事業報告(2018年4月1日から2019年3月31日まで)
企業集団の現況
当事業年度の事業の状況
事業の経過及び成果
全般的概況
当期における世界経済は、先進国を中心に景気拡大が継続し、国内においても企業収益及び雇用情勢の改善が続くなど回復基調で推移しましたが、米中間の貿易摩擦や保護貿易主義による対立などにより不確実性を増しています。
情報通信分野においては、モバイル・ブロードバンド・サービスは質量ともに拡がりを見せ、データ通信量は急速に増加して、ネットワーク・インフラを逼󠄀迫させつつあります。それらの課題を解決するために、モバイル通信方式4Gは、LTE(Long Term Evolution)及びLTE-AdvancedそしてLTE-Advanced Pro(Gigabit LTE)と進化し続けています。加えて、次世代の通信方式5Gの仕様策定が3GPPで進行しています。2017年12月に5G NSA-NR(Non-Standalone New Radio)、2018年6月に5G SA-NR(Standalone New Radio)の標準化が完了し、5Gの超高速通信に関する主要機能の全仕様が規定されました。3GPPでは引き続き、ユースケースの拡張が期待される超低遅延及び多数同時接続の仕様策定を検討しており、2020年初旬に標準化完了が予定されています。その結果、各国主要キャリアの5Gの商用化に向けたロードマップが具体化し、商用化スケジュールは順調に進展しています。2018年12月に北米や韓国でモバイル・ルーターを使用した先行的な5Gサービスが開始され、2019年4月からは5Gスマートフォンのサービスも開始されました。米国、アジアの主要端末ベンダーは、5Gスマートフォンサービスで使用される端末の開発を行い、MWC(Mobile World Congress)2019で相次いでリリースしました。
このような環境のもと、計測事業グループは、5Gの開発投資需要を獲得するためのソリューションの開発と組織体制の整備に注力し、5Gチップセット及び端末の初期開発需要を獲得しました。
PQA事業の分野においては、加工食品生産ラインの自動化投資が進むとともに、X線を用いた異物検出並びに包装に関する品質保証などの需要が堅調に拡大しています。PQA事業グループは、このような状況下でX線を軸としたソリューションの競争力強化と海外の販売体制の整備拡充に取り組みました。
この結果、受注高は1,008億19百万円(前期比13.9%増)、売上収益は996億59百万円(前期比15.9%増)、営業利益は112億46百万円(前期比128.9%増)、税引前当期利益は113億62百万円(前期比146.9%増)、当期利益は89億91百万円(前期比210.2%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は89億56百万円(前期比210.9%増)となりました。なお、法人税の不確実性に係る未払法人所得税の見直しを行ったことなどにより、米国子会社の法人所得税費用が約5億円減少しています。この結果、法人所得税費用は23億71百万円(前期比39.2%増)となりました。
期末の受注残高は、218億82百万円(前期比3.6%増)であります。
事業部門別概況
当期の事業部門別売上収益は次のとおりであります。
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構成比
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(単位:)
売上収益
前期比%増
この事業部門は、通信事業者、関連機器メーカー、保守工事業者などへ納入する、多機種にわたる通信用及び汎用計測器、測定システム、サービス・アシュアランスの開発、製造、販売を行っています。
当期は、モバイル市場において北米・アジアを中心に、5Gのチップセット及び携帯端末の初期開発需要が想定を上回って推移しました。また、ネットワーク・インフラ市場においては、米国の内需関連需要が堅調でした。
この結果、売上収益は681億68百万円(前期比25.2%増)、営業利益は94億13百万円(前期比338.3%増)となりました。 -
構成比
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(単位:)
売上収益
前期比%増
この事業部門は、高精度かつ高速の各種自動重量選別機、自動電子計量機、異物検出機などの食品・医薬品・化粧品産業向けの生産管理・品質保証システム等の開発、製造、販売を行っています。
当期は、食品・医薬品に対する安全・安心志向の高まりや、人手不足を背景とした検査工程を自動化する動きが加速しており、国内・海外とも食品市場の品質保証プロセスの自動化、高度化を目的とした設備投資が堅調に推移しました。
一方、海外市場の販売力強化に向けた投資を行いました。
この結果、売上収益は230億74百万円(前期比2.3%増)、営業利益は16億9百万円(前期比18.3%減)となりました。 -
構成比
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(単位:)
売上収益
前期比%減
これら2事業以外に、情報通信事業、デバイス事業、物流、厚生サービス、不動産賃貸等の事業を展開しております。
