<株主提案 第4号議案から第5号議案まで>
第4号議案及び第5号議案は、株主様1名(3D OPPORTUNITY MASTER FUND様)からのご提案によるものであります。各議案、議案要領及び提案理由については、形式的な調整を除き提案株主様から提出された原文のまま記載しております。
当社取締役会としては、後述のとおり、いずれの株主提案にも反対いたします。
第4号議案
監査等委員である取締役1名選任の件
第5号議案
取締役(監査等委員である取締役を除く)1名選任の件
ただし、本議案は、第4号議案 監査等委員である取締役1名選任の件が承認可決されなかったことを条件として効力を生じるものとする。
第4号議案及び第5号議案の各議案に共通する提案の理由は以下のとおりです。
サッポロの現状
サッポロは、酒類事業において素晴らしいグローバルブランドを有しています。しかしながら、その素晴らしいブランドにもかかわらず、長きにわたって資本効率が低迷しており、企業価値の向上を図ることができておりません。サッポロは、その資本効率を改善して企業価値の向上を図るため、2023年9月にグループ戦略検討委員会を設立して中長期的な企業価値向上のための経営方針の再検証を開始しました。また、不動産事業の切り離し方針及び酒類事業への経営資源の集中投下に関する経営方針(以下「本経営方針」といいます。)を策定し、2024年2月に公表しました。2024年9月からは、本経営方針に基づき、「幅広い戦略パートナー候補の方々から、不動産事業への外部資本導入に関する提案等をお受けするプロセス」を行っております。そのため、今後、サッポロは、①不動産事業の切り離しに係る意思決定を行い、また、②不動産事業の切り離しにより得られた資本の配分に係る意思決定を行うことになります。
この点、不動産事業の切り離しの対価は、少なくとも約4,000億円にも及ぶと予想1され、サッポロの時価総額の73%程度2にも及びます。したがって、サッポロの企業価値にとって、不動産事業の切り離しに係る意思決定(上記①)及びそれにより得られた資金をどのように使用するかといった資本の配分に係る意思決定(上記②)は、サッポロの企業価値に対して決定的かつ不可逆的な影響を及ぼす極めて重要なものです。
しかしながら、サッポロにおいては以下のような疑義が存在するため、これらの意思決定が適切に行われるかについて確信を持てない状況にあります。
資本規律への疑義
不動産事業の切り離しに係る意思決定(上記①)及び資本の配分に係る意思決定(上記②)においては、適切な資本規律の下でその意思決定が行われることが必要不可欠です。
しかしながら、サッポロは、これまでに投資を強化した分野において、不採算なM&Aや非効率的な投資を繰り返し、多額の減損を計上してきました。例えば、Sleeman BreweriesやSapporo Vietnamへの投資によりそれぞれ約78億円、約47億円の減損を生じさせたほか、直近のAnchor Brewing社への投資においても同社の解散により約119億円全額の減損を生じさせております。また、過去10年間の食品飲料事業への累計設備投資額が約701億円にも達したのに対して、当該期間の同事業の累積営業利益はマイナス約130億円になるなどしております。このように、サッポロにおいては、非効率な投資が繰り返されており、その資本規律に疑義があります。
取締役会の監督機能への疑義
不動産事業の切り離しに係る意思決定(上記①)及び資本の配分に係る意思決定(上記②)を適切に行うためには、取締役会による監督機能が十分に発揮されていることが必要不可欠です。しかしながら、取締役会は、上記のとおり、過去のM&Aの失敗や直近のAnchor Brewing社への投資が全損したことなど、資本規律の不備を示す多くの証拠が存在するにもかかわらず、その振り返りや同様の事態が生じないようにするための再発防止策を未だ株主に示しておりません。その一方で、サッポロは、本経営方針を開示した2024年2月14日付け「グループ価値向上のための中長期経営方針に関するお知らせ」において、海外酒類事業への一層の投資強化を掲げており、あらためて大規模な投資を実行しようとしております。
かかる振り返りや再発防止策を欠いた中で公表された大規模投資の方針は、サッポロの取締役会において、過去の失敗を踏まえた監督を十分に行っていないことを示すものと考えることができます。このように、サッポロの取締役会においては、監督機能に疑義があります。
取締役会の専門性への疑義
不動産事業の切り離しに係る意思決定(上記①)においては、買主候補者間における競争を通じて、サッポロが得る不動産事業の切り離しによる対価を最大化することが必要不可欠です。しかしながら、現在のサッポロの取締役会は、本経営方針のような、数千億円規模にもなり得る資産売却を実施した実績はなく、当然ながらそのような売却プロセスにおいて対価を最大化させた経験もありません。このように、サッポロの取締役会においては、買主候補者間の競争のための環境を適切に整えることができる専門性が備わっているかについて疑義があります。
取締役会の透明性への疑義
