IT業界全体はクラウド、AI、IoTなどの新しいデジタル技術を活用したDX( デジタルトランスフォーメーション)の取り組みが進展した1年でした。当社の2018年度は、金融業において体制の縮小があったものの、建設機械メーカーや食品製造会社向け案件の拡大が寄与し、増収・増益となりました。しかし、当初見通しには達しておらず、生産性や効率化などのスピードアップがさらに必要であったと感じています。
2019年度については、お客さま対応強化による既存ビジネスでの受注拡大に加え、当社グループの強みを活かした新たな成長領域での展開を見込み、増収・増益を計画しています。業績見通しのポイントとしては、ネットバンクやダイレクト生損保を中心とした金融業での受注拡大や全産業でのDX対応案件の新規受注に加え、既存のエンハンスサービスの範囲拡大やサービス化による収益力の向上を図ることで、売上高155億円、営業利益10・9億円、営業利益率7・0%を見通しています。
当社グループは、中長期経営ビジョン「VISION2020」を進め、「顧客からベストパートナーと評価される企業」、そして「社員と会社がともに成長し、喜び・豊かさを分かち合える企業風土の醸成」の実現を目指しています。2018年度から開始した「VISION2020」の3rd STEPでは、「キューブシステム流サービスビジネスを実現する」をスローガンに、SI・サービス提供型ビジネスの拡大を図り、新たなサービスメニューの創出、サービスビジネスの展開を通じ、顧客価値の最大化を図ります。
今後も、DX領域やグローバルでの事業展開を確実に推進できる人材の確保と、将来を担う若手社員の育成を着実に進めていきます。 また当社では、昨年に「未来創造会議」を立ち上げ、若手社員による次世代のビジョンを創り上げていくコミュニティを始めました。
キューブシステムグループでは経営理念の実現を通して、SDGsなど社会課題の解決に向け、「価値創造プロセス」を確立していきます。そして、持続的な成長のための財務的価値と社会的価値を生み出し、全てのステークホルダーにとって豊かな社会の実現に挑戦していきます。 「これからも信頼されるキューブシステム」へ向けて、まい進していきます。
国内事業においては、主要4社で5%の成長率を挙げることができました。また、既存ビジネスにおけるエンハンスの収益率についてもラボ化推進や派生案件を獲得するなど効率性をあげ、前年を上回る実績となりました。新規領域への拡大では、パッケージクラウドインテグレーションでの大型案件の獲得や新たなエリアへの拡大、DX対応案件などの新規受注も成果と捉えています。
技術投資においては、パートナー企業との協業により、システム開発手法として注目されるアジャイル開発でのサービス提供を開始しました。また、AI技術の分野では、トリプルアイズ社と、昨年8月に資本業務提携を結び、技術供与やAI技術者育成を進めています。ブロックチェーン技術の分野では、お客さまとともに実証実験を行い、社内実証実験として、社員向けの仮想通貨を活用した研究開発も実施しました。昨年度の研究開発投資の金額は、売上高に対し0・48%となりました。今後も引き続き、これら技術投資を継続し、技術と創造力を両輪に、デジタルトランスフォーメーションの実現を進めていきます。
今後の注力分野としては、コーポレート・ベンチャーキャピタル機能の充実を図る中、協業と共創を推進し、成長領域への拡大や新規事業化にしっかりとつなげていきます。
海外事業においては、アジアを軸としたグローバルマーケット事業展開を進めていきます。事業展開の方向性としては、既存領域の強みを武器に、新規の成長領域への展開と新規サービスの創出、両面で事業拡大を図っていきます。
昨年、上海求歩信息系統がお客さまとパートナー契約を締結し共創による事業拡大のための一歩を踏み出しました。今年度についても、更なる関係強化を図り、受注の拡大を進めていきます。また、中国など海外の新しいデジタルビジネスを日本に取り込んで日本側でのサービスに活かすなど、海外の企業やお客さまと協力しながら、当社の価値提供につながる取り組みにも注力していきます。
当社が注力している経営基盤強化に向けた取り組みは「人財」と「ESG」の二つです。特にESGについては、ここ数年で非常に注目されるようになり、当社も社会的価値の見える化に重きをおいて進めてきました。
経営基盤の強化における2018年度の成果としては、採用手法の抜本的改善による人材の確保や中期経営計画と連動した育成機会を創出し、女性の活躍推進、次期経営を担う若手人材の育成等に注力したことです。そして、社員一人ひとりの生産性向上に向け「働き方改革」も行い、中長期的な報酬制度改革にも取り組みました。
今後においても、人的リソースの確保は経営上の重要な課題であるため、新卒・中途の人材採用はもとより、若手人材に対する成長機会を創出し、中核人材の育成に努めていきます。
また、本年4月にサステナビリティ経営の実現に向けて、SDGsなど社会課題解決への取り組みの加速を目的に「サステナビリティ推進委員会」を新設いたしました。サステナビリティに関わる重要課題を特定し、全社的に統括していくことで、社会的責任を果たしていきます。さらに、当社のシステム開発やサービスがどのように社会貢献しているのかを明確にし、それを株主さまにお伝えしていきます。
当社の取締役会では、意思決定にあたって業務執行取締役と社外取締役も含めた非業務執行の取締役、社外監査役で活発に議論がなされています。社外役員は、経営管理、法務やガバナンス、そして企業経営等の豊富な経験を有し、それぞれの専門性に基づいて議論を行っています。キューブシステムが新たな成長領域への展開や新たなサービスの提供を進める際、社外役員の経験・ノウハウが有効に機能していくと思っています。
2018年度の取締役会で特に印象的だったのは、トリプルアイズ社との提携です。この業界ではクラウド、AI、IoTといったデジタル技術への対応が課題ですが、当社はブロックチェーンに対する取り組みは進めてきたものの、AI分野に対する取り組みが十分ではありませんでした。そうした中、AIに対する課題やその解決に向けた、中長期的な取り組みについての活発な議論をすることができました。その後も取締役会にて状況の確認など、適宜適切なモニタリングも進み、コーポレート・ガバナンス体制の強化にも繋がりました。
社外役員の役割としては、把握しにくい外部環境の変化を伝えることも重要だと考えております。特にESGを重視した機関投資家とのエンゲージメントの推進もその一つであり、当社経営の対応方針や具体的な取り組みに対しても監督・モニタリングしております。また、デジタル技術に対応するIT人材の確保はユーザ企業では重要な課題であり、この課題に対する取り組みが事業成長に大きく関わってきます。当社の適切なサービス提供やお客さまとの共創による関係構築等、お客さまの変化に即した対応についてアドバイスやモニタリングを行っていきます。
当社の強みは、お客さまに寄り添い、サービスを提供していくことです。お客さまの課題解決の方向性を理解したうえで、お客さまの期待を超えるサービスを提供しようという意識を社員全員が持っています。この強みを活かし、持続的な成長を遂げられるように社外役員としての役割を果たしていきます。