当期は、デバイス事業において価格競争激化の影響を受けるなど、全体として低調に推移しました。
この結果、売上収益は84億16百万円(前期比6.3%減)、営業利益は11億45百万円(前期比21.5%減)となりました。

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構成比
(単位:)
売上収益
前期比%増
この事業部門は、通信事業者、関連機器メーカー、保守工事業者などへ納入する、多機種にわたる通信用及び汎用計測器、測定システム、サービス・アシュアランスの開発、製造、販売を行っています。
当期は、モバイル市場において北米・アジアを中心に、5Gのチップセット及び携帯端末の初期開発需要が想定を上回って推移しました。また、ネットワーク・インフラ市場においては、米国の内需関連需要が堅調でした。
この結果、売上収益は681億68百万円(前期比25.2%増)、営業利益は94億13百万円(前期比338.3%増)となりました。 -
構成比
(単位:)
売上収益
前期比%増
この事業部門は、高精度かつ高速の各種自動重量選別機、自動電子計量機、異物検出機などの食品・医薬品・化粧品産業向けの生産管理・品質保証システム等の開発、製造、販売を行っています。
当期は、食品・医薬品に対する安全・安心志向の高まりや、人手不足を背景とした検査工程を自動化する動きが加速しており、国内・海外とも食品市場の品質保証プロセスの自動化、高度化を目的とした設備投資が堅調に推移しました。
一方、海外市場の販売力強化に向けた投資を行いました。
この結果、売上収益は230億74百万円(前期比2.3%増)、営業利益は16億9百万円(前期比18.3%減)となりました。 -
構成比
(単位:)
売上収益
前期比%減
これら2事業以外に、情報通信事業、デバイス事業、物流、厚生サービス、不動産賃貸等の事業を展開しております。
当期は、デバイス事業において価格競争激化の影響を受けるなど、全体として低調に推移しました。
この結果、売上収益は84億16百万円(前期比6.3%減)、営業利益は11億45百万円(前期比21.5%減)となりました。
売上収益996億59百万円を地域別に見ますと、日本は321億83百万円(前期比8.2%増)、米州は264億29百万円(前期比51.7%増)、EMEA(欧州・中近東・アフリカ)は121億70百万円(前期比4.8%減)、アジア他は288億76百万円(前期比11.0%増)であり、当社グループ全売上収益に対する比率は日本32.3%、米州26.5%、EMEA12.2%、アジア他29.0%であります。


(注)当期より、各事業部門の業績をより適切に評価するため、これまで各事業部門に配分していた一般管理費のうち本社管理費等を全社費用に含めるよう配分方法を変更しております。各事業部門の営業利益の増減は、前期の数値を当該変更に合わせて組み替えて計算しております。
対処すべき課題
今後の見通しにつきましては、世界経済はこれまで回復基調で推移してきましたが、今後、英国のEU離脱問題、米中貿易摩擦の激化、保護貿易主義による対立など、先行きに対する不透明感が高まっています。情報通信分野においては、2018年12月に北米や韓国で先行的な5Gサービスが開始されており、2019年に入り5G対応スマートフォンの販売も始まりました。今後、日本も含め世界各国で5Gの本格的な商用化に向けた準備が加速すると見込まれます。
このような環境の中、当社グループは、以下の経営理念・経営ビジョン・経営方針、中長期経営戦略及び「2020 VISION」のもと、中期経営計画「GLP2020」(計画期間: 2018~2020年度)の達成に取り組み、企業価値の向上を目指してまいります。
① 経営理念・経営ビジョン・経営方針
当社は、様々なステークホルダーに対する責任と対話を重視し、以下のとおり経営理念・経営ビジョン・経営方針を策定しています。
〔経営理念〕
誠と和と意欲をもって、“オリジナル&ハイレベル”な商品とサービスを提供し、安全・安心で豊かなグローバル社会の発展に貢献する
〔経営ビジョン〕
衆知を集めたイノベーションで社会のサステナビリティに貢献し、“利益ある持続的成長”を実現する
〔経営方針〕
- 衆知を集めた全員経営でハツラツとした組織へ
- イノベーションで成長ドライバーの獲得
- グローバル市場でマーケットリーダーになる
- 良き企業市民として人と地球にやさしい社会づくりに貢献
② 中長期的な経営戦略
当社グループは、主力の計測事業を軸に、ICT(Information and Communication Technology)サービスに関わるビジネスを展開しております。ICT分野における成長ドライバーは、「世界的なモバイル・ブロードバンド・サービスとIoT(Internet of Things)による新たな社会価値の創造」です。モバイル・ブロードバンド・サービスの拡大は、モバイル通信方式の2G、3G、4G、5Gとして進化してきました。それらの通信方式の進化は、計測市場の上昇、ピーク、下降の変動サイクルの波に見舞われた歴史でもありました。経営ビジョンに掲げる「利益ある持続的成長」が意味するものは、このような市場変動の波に耐え、次代の技術革新を獲得する先行投資を可能にするための強固な経営体質を構築することです。
「2020 VISION」は、その経営の基本方針に沿って2020年を目途とする時間軸として取り組んできたものであります。
