイルID数」の拡大に向けて

 モバイル分野の「au」においては、主力サービスである「auスマートバリュー」が引き続き多くのお客さまからご支持をいただくとともに、端末・コンテンツ・お客さまサポート等、あらゆる面でサービスの充実化を図っています。
 さらに、グループ会社のUQコミュニケーションズ株式会社や株式会社ジュピターテレコムにおいては、それぞれUQ mobile、J:COM MOBILEのブランドでMVNO事業を推進しています。
 また、お客さま基盤の拡充に向けて、本年1月31日にインターネット接続サービス事業やモバイル事業を展開しているビッグローブ株式会社を完全子会社化しました。このようにモバイル分野においては、au+MVNOベースの「モバイルID数」の拡大を図っていきます。

「auでんき」によるエネルギービジネスへの参入

 昨年4月1日より沖縄県と一部地域を除く全国で「auでんき」の提供を開始しました。シンプルでわかり易い料金プランや、auケータイ・スマートフォンとあわせてご利用いただくことで、毎月の「auでんき」ご利用料金に応じて最大5%相当分を「au WALLET プリペイドカード」へご入金する「auでんきセット割」等も開始しています。また、当社ならではのサービスとして、電力の使用量や電気料金の見込みが一目でわかる「auでんきアプリ」を提供し、お客さまのライフスタイルに合わせた省エネのアドバイス等、お得な生活をサポートしています。

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「auスマートパス」をはじめとするサービスの充実

 当期末の「auスマートパス」会員数は、前期末から75万増加の1,522万となりました。「auスマートパス」では、auスマートフォンを安心・安全にご利用いただくための故障交換サポートや、アプリ取り放題サービス等、様々な会員特典を提供しています。また、「auスマートパス」の上位サービスとして、「auスマートパスプレミアム」を開始しました。曜日毎に映画・カラオケの割引、フライドポテトのプレゼント等がある「auエブリディ」や、端末破損時の「復旧サポート」により、「おトク」「安心」をさらに強化することで、「お客さま体験価値」の向上に努めていきます。

金融事業の拡大によるライフデザイン領域強化

 当社は、昨年4月5日より、ライフネット生命保険株式会社や株式会社じぶん銀行と提携し「auのほけん・ローン」の提供を開始しました。また、昨年12月1日には「auの生命ほけん」をリニューアルするとともに、病気やケガで長期間働けなくなるリスクに備える「auの生活ほけん」の提供を開始しました。当社は今後もライフデザイン企業への変革を目指し、非通信領域での取り組みを強化していきます。

コマース事業の強化によるau経済圏の拡大

 当社のネットショッピングサービスである「au WALLET Market」は、当期末に会員数が500万を突破し、本年8月にはサービス開始から2周年を迎えます。「au WALLET Market」は、今後もauをご利用いただいているお客さま向けに、当社にて厳選したこだわりの商品ラインナップを拡充することで、お客さまのライフスタイルにあったショッピングサービスを提供していきます。
 また、本年1月30日に、「auショッピングモール」「DeNAショッピング」のサービスブランドを統合し、一人一人の毎日にWOW体験(驚きの体験)をお届けするショッピングモール「Wowma!」の提供を開始しました。「Wowma!」は、人気・話題のファッション・コスメ・グルメ・日用品等が揃った総合ショッピングモールサイトです。当社は「Wowma!」の提供を通じて、auをご利用でないお客さまに対してもお客さま接点を構築することで、コマース事業を一層強化し、au経済圏の拡大に取り組んでいきます。

データ分析分野の強化

 当社は、データ分析の活用による、「お客さま体験価値」の向上とパートナービジネスの推進を目的として、アクセンチュア株式会社との合弁を前提に株式会社ARISE analyticsを設立しました。最新のAI技術等を取り入れた次世代型チャットサービスやレコメンドエンジンの開発、当社グループが保有するデータの分析支援等に注力することで、通信サービスや様々な付加価値サービスにおける「お客さま体験価値」の向上に貢献していきます。

ビッグデータを活用した地域活性化の取り組み

 当社は、ICTの利活用によって、仕事や暮らし等の生活向上施策や、農業・漁業支援といった産業振興施策等、地域課題解決に向けた取り組みを推進しています。当期の取り組みとして、兵庫県豊岡市と当社は、昨年9月21日に地域活性化を目的とした包括協定を締結しました。本協定を通じて、ビッグデータを活用した観光動態の分析を行い、観光活性化を図るほか、「au WALLET Market」で、豊岡市特産品の取扱いも開始しました。

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法人のお客さまへ幅広いサービスを提供

 ビジネスセグメントでは、大企業から中小企業まで幅広い法人のお客さまを対象に、スマートフォン・タブレット等のモバイル端末の提供や、ネットワーク・アプリケーション・クラウド型サービス等の多様な法人向けソリューションを提供しています。また、中小企業のお客さまについては、連結子会社のKDDIまとめてオフィスグループによる地域に密着したサポート体制を全国規模で展開しています。この結果、複数のサービス分野で法人のお客さまより高い評価をいただいています。

