第5号議案 株主提案 自己株式取得の件
第5号議案は、株主さま1名からご提案いただいたものであります。なお、以下の議案の要領および提案の理由は、議案ごとに整理し、提案株主さまから提出されたものを原文のまま記載しております。
1.議案の要領
会社法第156条第1項の規定に基づき、本定時株主総会終結の時から1年以内に、当社普通株式を、株式総数9,750,000株、取得価額の総額30,000,000,000円を限度として、金銭の交付をもって取得することとする。
2.提案の理由
当社はルウカレーやルウシチュー、レトルトカレーで国内シェアNo.1の強いブランド力を持つ競争優位性のある事業を展開しているとともに、米国TOFU事業、中国カレー事業、アセアン機能性飲料事業の海外食品事業では高い成長性が期待できます。また、第八次中期計画における財務資本政策において、現状認識や資本コストや株価を意識した取組方向性、ROICマネジメント導入、総還元性向50%以上の新利益配分方針、資源配分の明確化によるバランスシート改善の開示は評価できるものです。
しかし、当社の保有する現金及び預金と有価証券、投資有価証券の合計から借入金を差し引いた金額である当社の純財務資産は2023年12月末時点で1,320億円と計算され、2023年12月末時点の時価総額の40%を超える規模となっております。第八次中期計画において資産縮減150億円を原資に2027年3月期までの3年間で150億円の自己株式取得を計画しておりますが、純財務資産1,320億円があることを鑑みれば、150億円という資産縮減だけでは当社が設定した月商2カ月分の適正資金残高を大きく超えた余剰資金が残ることとなり、自己株式取得の金額が不十分であると考えます。必要資金を超えた現金資産の積み上げは資本効率の低下・企業価値の毀損につながります。事実、当社の過去5年間平均のROEは5%を下回っており、資本コストを満たしているとはいいがたい状況です。当社が掲げているあるべき姿ROE10%確保を鑑みれば、第八次中期計画で3年後の2027年3月期ROE7%、ROIC6%以上目標は踏み込み不足で目標値が低すぎると考えます。自己株式取得による株主還元をさらに拡充しROEの向上を目指すべきです。よって、株主還元の拡充および資本効率の向上を図るため、当社が発行済株式総数(自己株式を除く)の約10%を自己株式として取得する施策を採用すべきと考えます。
3.第5号議案に対する当社取締役会の意見
取締役会としては、本議案に反対いたします。
当社経営資源の活用につきましては、中期計画に基づき成長投資と株主還元のバランスを意識した資源配分を具体化し、企業価値向上に取り組んでおります。
2021年4月よりスタートした第七次中期計画では、キーストーンナチュラルホールディングス社へのM&A投資など自己資金を成長領域へ重点配分し、3か年で計546億円を投資いたしました。政策保有株式については、20%縮減の計画に対し24.4%縮減と計画を達成しており、配当と並ぶ株主還元策として政策保有株式縮減から得られるキャッシュを原資とした120億円の自己株式取得を計画通りに完遂いたしました。また、2024年3月期の年間配当金は、1円増配となる47円を予定しております。
第八次中期計画においては、キャッシュインを営業キャッシュフロー650億円、サステナブルファイナンスを活用した有利子負債による外部調達200億円、政策保有株式縮減150億円とし、適正資金水準を明確にしたうえで、第七次中期計画に引き続きグローバルなバリューチェーン構築による成長加速のため、成長投資に500億円、基盤強化投資に200億円の資源を投下する計画です。また株主還元は、経営の重要課題と位置づけており、2024年4月より新たな利益配分方針として総還元性向40%以上、安定配当として年間配当金46円以上を継続配当することといたしました。特に第八次中期計画においては、政策保有株式縮減(第七次中期計画比30%削減)を進め、それを原資とした150億円の自己株式取得を実施することにより、総還元性向50%以上、保有株式の純資産比率10%以下をめざすことといたしました。なお、2025年3月期年間配当金は1円増配の48円を予定しております。
また、資本コストや株価を意識した経営に取り組むため、第八次中期計画では資本コストを6%に設定し、ROICマネジメントを導入することでバランスシート視点での意識改革と経営指標の改善に取り組んでまいります。第八次中期計画では積極的な成長投資を継続するため事業ROICの伸長は限定的ながらも、非事業性資本の縮減を進めることで目標ROIC6.0%以上・ROE7.0%の達成を、第九次中期計画では事業ROICを引き上げることで目標ROIC8.0%以上の達成をめざします。
このように当社は、明確な財務資本政策のもと、将来のあるべき姿を見据えた成長投資と株主還元を着実に実行しております。一方で本株主提案による自己株式取得300億円は、1年以内での取得が求められており、成長投資の財源が損なわれ、当社の中長期的な企業価値の持続的な向上が停滞する恐れがあり、結果として株主のみなさまの利益に繋がらないと判断いたします。当社としては、自己株式取得は本株主提案に定める時期や金額で実施するのではなく、中期計画に基づき、業績や財務状況、株価水準などを総合的に勘案して実施することが適切であると考えます。
したがいまして、取締役会としては本株主提案に反対いたします。