〔2020 VISION〕
- アンリツらしい価値を創造し、ワールドクラスの強靭な利益体質を持つグローバルマーケットリーダーになる
- 新しい分野でアンリツの先進性を発揮して事業創発をする
グループの経営の基本方針並びに「2020 VISION」のもと、各事業部門が掲げる経営ビジョンは以下のとおりです。
〔計測事業〕
5G/IoT社会を支えるリーディングカンパニーになる
〔PQA事業〕
ワールドクラスの品質保証ソリューションパートナーになる
更に、当社グループは、2020年以降の持続的な成長に向けて「Beyond 2020」を始動させました。「Beyond 2020」では、「5G通信」、「食品安全」の更なる強化に加え、「5G利活用 自動車」、「医薬品安全」、そして「非通信計測事業」の開拓にも取り組み、これら5つの柱で社会課題の解決を図り、高収益企業を目指すことを掲げています。
③ 中期経営計画「GLP2020」と各事業部門の施策
中期経営計画「GLP2020」が目指すものは、「収益力を回復する」ことと、「GLP2017」からの継続課題「利益ある持続的成長のための経営基盤を確立する」ことです。その経営目標を確実に遂行するために、以下の3つの課題に全力で取り組みます。
- (1) 成長ドライバーの確実な獲得
- (2) 強靭な利益体質の構築
- (3) 次世代の事業の柱づくり
〔計測事業〕
モバイル市場においては、5Gに関する標準・規格の進化とオペレータの商用化計画に的確に対応した最適なソリューションをタイムリーに市場投入することで、5G開発市場でリーディングカンパニーの地位を確実なものにします。一方、新たな成長分野として期待する5G/IoTを活用した産業分野での成長機会は、当面はオートモティブ市場での事業拡大を軸に、5Gの高信頼性や低遅延などの特徴を活かした用途での普及が期待される2021年以降をにらみ、M&A施策を含む事業創発活動を強化してまいります。ネットワーク・インフラ市場では、爆発的に増加するデータ・トラフィックやデータセンター需要で牽引される超高速大容量化のための技術革新を確実に取り込み、ネットワーク再構築のための需要を獲得します。
〔PQA事業〕
PQA事業の成長ドライバーは、「食品・医薬品市場における品質保証ニーズの拡大」です。その背景には、供給サイド、需要サイド双方でのニーズの変化があります。供給サイドは、異物検査や重量選別に加えて、包装された商品の品質管理の厳格化です。また、生産効率化や人手不足対策を目的とする生産ラインの自動化投資が拡大しています。需要サイドは、食の安全・安心意識の高まりに加えて、個装された調理済み食品(中食)の普及拡大などがあります。PQA事業は、このような市場要求に応えるソリューションで差別化を図るとともに、世界大手食品メーカーとの信頼関係構築に努めて事業拡大を図ってきました。PQA事業が高い成長率を維持し続けるためには、日本市場での競争優位を維持しつつ、海外市場でのプレゼンスを拡大する必要があります。「GLP2020」計画期間は、グローバル市場攻略に向けた経営資源の拡充整備に取り組み、海外売上比率50%以上を可能とする経営体制の構築に取り組みます。
④ コーポレートガバナンスの充実
当社は、経営環境の変化に柔軟かつスピーディに対応し、グローバル企業としての競争力を高め、継続的に企業価値を向上させていくことを経営の最重要課題としております。その目標を実現するために、コーポレートガバナンスが有効に機能する仕組みを構築することに努めております。執行役員制度導入による意思決定と業務執行の分離の促進、「監査等委員会設置会社」への移行、独立社外取締役が委員長を務める指名委員会・報酬委員会・独立委員会の設置、取締役会の実効性評価の実施などにより、取締役会の監査・監督機能を強化し、コーポレートガバナンス体制を一層充実させることで、グローバルな視点でより透明性の高い経営の実現を目指してまいります。
なお、当社は、前記の視点を明確にするため、「アンリツ株式会社 コーポレートガバナンス基本方針」を制定しており、当社ウェブサイト(https://www.anritsu.com/ja-JP)に掲載しております。
⑤ サステナビリティの推進
当社グループは、誠実な企業活動を通じてグローバルな社会の要請に対応し、社会課題解決に貢献してこそ企業価値の向上が実現されると考えており、サステナビリティ推進活動にも積極的に取り組んでおり、「サステナビリティ方針」を制定しています。当社グループは、この方針に掲げる「安全・安心で快適な社会構築への貢献」、「グローバル経済社会との調和の実践」、「地球環境保護への貢献」、「すべてのステークホルダーとの強固なパートナーシップの構築」を目標に据え、経営資源を最大限に活かして、「誠と和と意欲」をもって安全・安心で豊かなグローバル社会の発展並びに世界共通目標SDGs(Sustainable Development Goals:国連総会で定められた持続可能な開発目標)の実現に貢献することを通じて、企業価値の向上を目指してまいります。
連結計算書類
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-
連結純損益及び
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