「つながるクルマ」の基盤構築を推進

 当社は、トヨタ自動車株式会社と共同で、「つながるクルマ」に必要な車載通信機とクラウド間の通信に関し、高品質で安定した通信をグローバルで展開するために、グローバル通信プラットフォームの構築を推進していきます。モノとインターネットがつながるIoT時代の到来を迎え、当社グループの総力をあげ、これまでに培ったノウハウを結集し、法人のお客さまの事業成長をグローバル規模でサポートしていきます。

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新興国における通信事業の発展に向けた取り組み

 ミャンマー通信事業においては、お客さまに選ばれ続ける総合通信事業者として、携帯電話基地局の大都市郊外や地方都市での増設、高速データ通信ネットワークのエリア拡大に加え、エリア最適化による通信品質の向上に取り組んできました。昨年10月には、ヤンゴンとネピドーにおける一部の屋内エリアで2.1GHz帯での4G LTEサービスを開始し、本年中に新たに割当が行われる1.8GHz帯を活用した本格的な4G LTEサービスの提供に向けて準備を進めています。
 また、モンゴル通信事業においては、モンゴル国内の携帯電話契約者シェアNo.1の総合通信事業者であるMobiCom Corporation LLCで、昨年5月に、首都ウランバートル市内で4G LTEサービスを開始しました。

最新鋭の環境技術を導入したデータセンター事業の展開

 当社の欧州現地法人「TELEHOUSE EUROPE」は、英国ロンドン市内で、英国最大級の接続数を兼ね備えたデータセンター事業を展開し、昨年11月には、最新鋭の環境技術を導入した新しいデータセンター「TELEHOUSE LONDON Docklands North Two」を全面開業しました。

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主な関連会社などの状況

【株式会社じぶん銀行】

 当社の持分法適用会社である株式会社じぶん銀行(以下「じぶん銀行」)は、昨年11月29日より、当社と沖縄セルラー電話株式会社が提供する会員制プログラム「au STAR」会員を対象に、毎月「WALLETポイント」をプレゼントする「au STAR じぶん銀行特典」の提供を開始しました。「au STAR じぶん銀行特典」は、じぶん銀行に口座を持つ「au STAR」会員へ、auのご契約年数とじぶん銀行のご利用状況に応じて、毎月「WALLET ポイント」を付与する特典です。本特典の提供により、じぶん銀行をご利用いただくauのお客さまの利便性と満足度のさらなる向上に努めていきます。
 また、本年3月27日より、じぶん銀行の口座をお持ちのお客さま向けに、キャッシュカードを使わずにスマートフォンを使って、株式会社セブン銀行が提供する全てのATMで入出金が行える「スマホATM取引サービス」を開始しました。スマートフォンによるATM入出金サービスの全国展開は日本初となります。

※本年3月27日時点。株式会社セブン銀行・じぶん銀行調べ。

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持続的な企業価値向上に向けた取り組み

【CSR活動】

「トライブリッド基地局」による地球温暖化対策が「低炭素杯2017」において環境大臣賞金賞を受賞

 当社による「地球温暖化防止に向けた『トライブリッド基地局』の導入について」が、「低炭素杯2017」において、応募数951団体を対象とした選考の結果、環境大臣賞(企業部門)金賞を受賞しました。「低炭素杯」は、次世代に向けた低炭素社会の構築を目指し、多様な企業や団体等が全国各地で取り組む、地球温暖化防止に関する活動を表彰する制度で、今回で7年目となります。当社は、従来の商用電力のみを活用する基地局に比べ、年間のCO2排出量を最大約30%削減できる携帯電話基地局「トライブリッド基地局」を国内に100局設置しました。また、インドネシアやインド等の途上国に向けた技術移転にも取り組んでおり、こうした活動が評価されて受賞にいたりました。

離島事業者を対象とした、販路拡大・商品PR講座「しまものラボ」を開始

 当社は、2015年12月より、離島の活性化を目指す「しまものプロジェクト」を開始しています。プロジェクト第一弾では「au WALLET Market」を通じた離島産品の販売を実施し、プロジェクト第二弾として、昨年10月には鹿児島県喜界町にて、離島事業者向けの販路拡大・商品PR講座「しまものラボ」を開催しました。「しまものラボ」では、「auスマートパス」の商品モニターサービスを活用したマーケティングやその結果を元にした専門家による講義を行い、商品のアピールポイントを言葉でどう伝えていくか等を学んでいただきました。今回、「しまものラボ」に参加した事業者の扱う商品のうち3品目が、「au WALLET Market」の「しまものマルシェ」で販売されており、全国のauショップでもお買い求めいただけます。

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