不動産事業の切り離しに係る意思決定(上記①)及び資本の配分に係る意思決定(上記②)の企業価値に対する極めて重大な影響を考えれば、これらの意思決定についての株主に対する透明性の確保は必要不可欠と言えます。
しかしながら、サッポロは、不動産事業の切り離しに係る意思決定(上記①)については、2024年8月13日付け「「グループ価値向上のための中長期経営方針」具体化に向けた検討状況のお知らせ」により、将来のグループ価値向上に資する不動産の活用方法と抜本的な事業ポートフォリオ変革のあり方に関して、「サッポロ不動産開発株式会社への外部資本導入、物件売却や株主様からご提案いただいております税制適格スピンオフなど、考えられる選択肢を広く比較検討」すると述べるのみで、切り離し対象の不動産、取引スキーム、譲渡対象の持ち分、切り離しの時間軸等を明確に示しておりません。また、資本の配分に係る意思決定(上記②)については、2024年2月14日付け「グループ価値向上のための中長期経営方針に関するお知らせ」において、海外酒類事業への一層の投資強化の方針を掲げるのみに留まり、株主還元を含め、いかに企業価値ひいては株主共同の利益の最大化のために資本配分していくかについて、何ら具体的な方針を示しておりません。このように、サッポロの取締役会において、株主への透明性が十分に確保されているかについて疑義があります。
3Dの株主提案
以上のとおり、サッポロは、不動産事業の切り離しに係る意思決定(上記①)及びそれにより得られた資金をどのように使用するかといった資本の配分に係る意思決定(上記②)を行うことに関する重大な課題を有しております。
そこで、3Dは、取締役会の監督機能、専門性及び透明性を向上させ、資本規律を強化し、企業価値を不可逆的に左右する重要な意思決定の内容を適切なものとすることを目的として、Paul J. Brough氏(以下「Paul氏」といいます。)をサッポロの社外取締役に選任することを提案します。Paul氏は、株式会社東芝(以下「東芝」といいます。)の戦略委員会の委員長として、企業価値最大化のための事業ポートフォリオの抜本的な見直しと、十分な資本規律を伴ったその後の資本配分方針の策定、及びその検討プロセスと検討結果についての株主への透明性の確保を先導した実績を有しております。また、Paul氏は、東芝の特別委員会の副委員長として、資産譲渡や非公開化を含む多様な提案を買主候補者から募集して企業価値を最大化するためのスキームを選定したほか、買主候補者間の適切な競争環境を整備することで取引条件の最適化を実現し、さらには、検討プロセスや検討結果について透明性を持った株主への開示を行うことで株主の信頼を得て、取引の実行までも監督した実績を有しております。
そのため、3Dは、以下のとおり、Paul氏が社外取締役に選任されることによって、取締役会の監督機能、専門性及び透明性の向上と資本規律の強化が達成され、上記①及び②の重要な意思決定に係る課題を克服することができると確信しております。
不動産切り離し対価の最大化:
Paul氏の東芝での大規模な資産売却プロセスの実施や買主候補者間の競争環境の整備、及び株主への透明性の確保を主導した実績を通じた経験を活用することで、サッポロにおける不動産事業の切り離しに係る対価の最大化を実現することができる。
資本配分の最適化:
Paul氏の東芝での事業ポートフォリオの見直しと資本配分方針の策定、及び株主への透明性の確保を主導した実績を通じた経験を活用することで、サッポロの企業価値ひいては株主共同の利益の最大化のための資本配分の最適化を実現することができる。
3Dは、Paul氏が上記実績に基づき、その能力を多分に遺憾なく発揮できる人材であり、サッポロの取締役会に不足している能力を補うことのできる人材として、サッポロの企業価値ひいては株主共同の利益の向上のために最適な人材であると確信しております。
なお、Paul氏は、現在3Dのアドバイザーを務めておりますが、サッポロの社外取締役に就任した場合はこれを辞任します。
3Dの提案によりサッポロの企業価値向上が大いに期待できること
以上の3Dの提案は、社外取締役1名の選任です。そのため、取締役会の意思決定を一定の方向に誘導するものではなく、また、サッポロに対して不動産の切り離しに関する一定期間内の取引の実行や、その対価の特定の目的への再投資を強いるものでもありません。
したがいまして、当該提案は、サッポロを交渉上不利な立場に立たせるものではないため、本件定時株主総会でご承認いただいたとしても、サッポロの既存の検討プロセスが阻害されるおそれはありません。
むしろ、3Dは、当該提案のご承認によって、取締役会の機能強化による資本規律の具備や適切な競争環境の整備、株主への透明性の向上などによって、企業価値向上が大いに図られるものと確信しております。
- 2024年12月20日 日経新聞「サッポロHDの4000億円不動産活用、三井不やKKR名乗り」
- 不動産事業切り離し対価4,000億円÷サッポロ時価総額5,478億円(=2025年1月24日付け株価x(2024年12月期3Q発行済株式数−2024年12月期3Q自己株式数))にて算出